葬儀当日 ~陽の巻~
夜明け前に起こされた。
父が死んだと聞かされた。
俺は動揺した。
――だって……! あの僧侶が!
特別な祈祷をすれば、あと10日は死なないと言ったじゃないか!
――騙された‼
猛烈な後悔が襲う。
他の親戚や異母兄弟たちは、本家に泊まっていったはずだ。
――俺だけ、父の死に目に、会えなかった……。
父を失った悲しみと、あの僧侶を許せないという気持ちと、あんな僧侶の言葉を信じた自分への苛立ちと、今後への不安とが、一度に押し寄せる。
パニックになって叫び声をあげた。
両目からぼろぼろと涙が落ちた。
政じいに加えて貞じいまでが、黙って俺を抱きしめた。
「朝の遠乗りに行く」と言ったら「さすがにおやめください」と言われた。
火鳥は既に、きっちりと喪服を着て部屋で正座していた。
俺は各務野の葬儀で着たばかりの喪服に、もう一度袖を通すことになった。
俺の喪服は、政じいと貞じいが、各務野の葬儀の時とは比べ物にならないほど念を入れて、丹念に着付けてくれた。
ふたりがあまりにも時間をかけるので、着付けが終わるころには俺の涙も、最後の一滴まで出し切って、すっかり乾いていた。
――いつまでも、うじうじと泣いていても仕方がない。
俺は、気持ちを入れ替えることにした。
――俺には。守るべきものがある。
貞じいはあまり目を合わせてくれない。
だが、着付けの終わった俺を見ると、満足そうに微笑んで、
「和颯様のこの凛々しいお姿をご覧になれば、極楽浄土のお父上も、必ずやご安心なさるでしょう」
と言った。
貞じいなりの、精一杯の誉め言葉だと、俺にも分かった。
葬儀は熱田神社の北西にある、万松寺という寺で行うことになっている。
一益が留守番をしてくれると言うので、俺たちは早めに屋敷を出ることにした。




