火鳥の部屋
俺はその足で火鳥の部屋へ行った。
部屋の扉に手をかける。
入るぞ、と声をかけようとして――俺は凍り付いた。
中から、声が聞こえる。
あの声は……一益――?
「じゃあ、開けるぜ?」
それは、俺が今まで聞いたこともないほど優しい声で――。
俺はそこに、棒立ちになる。
「ほら……。
奇麗だろ……?」
火鳥が何か言った。
「――そんなこと言うなよ。
まだやることが残ってるだろ?」
何かに例えるなら。
転んで泣きじゃくっている小さな女の子がいて。
一益が隣に座り、その子の顔をのぞき込んで、ありったけの心を込めてなぐさめている。そんな話し方で。
あの、自信の塊のような一益の、その声色に込められた想いの深さに、俺の胸が締め付けられる。
次の言葉は聞こえない。
何を言っているんだろう。俺は扉に耳を近づけた。
聞こえない。
聞いちゃいけない気もする。でも耳をそばだてずにはいられない。
――俺はなんて、情けない男なんだろう。
再び一益の声が聞こえた。
「――だから、勝手に死ぬな。
分かったか?」
その『分かったか?』は、質問ではなく、相手が必ず同意すると知った上での『分かったか?』だと、俺にも分かった。
俺は、逃げるようにその場を立ち去った。




