葬儀の後
各務野の葬儀から数日後。
俺は貞じいの部屋に行った。
「話が――したいんだけど……」
部屋の中から気配はするが、返事はなかった。
俺はもう一度声をかけた。
やはり返事はなかった。
俺は部屋の前から立ち去った。
政じいに相談しようとしたけれど、不在だった。
どこへ行ったんだろう。
一益も部屋にいない。
屋敷の中のそこかしこに、目に見えないひずみを感じる。
俺の屋敷だというのに、妙な疎外感を感じる。
まるで屋敷全体が、姿の見えない誰かに乗っ取られているみたいだ。
何かが。
おかしい……。
まるで巧妙な罠にはまっている気分だ。
顔の見えない黒い影が、高笑いしながら、屋敷の廊下を闊歩している。
そんな想像をして、俺は身震いをした。
こわい。
おそろしい。
できることなら、ここから逃げ出してしまいたい。
だが――。
何かが起こっているにせよ、起こっていないにせよ……。
いざという時、本当に頼りになるのは、父上から譲り受けた何かではないはずだ。
なぜならそれは、本当の意味での、俺のものではないのだから。
絶体絶命のピンチでも、俺の側にいて、俺と共に戦ってくれるのは――俺自身が努力して、心を砕いて手塩にかけて、イチから育て上げた、本当の意味での俺のものだけだ。
俺は連日、梁田の部下たち――もはや、ごろつきとは言わせない――立派な軍隊に成長している――の訓練に励んだ。




