~陽の巻~
早く早くと政じいが急かすので、かなり早めに会場についた。
籠から降りる火鳥に手を貸そうとしたら、一益に首根っこを掴まれて、引きずるように連れて行かれた。
信じられないことに、俺に挨拶をするために集まってきた人達の列が出来上がっていた。
熱田の奉納踊りには、去年も来たが。
その時は、こんなに皆に話しかけられたりはしなかった。
去年までは通り一遍の挨拶しかよこさなかった織口家本家の家臣たちまで、手土産持参で、愛想よく挨拶に来るので、驚いた。
――そうか。
梁田を部下にして、俺の軍事力と経済力が強まったから。
みんなが俺に注目しているのか――!
――なんだか、気分がいいぞ!!
俺が会話に詰まると、いつの間にか隣にいた火鳥がすかさず助け舟を出した。
家族、馬、舞、唄、連歌……。
火鳥の出す話題は豊富で、どういうわけか、決して相手のストライクゾーンを外さない。
まるで、事前に彼らの趣味を把握し、頭に叩き込んで来たかのようだ。
なんというか……できる妻っぽい!
少し離れた場所では、政じいと一益が、本家の家臣たちと談笑している。
一益は、ずっと前から織口家に仕えているかのように、馴染んでいる。
ああ。
なんだかすごく……。
居心地がいい……。
外が騒がしくなり、父と信勝の到着を知らせる声が聞こえた。
俺たちは、父と信勝のための道を作り、頭を下げた。
父は信勝を従えて現れた。
後ろには、柴田勝家が控えている。
父と信勝は、舞台の前に設置された一番いい席を目指し、ゆっくりと歩いてくる。
父は、俺の前で立ち止まった。
俺は目を上げた。
父は、俺の目を見て話しかける。
「和颯――」
「はい、父上」
「最近は、いろいろと頑張っているようじゃないか。
噂は――聞いているぞ」
「はいっ!」
嬉しくて、耳が熱くなる。
父は、俺の肩に手を置き、俺の耳に顔を近づけた。
「これからも、信勝を盛り立ててやってくれ。
――織口家を……頼むぞ」
「はいっ! お任せください!」
――嬉しい。
父に。
……認められた……!
――俺は……これからも! がんばるぞ!




