馬上
「……うまくいくかなぁ」
俺はため息をついた。
「今回は俺が一緒に行くんだ。
失敗なんかするはずないだろう」
一益が自信満々にそういうと、本当に失敗なんかしないような気がしてくるから不思議だ。
だけど、そもそも盗賊団が柴山に来るかどうかすら怪しい。
関所にいた男に「頭に渡しておけ」と言って手紙を渡しただけだ。
一益は「これで大丈夫だ」と自信満々だったけど……。
俺を乗せた馬は、柴山に向かっている。
俺は口を開いた。
「なあ、初日から気になってたんだけど。
聞いてもいいか?」
「いいぜ。何でも聞いてみろ。
答えるかどうかは俺次第だけどな」
一益は口を大きく左右に広げ、にかりと笑った。
俺は息を吸った。
「その火縄銃だけど――」
「コイツか」
一益は肩に担いだ袋をそっと撫でた。
「――高かっただろう?」
一益は肩をすくめた。
「まあ、な」
俺は一益から目をそらした。
「……どうやって、手に入れたんだ?」
石の塊を喉から出すようにして言う。
真面目に働いて買えるような値段ではないはずだ。
まさか――。
人には言えないような手段で……。
一益の返事はない。
俺はおずおずと一益を見た。
一益は、じっと前の一点を見つめたまま黙っている。
――あ。答えてもらえないパターンか……。
馬の足音が響く。
しばらくして、一益がぽつりと言った。
「博打だ」
あまりにも沈黙の時間が長かったので、俺は最初、それが鉄砲の入手方法の話だと分からなかった。
「――あ? そう……なの、か」
――そんなにしんみりすることか……?
一益は続けた。
「博打で、勝ちまくった。
それで、買った」
そうか。博打か。
それなら、俺でもできるかも。
「――俺も、博――」
「やめとけ」
最後まで言う前に、一益が遮った。
「お前には向いてねぇよ」
「どうして?」
一益は肩をすくめた。
「お前は人を、裏切ったり騙したりするのは、苦手そうだ」
ああ。それは、確かに……。
「そういう奴に、博打は無理だ」
……そう、かもしれない……。
「俺は博打で勝った。だけど、勝つ前に15回負けた。
――俺には失うものはなかった。だから、できた」
………。
いくら鉄砲のためとはいえ、今から博打で屋敷を失うというのは、辛いものがある。
今、屋敷まで失ったら。ますます父と政じいを失望させる。
――なくすのは、懐剣だけで十分だ。
……それももう、ずっと昔の話だ……。
それに、後悔はしてない。
「おい、シケた顔すんなよ」
一益が、俺の背中をバシッと叩いた。
「お前にも買えるさ。
火縄銃の値段だって、数年前に比べたら、かなり下がってきている。
――欲しいんだろ? 火縄銃」
「うん。欲しい。どうしても」
するりと言葉が出た。
一益は満足そうに頷いた。
「あんたには、あんたのやり方があるさ」
「それってどんな?」
「さあな。俺にも分からねぇ」
おい。
「だが、探すのは手伝ってやる」
胸の中がほんのりと暖かくなる。
なんだろう。この。
安心感。
いや、違う。
一益は本気で、俺ならできると思っている。
期待されているんだ。この、俺が。
だから。
きっと。できるはずだ。




