6、盗賊・リベンジマッチ 〜陽の巻〜
「え……本当に、これを着なきゃダメ……?」
俺は懇願するように一益を見上げた。
「どうしても気に入らねぇんなら、こっちか……これでも良いぜ」
一益が指さしたのは、どれも目がチカチカするような派手派手しいラフな浴衣ばかり。
「なんというかもうちょっと……。
――落ち着いた柄があるだろう……?」
「『部下はいらねぇ』って事なら、いくらでも着る物はあるぜ」
一益は顎を上げて鼻で笑った。
俺は言葉に詰まる。
――部下は、欲しい。
俺は。強くなりたいんだ。
俺は、示された中では一番無難な、萌黄の浴衣を指差した。
ありえないくらい派手だ。
「髪結いの紐はこの中から選びな」
――えっ!?
青と、緑と――赤!!?
アタマおかしいんじゃないの!?
「じゃあ、せめて袴は褐色で――」
「あ。袴は禁止な」
嘘だろ!!!!
俺に、このド派手なリラックスウエアで外を歩けと……?
いやだ……。
絶対に笑いものになる……。
「約束の時間になる。
強くなりたいんだろ。早くしろ」
ええええええ~~!
結局、緑色の髪紐を選んだ。
「ん~。いまひとつ、パンチに欠けるんだよなぁ……」
一益はぶつぶつ言っている。
――いや、十分に破壊的だと思うぞ。
「入ってもよろしいでしょうか?」
扉の向こうから火鳥の声がした。
「いや! 入らないで! 頼むから」
「あ! 良いところに! どうぞお入りください!」
俺と一益が同時に声を上げた。
扉を開けて火鳥が入ってきた。
ええっ!?
この屋敷の主人は俺だよね??
なんで一益の発言が採用されて、俺の発言が無視されたの!?
火鳥は俺を上から下まで眺めた。
「まあ、お似合いですこと」
おい。見え透いた嘘をつくな。
「ですが、あちらの着物の方が、もっとお似合いになったのでは?」
「私もそう言ったのですが。和颯殿が、どうしてもこちらがいいとおっしゃるので」
ねえねえ、君たちのセンスはぶっ飛びすぎじゃない?
「そうですか。お気に召さなかったのならば仕方がありません。
ですが、髪結いの紐はこちらの方が……」
火鳥が手に取った紐は――赤!?
いやいやいやいや。
一番ありえないやつだから!!!
「いやちょっと待って。それ、一番ダメなやつ」
「そうですか?」
火鳥は一瞬考えるそぶりを見せたが、すぐに極上の笑顔を見せた。
「赤は、和颯様にお似合いになると思います」
――えっ。そう、かな……?
一瞬動きが止まったのが運の尽き。
火鳥は小さなハサミで、俺の髪に巻いてあった緑の紐をプチンと切った。
火鳥の細い指先が、俺の髪を掻き上げる。
――うっ……わっ……。
俺の動揺を無視して、火鳥はそのまま、赤い紐でくるくると俺の髪を高く巻き上げていく。
え?
ちょっ……。
待って! 待って!!
たっ……高く結いすぎじゃない??
「完成です」
火鳥が言った。
「――いやちょっと待って……まずは、鏡を……」
俺の発言はまたもや無視された。
「時間だ! 相手を待たせるとまずい。そのまま行くぞ!」
一益が俺を急かす。
「お似合いですよ」
火鳥がにっこりと微笑んだ。
ねえっ!
君たち2人は、どうしてそんなに息がぴったりなの!?
俺と一益は馬に乗り、屋敷を出た。
火鳥が笑顔で見送る。
今日の火鳥は、やたらと機嫌が良い。
途中、那古野村ですれ違った皆が、口をあんぐりと開けて俺を見ている。
(たいへんだ……)
(ご乱心だ……)
(ご乱心だ……)
ねえっ! 違うんだ!
誤解だよっ!
あああ〜っ! みんなぁっ!
俺を見て、目をそらさないで~!!




