表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の妻は忍(しのび)ですか? ――でもって、もしや、次に殺される男は俺ですか?? ええ〜っ! 俺、まだまだ生存希望ですけどっ!?  作者: ひの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/237

大蛇退治

~陽の巻~


 濁った水。視界が悪い。

 

 俺はまず、今自分がいる周辺を調査し、その後徐々に捜索範囲を広げることにする。

 途中、息継ぎのため、水面に顔を出す。

 俺が顔を出すたびに、集まった村人たちが騒ぐ声が聞こえる。


 ――大丈夫だ。


 大丈夫だ。

 俺は。まだ。

 まだ、死んでいない。



 俺は、何度も息継ぎをしながら、池の隅から隅まで、丹念に大蛇を探した。




~陰の巻~

(和颯様の奥方様だ)

(火鳥様だ)

 ひそひそと、ささやかれる声。


 こちらは(しのび)

 いかなる時も目立つのは避けるべきだ。

 でも、今はそれどころじゃない。


「火鳥さま……」

 各務野が、気遣うように声をかけた。


 

 ――どうする? どうする? どうする?――


 大蛇と戦うことを想定した準備など、してきていない。

 持っている武器は、懐剣だけだった。


 懐剣しかないのなら、懐剣だけで何とかするしかない。

 火鳥は帯に挿していた懐剣を抜き、握りしめた。


 泳ぎは。得意ではない。

 闇雲に池に飛び込んでも、体力を奪われるだけだ。


 ならばいつ、飛び込んだらいいのだろう。

 池が――織口和颯の血で赤く染まった時?

 いや、それでは遅い。

 大蛇が織口和颯に襲いかかる前に勝機を見出さなくては。

 水面を凝視していれば、先に大蛇に気付けるだろうか。


 そもそも。

 大蛇に勝てる見込みはあるのか?


 いえ。たとえ勝てなくても――。


 水面に波紋が広がった。

 取り囲む人々の間に緊張が広がる。

 

 火鳥は懐剣の柄を、右手でしっかりと握った。

 右手に左手を添える。

 柄は自分に、刃は池に向けて構える。

 いつでも飛び出せるよう腰を落とした。


 水面から現れたのは、織口和颯の顔だった。


 ――い、生きてる……――


 くずおれれそうになる膝を支え、姿勢を保った。



 織口和颯は懐剣を口に咥えたまま、大きく息を吸うと、再び池に潜った。


 火鳥の息が止まる。

 音が消える。

 永遠とも思える時間が過ぎる。


 水面の別の場所に再び波紋が広がった。


 火鳥は懐剣を構える。

 ひりつくように息が止まる。



 織口和颯が顔を出した。

 火鳥は喘ぐように息を吐く。

 

 織口和颯が息を吸い、また潜った。

 


 水に波紋が広がる度に、火鳥の呼吸が乱れる。


 

~陽の巻~


 広い池の中を、隅から隅まで泳いだ。

 どれだけ探しても大蛇はいなかった。


「大蛇は、いない」

 俺は水から顔を出し、大声で叫んだ。

 

 岸辺から、安堵のため息が漏れた。


 俺は、岸に向かって泳ぎ始める。




~陰の巻~


 水から顔を出した織口和颯が大声で言った。

「大蛇は、いない」


 彼は岸に向かい、なめらかに泳ぎ始める。



 ――ああ……。



    ……………良かった……。



 火鳥の膝が崩れた。

 視界がぐらりと揺れ、音が遠ざかる。


 世界が、暗転した。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ