尾張・清須
途中で野宿をした。
やっとの思いで清須へたどり着いたのは、次の日の朝だった。
よろよろと倒れ込みたい気持ちを奮い立たせる。
やらなければいけないことが、山のようにある。そのうちのどれ1つとして、喜んでやりたい内容ではなかった。
本家と貞じいに、帰国したという連絡をしなければならない。
斎藤道三は、死んだ。
それも。伝えないと。
遠征に協力してくれたみんなには、日当を支払わないといけない。業種によって報酬が違うから、間違えないように。
怪我をした人は手当てを。特に頑張ってくれた人には褒美を。
貸し出した鎧や、槍、刀の本数を数えなければ。弓と矢も。
次に、いつ必要になるかわからない。壊れたものがあれば修理もしなければいけない。
馬も。休ませないと。牛が全頭そろっているか、よく数えて。ケガや病気の確認させないと………。
「一益!」
俺は一益を呼ぶ。
「悪いけど、今から。
那古野と……本家に行ってくれるか?
俺たちの帰国と……敗戦……。
それから……。
道三殿が戦死した旨の、連絡を」
「分かった」
一益が頷いた。
俺は一益に向き直った。
改まって礼を言う。
「それから……。
火鳥の事だけど……。
本当に、ありがとう。
心の底から………。一益には、感謝している」
火鳥は今、部屋で眠っている。
一益は、木曽川の川岸で火縄銃を撃った時を除いて、彼女の部屋に寝かすまで一瞬たりとも火鳥を手放さなかった。
一益は俺を見た。低い声。
「――道三殿は、火鳥様の目の前で首を斬られた」
「……」
一益が、俺の耳元に口を寄せた。
「火鳥様から、目を離すなよ」
「――分かった」
俺は、頷いた。




