〜陽の巻〜
川の端から端まで、舟を横付けにして並べる。舟を縄で固定して、その上に木の板を渡せば、舟橋の完成だ。
木曽川の流れは激しく、舟を固定するのに苦労したようだ。だが、熱田では、1日に何度も舟橋をかけている。熟練の人夫たちは、あっという間に木曽川に舟橋を架けた。
俺たちは舟橋を渡った。
舟橋はギシギシと音を立てたが、俺たち全員を渡しきっても大きく破損するようなことはなかった。
この舟橋は、俺たちが尾張に帰るための命綱だ。ここにいる全員が撤退するまで、この橋は死守しなければならない。
俺は船橋を守るように、本陣(戦いのための基地)を作った。
本陣を作っている間に、貞じいの書状を3度、読み直した。
俺が木曽川を越えてはいけない理由が、理路整然と書き連ねてある。
――ごめん、貞じい。
もう、木曽川は越えてしまったんだ。
俺はもう、戻らない。
俺は書状をたたんで、懐にしまった。
数人の斥候(先回りして様子を見る係)を放ったが、誰も帰ってこない。
最後に戦況を聞いたのは、木曽川を越える前だった。
前線からここまで、片道1時間くらいはかかるだろう。
つまり俺が最後に聞いた戦況は、少なく見積もっても2時間以上前のもの、ということになる。
――連絡を待ってから出陣したら、手遅れになる。
俺は斥候の報告を待たず、出陣することにした。
大まかな場所は分かっている。
まずは川に沿って北に進めばいいだろう。
「俺の舅の斎藤道三を救援に行く!
今まさに、尾張を狙っている今川義元と対抗するために、斎藤道三殿の協力は絶対に必要だ!
俺たちの尾張を守るために!!
斎藤道三殿を助けに行くぞ!!」
※船橋 川に船を並べてつなぎ、その上から板を乗せた即席の橋




