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俺の妻は忍(しのび)ですか? ――でもって、もしや、次に殺される男は俺ですか?? ええ〜っ! 俺、まだまだ生存希望ですけどっ!?  作者: ひの


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〜カワセミの唄〜 那古野

「――えっ……?」

 俺は、耳を疑った。

 聞き間違いか?


「すみません。

 おっしゃる意味が、よく分からなかったのですが……」


「だ〜か〜ら〜」

 林秀貞の弟・道具(みちとも)が小馬鹿にしたように俺を見下ろす。

「援軍は出せない。

 そう言ったんだよ。

 キミ、態度だけじゃなく、耳も悪いの?」


 ふざけるな、そう怒鳴って掴みかかりたい気持ちを、ぐっと抑える。

 俺がここで喧嘩をすれば、困るのは和颯だ。



「それは……。

 織口和颯さまの第一家老であられます、林秀貞さまも、同じご意見、ということでしょうか」

 俺は貞じいの目を見つめた。


 貞じいは、一瞬だけ、瞳に罪悪感を滲ませた。だがすぐに渋面を作り、つい、と目を逸らした。



「ですがっ!」

 俺は片膝を立てた。


 今、貞じいが住んでいる、この那古野の屋敷だって、もとは和颯の屋敷だったのだ。

 それを預けられておきながら、この緊急事態に『協力はできない』って――。

 さすがに道理が通らねぇ。


「――間違いは、お(いさ)めするのも、家臣の務めですのでな」

 貞じいは、目を逸らしたまま立ち上がった。


「書状を、お書きする。和颯さまにお渡しを」



 このまま帰される訳にはいかねぇ。

 俺は食い下がった。

「秀貞殿っ!

 斎藤道三殿は、和颯さまの最大の後ろ盾です!

 その道三殿を見殺しにする事が、何を意味するのか。

 秀貞殿に、お分かりにならないはずはないでしょう!?」


「――であっても。

 負ける戦に()ける兵力など、持ち合わせておりまぬ。

 たとえ、今ここで天地がひっくり返ったとしても。援軍は、お出しできませぬ」

 秀貞は、俺の目を見ずに言った。


 文机の前に座る秀貞。

 背筋を伸ばし、深く考えるように墨を()った。想いを込めるように、上質の紙にゆっくりと文字をしたためる。

 書状を書き上げると、丁寧に畳んで俺に手渡した。


「いくら道三殿が戦上手でも、こんなにも兵力差があっては、どうしようもない」



 秀貞は、ちらりと弟・道具を見て、俺の耳元に口を寄せた。


「良いか、一益。

 この戦は、必ず、負ける。


 それでもお前が和颯様に、生きて再び尾張の土を踏んでいただきたいと望むなら。

 和颯様に木曽川を渡らせてはならぬ。

 たとえ何が起ころうとも、だ。


 それが、今回の、お前の仕事だ。

 ――分かったな?」

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