~陽の巻~
暗がりの中で、細長いものを探すのが、こんなに大変だとは知らなかった。
蹴り飛ばされた刀。
床にはいつくばって探しても、全然見つからない!
探す場所が、間違っているのか?
場所を変えようとしたら、一益が「ぎゃっ」と小さく悲鳴をあげた。
――一益っ!
俺は、振り向いた。
さっきまで俺が寝ていた場所は、月明りでぼんやりと照らされている。
激しく咳き込む一益をその場に捨て置いた侵入者が、庭へ開け放たれた扉へと、まっすぐに走っていく。
「逃がすかっ!」
俺は足をもつれさせるようにして、扉に飛びついた。
勢いよく、扉を閉める。
「ここは通さないぞっ!」
部屋はたちまち真っ暗になった。
足音。
がっ、と扉が開く音がした。
――???
「え?」
庭への扉は、俺がおさえつけている。
「――あ?」
――なんで、扉が開く音がしたんだ?
「あ~!」
――そうだ! この部屋には、もう一つ扉がある。
屋内の廊下へ続く扉だ!
くそっ――!
「待て! 逃げるな! 卑怯だぞ!?」
俺は慌てて後を追った。
まっすぐな廊下。
廊下を走る足音は、西側へと遠ざかっていく。
後を追おうとして部屋を飛び出し、俺は蒼ざめた。
真っ暗な廊下から一か所だけ、ぼんやりと灯りが漏れる部屋がある。
部屋の扉は開いていて……。
―――火鳥っ――!!!
火鳥の部屋だ!!
俺の、血の気が引く音が聞こえた。
―――火鳥は……火鳥だけは―――やめてくれ―――!!
俺は無我夢中で走った。
このまま死んでもいいと思った。
右手が、目の前を走る男の着物の裾をとらえた。
すかさず掴んで引っ張る。
男の足元が乱れた。
「火鳥――っ!! 逃げろ――っっっ!!!」
のどが潰れるほど叫んでも、火鳥の部屋からは何の物音もしない。
(離せっ……)
動きを封じられた男が、刀を振り上げた。
(嫌だっ――! たとえここで殺されたとしても――離さないっ!)
俺は両手で男の着物の端を握りしめ、体を丸めた。
「ふざけんな!!」
一益の声がして、俺の手から着物を引っ張り返す力が、ザクリと消えた。
「火鳥はここにはいねぇ!」
一益が自分の刀で、侵入者の着物の端を切ったのだと分かった。
一益はそのまま、俺を背中から抱きかかえるようにして後ろに倒れこんだ。
再び侵入者の着物を掴もうとした俺の手が、空を切った。
侵入者は一瞬たたらを踏んだが、すぐに体勢を立て直した。こちらには目もくれず、灯りの漏れる火鳥の部屋へと飛び込んだ。
「やめろ! 火鳥、逃げろ―――っ!」
俺の絶叫。
静寂
――ん?
一益?
……火鳥は、いない――って言った?
一益はまだ咳をしている。俺は一益の両肩を掴んで揺さぶった。
「火鳥はどこだ!?」
「俺の――部屋……」
かすれた声が答えた。
俺は一益を離す。
そのまま一目散に、一益の部屋へと走った。




