~カワセミの唄~
侵入者が和颯の太刀を蹴り飛ばしたので、俺にかかる力が、わずかに緩んだ。
すかさず俺は、刀の重心をずらして、敵の力を受け流す。
侵入者の体勢が崩れた。俺はすぐさま足払いをかける。
敵はバランスを崩してたたらを踏んで――と思ったのは、奴の演技だったのだろうか。
侵入者が、懐に手を入れ、何かをつかみ取った。
――何をする気だ!?
俺はそいつの手元を凝視する。
奴は、握りしめた何かを勢いよく、そのまま俺の顔に投げつけた。
思わず息を吸う。鋭い痛み。
細かい粒子が、見開いた目に侵入した。
――しまった! 灰の粉だ!!
思いっきり灰の粉を吸い込んだ俺は、激しくせき込んだ。
涙と灰で、視界が濁る。目が痛い。
和颯は、部屋の隅で四つん這いになって、暗闇に落ちた刀を探している。
侵入者は、庭へと開け放たれた扉に向かって駆け出した。
「逃がすかっ!」
和颯の気配が、開け放たれていた扉へと飛びついた。
勢いよく、扉が閉まる音。
「ここは通さないぞっ!」
――和颯……そこをどけ。
俺の想いは、咳に消されて声にならねぇ。
そんな奴、逃がしてしまえ。
――お前がそいつを殺しても、そいつの主人は痛くもかゆくもねぇんだよ。
ただの、駒。それが、忍だ。
侵入者の判断は速かった。
直接庭に出るのは危険だと判断したのだろう。俺のすぐ脇を走り抜け、廊下へと飛び出した。
「え?
――あ? あ~!
待て! 逃げるな! 卑怯だぞ!?」
一拍遅れた和颯が、刀も持たずに後を追う。
――いや、お前が致命傷を負う前に、コイツはとっとと逃がすべきだ!
涙と鼻水が止まらない俺が、咳き込みながら後を追う。




