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俺の妻は忍(しのび)ですか? ――でもって、もしや、次に殺される男は俺ですか?? ええ〜っ! 俺、まだまだ生存希望ですけどっ!?  作者: ひの


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~陽の巻~

 ――ぐふっ……!


 腹に、とてつもない違和感を感じた。


 いっ――痛い………。


 何なんだよ……。

 勘弁してほしい。

 せっかく気持ちよく寝てたのに……。


 ――誰だよ……こんな夜中に。

 しかも……。

 なんか、寒い。


 ねえ。俺、昼間、けっこう頑張ったよね?

 どうして俺が、こんな目にあわなくちゃいけないわけ?



※※

 今日から『清州に入る』。

 でもって『俺が清州を治める』って……。

 言葉で言うのは簡単だけどさ。実際にやるのは、結構大変なわけ。


 俺も――。坂井大膳が挙兵した時、清州の田んぼの米を全部刈り取って持って行っちゃったのは、間違いない。別の日に、みんなの家に放火しちゃったりもしたけど……。

 今になって! 猛烈に! 後悔している!!


 もちろん、稲を刈り取られたり、家を焼かれた人は根に持っている。戦のどさくさで、俺の部下に家族を殺された人もいる。

 数年分の俺たちへの恨みが積もっている人のコミュニティに

『いやー。この前は戦だったしねー。

 キミ達の田んぼを荒らしたし、家も燃やしたし、家族も殺しちゃったけど。

 これからは、仲良くしようよ! よろしくねー!』

 ――って入っていく、俺のメンタル!!

 誰がケアしてくれるの!?


 俺だって、自分が清州を治めることになった以上、頑張るつもりだよ?

 特に、この数年の戦で生活が苦しくなった人については、できる限りの援助はしなきゃいけないと思っている。

 でも、だれか一人を援助すると、別の一人が不満に思ったりして、ホントめんどくさい。


 彼らだって大変なのは、分かる。

 仮に家や畑が壊滅状態になっても借金とか年貢とかはきちんと払っていかなきゃいけないわけで……。みんなの暮らしはガタガタだ。

 俺の権限でチャラにできる借金はチャラにして、できない借金は肩代わりしてあげたり、返せるようにサポートしてあげたりするわけなんだけど。

 これまた誰か一人を援助すると、別の誰かが不公平だと言い出したりして――。


 もう、気が狂いそう!!


 じゃあ、全員にお金を配ったらいいのかっていうと、そんなことすると今度は働かない人が出てくるわけで……。

 それでも、どうにかこうにか。

 皆が納得して、気持ちよく働いて、荒れた田んぼは耕して。来年からは年貢も払ってくれるように。

 一人一人と向き合って。代替案を出して、根回しをして。不満そうな人は一人づつ呼び出して。話を聞いて、説明して。なだめて、すかして、説得して。おだてて、脅して、頭を下げて――。


 俺だって、けっこう大変なんだけど!!


※※


 ねえ、俺、頑張ってるよね!?

 実は今、すごく、眠いんだけど――?



 ああ……もう。

 怒ってもいいかなぁ――。

 俺の腹を、踏んづけた奴!!!


 俺は、渋々、目を開けた。

 

 庭に面する扉は、全開だった。

 

 ――ああ……。なるほど――。

 だから、寒かったのね……。

 外の風が、入り放題だもんね。


 ――じゃなくって!

 

 閉めておいてよ!

 寒いから!


 俺、寝るときはちゃんと閉めたよね!?




    キ―――ン




 金属と金属がぶつかり合う音。

 暗い部屋に、火花が散った。



 これは―――刀!?

 しかも、至近距離だ!!


 俺の眠気が一気に覚める。



 誰かいる!

 侵入者か!?

  

 怒鳴り声。

 「馬鹿野郎! 起きろ!!!」

 一益だ!

 俺を背に庇うようにして、上から振り下ろされた刀を受けている。



 まずい! 一益が押し負けそうだ。

 俺も! 応戦しないと!!

 俺は夜具をはねのけた。


 ――刀っ!

 枕元に手を伸ばす。

 

 ――ガンッ!――


 侵入者の足が伸び、俺の刀が蹴り飛ばされた。

 刀は、部屋の隅の暗がりに消えた。


 なっ――何すんだ――っ!


 俺は、刀を追って部屋の隅へ走る。

 くそっ、暗くてよく見えないぞ!!!!

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