~陽の巻~ 嵐の海
俺たちは、船ごと吹っ飛ばされるようにして沖へ出た。
ビュンビュン風が吹いて目も開けられない。
俺は船にしがみつく。自分が吹き飛ばされないようにするだけで精いっぱいだ。
鉄砲を入れている木の箱の、蓋が外れて舞い上がり、瞬く間に見えなくなった。
一益を含む数人が、これだけは吹き飛ばされないようにと、必死に鉄砲の箱に覆いかぶさっている。
(ごめん! みんな!!
俺、ちょっと調子に乗りすぎた!!
これはちょっと―――無謀だった!!)
―― 1時間後 ――
熱田の船頭は、俺が思うよりもずっとずっと優秀だった。
信じられないことに俺たちの船は、無事に目的地にたどり着いていた。
海岸で、鉄砲の本数を数えていた一益が、額の水をぬぐいながらこちらへ向かってきた。
「和颯様。皆は近くで休ませて、我々は緒川に参りましょう。
水野信友に会い、直接話を聞かなければ――」
……一益……。
この状況で次のことを考えているなんて――。
なんてタフなんだ。
俺はもう、フラフラなのに……。
だが、俺の目の端に、美濃の男たちが映った。
――そうだ。見られているんだった!――
俺のここでの行動は、逐一、道三殿に報告される。
道三殿は、俺に1000人もの兵士を借し出している、巨大スポンサーだ。
俺は慌てて背筋を伸ばした。
「よし、分かった」
なるべく堂々と見えるように低く言い、軽く頷く。
俺は背筋を伸ばしたままで、皆に言う。
「明日は一日、全員休息。
明後日の朝いちばんに、村木砦を攻撃する。
皆、これが奇襲であることを忘れるな。
俺たちが上陸したことを、敵に知られないように気をつけろ」
「「応!」」
たのもしい、仲間たちが頷いた。
俺は、美濃の人達に向けて精一杯の虚勢を張りながら、足をふらつかせつつ、なんとか緒川に向かった。




