表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の妻は忍(しのび)ですか? ――でもって、もしや、次に殺される男は俺ですか?? ええ〜っ! 俺、まだまだ生存希望ですけどっ!?  作者: ひの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

152/237

〜陽の巻〜 出発前日

 ドゴ――――――ン!!


 耳をつんざくような爆音が鳴り響き、全ての音が消え去った。


 500丁の鉄砲が一斉に火をふき、那古野の景色が煙に覆われた。

 最初は音に驚いて大騒ぎしていた鳥や小動物も、もはやこの一帯からはいなくなった。

 目の前を覆っていた灰色の煙が薄まると、動いているのはただ、二発目を撃つために必死で弾込めをしている仲間たちと、彼らの間を動き回る梁田と一益だけだった。

 俺の耳は大音量に悲鳴を上げ、新たな音を拾うことを拒否している。



 両手で耳をふさいだ貞じいが視界の端から現れ、こちらに向かって何やら口を動かしている。

 ――あ、悪い。今は聞こえない。

 身振りでそう伝えると、不機嫌そうに顔をしかめて山の斜面を指さし、俺の袖を引っ張った。


 俺は一益を見る。

 ――こっちは問題ない。行ってこい。

 一益は、俺の顔を見て頷いた。



 貞じいに引っ張られていった場所には、道具(みちとも)もいた。

 俺を見ると、愛想のいい笑顔で頭を下げた。


 道具は、貞じいの弟だ。貞じいとは3才差の38才。

 二人とも俺の家臣だけど、性格が違う。

 貞じいは真面目で一本気。

 何かと俺に小言を言ってくる貞じいとは違い、道具は人当たりがよく、要領も良い。

 面倒な仕事を振られそうになると、ニコニコしながらいつの間にか誰かに押し付け、自分は逃げ出しているタイプだ。


 道具はいつも笑顔だし、思いやりのある言葉もかけてくれる。

 でも俺は、貞じいの方が頼りになると思っている。



 ここからは、さっき美濃から到着した兵士たちが、野営の準備をしている様子が見える。那古野村から1Kmの場所だ。1000人以上いる。

 俺はもちろん、彼らの到着と同時に、手土産になりそうな物をかき集めて、礼を言いに行ってきた。


 貞じいが、美濃の兵士たちを指さし、すごい剣幕で怒っている。

 少しづつ耳が聞こえるようになってきた。

「なぜ敵兵が、那古野の目の前で駐屯準備をしているのです!?」


「道三殿が兵を貸してくれた。しばらく那古野を護ってくれる。その間に、緒川の救援に行く」


「和颯様、まさか本気じゃないでしょうね?」

 貞じいが俺につかみかかりそうな勢いで言った。


「何を言っているんだ。俺はいつだって本気だぞ」

「少しは人を疑ってください!!」


「疑う理由がどこにある?」

「美濃は敵国で、斎藤道三の十八番(オハコ)は裏切りですよ!?

 疑わない理由の方が知りたいです!!」


 俺は胸を張って答えた。

「俺の留守中に清州軍が攻めてきたら、火鳥は清州軍の人質になる。

 道三殿は、愛娘の身を案じて、清州軍から那古野を護るために、軍隊を貸してくれたんだ」


「――ンな訳、あるはずないでしょう!!」

 とうとう貞じいは、俺の胸ぐらをつかんだ。


「美濃軍は、和颯殿と精鋭部隊が那古野を出たら、すぐさま那古野を乗っ取るつもりに決まってる!!

 冗談じゃない!

 どうして清州の小悪党を牽制するために、美濃の大悪党を引き入れたりしたんです!?」


「――とんでもない言い草だな……」


「とんでもないのは和颯様です!

 わざわざ敵を、屋敷の前に招いてから出陣するなんて!!

 

 私は絶対に出陣しませんよ!

 わたくし直属の部下と、残った百姓達を率いて、何が何でも那古野を護ります!!」


 え?


「いや、できれば貞じいも、一緒に村木に出陣――」

「お断りします!!」

「頼むから、そんなこと言わずに――」

「お断りしますっ!!!」



 俺は言葉を尽くして貞じいを説得しようとした。

 道具はずっと、困った顔で俺と貞じいを見て、おろおろしていた。


 貞じいは決して首を縦に振らなかった。

 

 鈍色(にびいろ)の雲が、西の空を染めていくのが見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ