火鳥の部屋
和颯は、なにやらずっと、ひとりで喋り続けている。
「――信勝様には、反対されたのですね」
火鳥は声をかけた。
「そうなんだ! 冷たいやつめ!」
――でも、信頼しているんでしょう?
「正しいことを言えばいいってもんじゃないぞ!
だが、これで村木砦は落ちたも同然。
信勝め!
今回そこは、鮮やかに村木砦を攻め落とし、『参りました。さすがでございます、お兄様』と言わせてやる!」
「おい、鳴海と沓掛を、どうやって通過するかっていう問題が残ってるぜ――」
一益が、懐から地図を出した。
「ぎゃふん」
――……忘れてたんだ。
(↓ 地図
那古野から村木へ行きたい。 ただし、赤色は今川義元の勢力圏)
「一益、お前は村木砦の偵察に行ったんだよな。
どこを通った?」
「俺は忍びだぜ。
鳴海と沓掛の間の道を、歩いて通った。
目立たないようにして普通に、な」
火鳥は首を傾けて、一益の持つ地図を、横から見た。
鳴海と沓掛は、今川の砦だ。
「よし、そのルートで行こう。商人のふりをして通ればいいだろう」
「無理だ。700人だぜ? 目立ちすぎる」
「じゃあ、10人くらいずつ分かれて――」
ん?
――何を言っているのだろう。
「武器を持って? 70組がごく自然に?
できるわけねぇ!」
「武器はなるべく目立たないようにして……」
「鉄砲500丁だぞ。嫌でも目立つわ!」
――那古野から、村木に行くのなら……。
取るべき道は、ただ1つ。
「そこはほら、根性でなんとか……」
「根性万能説を、捨てろと言ったはずだ」
彼らには、見えていないのか……。
火鳥は、墨を含んだ筆を手に取った。
「――このルートしか、ないと思うのですが……」
火鳥は、一益の持つ地図に、線を書き入れた。
↑
那古野から熱田まで陸路。
熱田の船着き場から、船で緒川へ




