~陽の巻~
気になる馬は二頭いる。
一頭は白毛の馬。良い脚をしている。闘志がみなぎっていて、持久力もありそうだ。
もう一頭は、栗毛の馬。黒いぶちがある。悪い馬ではなさそうだが、ややのんびりしている印象か。
突然、白い馬が不機嫌そうに首を振り、鼻を鳴らした。神経質そうに足を踏み鳴らしている。
「あの、白毛の馬はどうだろうか」
囁くと、火鳥は俺を見上げた。
俺の目を見て言う。
「気晴らしの、乗馬用の馬をお探しでしたら、白毛の馬が良いでしょう。
ですが、戦に連れて行くのなら、栗毛かと――」
「だが、白毛の馬の方が足が速そうだ」
火鳥は、眉をひそめた。
「馬主と話してきます」
言い終わった時には、馬主に向かって歩いていた。
火鳥と馬主が話している。火鳥は、馬が水を飲むために用意されている、水の入った桶を指さして何か言っている。
初めは渋い顔をしていた馬主だったが、火鳥が彼に小銭を握らせると、口角を上げて頷いた。
火鳥は、水の入った桶の前に歩いていくと、それを持ちあげた。
白い馬の前に来ると、火鳥は桶の中に自分の手を突っ込んだ。
馬の首筋に向かって、手で水をぱちゃりとかけた。
白い馬は不機嫌そうに鼻を鳴らし、神経質に首を振った。不愉快な様子を隠すことなく足を踏み鳴らし、火鳥に嚙みつこうとした。
火鳥はひらりと身をかわすと、今度は栗毛の馬の前に行った。
桶を両手で持ち上げる。何の前触れもなく、中の水を全て、勢いよく、栗毛の馬にぶっかけた。
栗毛の馬は、表情を変えなかった。驚いた様子すら見せなかった。
ただ、ぶるぶるっと体を震わせ、体についた水を払い落とした。
水浸しになった火鳥が、空になった桶を持ったまま、俺を見た。
「戦は突然起こります。途中で、雨が降ることもあるでしょう。
戦に連れて行くなら、こちらの馬がよいのではないかと」
火鳥の慧眼に、俺は脱帽した。
「この、栗毛の馬を、試し乗りさせてもらいたいのだが――」
俺は馬主に向かって話しかけた。




