熱田の馬市
熱田はいつも以上に賑わっていた。
火鳥は、長い髪を1つに束ねた後、背中でくるりと紐のように結んでいる。
袴をはき、濃紺の着物の袖をきりりとたすき掛けにして、女だてらに馬市の雰囲気に馴染んでいた。
一益は、俺と火鳥の後ろについて、油断なく辺りを警戒している。
馬市には近隣で育てられた若い馬が集められ、売られている。
軍用馬もいれば、農耕馬もいる。駿馬、というべき軍用馬には、目の玉の飛び出るような金額がつけられている。
売主と買主の合意があれば交渉成立だ。その場で交渉して売られる馬もいれば、競りにかけられてる馬もいる。
数えきれないほどの馬主が集まり、数えれないほどの馬が売られている。
だが、同じ馬主の馬は似たような雰囲気を醸し出してるのが面白い。
俺はざっくりと全体を見て回ったが、そのうちの一人の馬主の前で、俺は足を止めた。
「どう思う?」
火鳥にささやく。
「悪くないと思います」
火鳥は言った。
「高額そうな馬も、安そうな馬も。あの男の売る馬はみな健康そうで、体が引き締まっています。
特に軍用馬は、よく走り込んでいる脚をしています。
それに。大切に育てられているのでしょう。目に落ち着きがあります」
――やはり、火鳥と一緒に来たのは正解だった。
俺は、腰を据えて一頭ずつ、馬を吟味することにした。




