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~陽の巻~

 剣の稽古をし、槍の稽古をし、剣と槍の手入れをして、弓を撃った。


 気付くと昼過ぎになっていた。

 せっかくのいい天気だ。少し出かけよう。

 どこへ行こうか。


 この前、萌と馬に乗ったのはずいぶん前だった。

 久しぶりに、萌を誘ってみよう。

 

 萌に会いに行く途中で、屋敷の隅にある部屋の前を通る。

 今日も、この部屋からは、人の気配がしない。



 乗馬に誘うと、萌は手をたたいて喜んだ。

 萌と俺は馬に乗り、ゆっくりと外に出た。


「――兄上が亡くなり、萌は帰る場所がなくなりました。


 火鳥姉さまはご実家に戻られると聞き、萌は悲しくて泣きました。

 火鳥姉さまは萌に『一緒に来る?』と聞きました。

 萌は『はい』と答えました」


 萌は淡々と語っていく。


「ご実家に戻ったのもつかの間、火鳥姉さまは、すぐにまた、お嫁に行ってしまわれました。

 お相手は、萌の叔父上でした」


 馬は、見晴らしの良い丘の上へ登っていく。


「叔父上は、萌の兄上を殺したのは道三様だと信じていました。

 このままでは終わらせない。必ずかたきを討つと、事あるごとに申していたとか。ある時叔父上は家来を集めて馬に乗り道三様に襲い掛かろうとしましたがそのとき――


 俺は途中から萌の話を聞いていなかった。


 丘の下。

 麦の穂が揺れるその先に、見知った顔があったからだ。



 あれは……火鳥――と信勝!!?


 火鳥はともかく、どうして(信勝)が、こんなところにいるんだ?


 近くには、二人の他に誰もいない。

 火鳥と信勝は、二人並んで、親しげに話しながら歩いていく。

 信勝が立ち止まり、(ふところ)から小さな包みを取り出した。

 火鳥はそれを受け取った。

 信勝が何かを言う。火鳥が笑った。

 

 なんだなんだなんだなんだなんだなんだ、なんなんだ。


 俺の心臓が不愉快に脈を刻んだ。

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