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俺の妻は忍(しのび)ですか? ――でもって、もしや、次に殺される男は俺ですか?? ええ〜っ! 俺、まだまだ生存希望ですけどっ!?  作者: ひの


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当日 ~斎藤 道三~

 彼らの持つ高い技術力を誇示するように、寺の瓦屋根に陽の光があたり、鈍く輝いた。


 桜が咲いている。

 道三はかなり早い時間に聖徳寺に到着した。


 ――忌々しいあのガキに、恥をかかせてやる――


 自分の家臣700人に、自分が着るような立派な着物を着せた。

 全員ずらりと、御堂の縁に並んで座るように命じる。


 ――これで、どこに儂がいるか分からず、みっともなく右往左往するに違いない――



 我ながらやっていることが大人げないと思う。

 だが、そうでもしないと収まらないくらい、はらわたが煮えくり返っていた。



 家臣たちを寺で待たせ、道三は町はずれの小屋に向かった。

 この小屋は、織口和颯が寺に行くときに必ず通る道沿いにある。織口和颯の行列をのぞき見するのにちょうど良い場所を、あらかじめ探させておいた。

 壁には、のぞき穴もある。


 道三が小屋に隠れて待っていると、織口和颯がやってきた。

 道三は、のぞき穴に目を当て、こっそりとその行列を見た。


 先頭で馬に乗り、行儀悪くふんぞり返っているのが織口和颯だろう。

 髪は萌黄色の紐で、盗賊と見間違うほどに、高く野蛮に結い上げている。派手な柄の浴衣の袖には腕を通さず、日に焼けた上半身を曝け出している。

 ちゃんとした丈の袴ではなく、丈の短い半袴。それも、トラ皮とヒョウ皮をさらに4色に染め上げた、やんちゃな柄。

 腰につけた太刀と脇差には、豪奢な金銀の飾りがついているのに、柄には荒縄が巻いてある。

 腕にまで太い麻縄を巻きつけ、腰には瓢箪。それも、じゃやじゃらと7つも8つもぶら下げている。 

 馬が歩くたびに腰につけた瓢箪が揺れ、その間から、赤い火打石の袋が見え隠れしていた。



 ――ありえない……。

 なんという服装だ。

 あれが本当に織口信秀の息子なのか?

 アタマがおかしいのだろうか。


 だが、彼の後ろからついてくる軍隊を見て、道三は顔色を変えた。

 人数は700人ほど。尾張からの長旅だったにもかかわらず、まだ走る元気がある者がいる。

 歩いている者も、疲れ切ってはいない。

 槍は朱塗り。槍の長さは統一されていて、どの槍も6メートル弱。身長の3倍以上。

 冗談みたいに長い。



 道三は槍の名手だ。


 確かに長い槍は有利だが、扱うのに必要な筋力が跳ね上がる。

 てこの原理が働くためだ。


 あの槍を扱うということは――よほど訓練された部隊の証。



 さらに驚いたのは、兵士たちが持っている火縄銃。

 道三も、火縄銃は何丁か所有している。

 だが、彼らが持っている火縄銃は、一丁や二丁ではない。

 その数ざっと500丁。


 鉄砲は、実用品ではない。

 一発を撃つのに気が遠くなるほどの時間がかかる上、狙った場所にはめったに当たらない。

 だから実戦では使えない。常識だ。

 爆音を出す精密機械。超高額なおもちゃ。


 それを500丁も見せびらかして歩いている。

 「金ならある」

 そう誇示したいのだろうか。


 道三は改めて馬の上の織口和颯を見た。

 ぶっ飛んだ、ど派手な衣装。

 所詮は19才。まだ尻の青いガキだ。

 精一杯、見栄を張って粋がって、虚勢を張っているようだが――。

 


 背は高くない。髭も薄い。武士としては華奢な体つき。

 一騎打ちならば、絶対に勝つ自信がある。

 槍であれば――3分。

 愛用の槍さえあれば、3分以内に必ず、あの憎たらしい若造の、息の根を止めてみせる。


 だが、あの部下たちの持つ異様に長い槍はどうだ。

 「一騎打ちの勝負はしない」そう宣言しているようだ。

 織口和颯と自分が、部下を率いて、実際に戦ったらどうなるだろう――。

 あんな槍を何百本も構えられたら、道三の自慢の槍が、織口和颯の喉元に届く前に、こちらが串刺しにされてしまう。


 もやもやとした不快感を胸に、道三はこっそりと寺へ戻った。


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