回想 ~斎藤 道三~
欲しかったのは、死んだ花鳥姫の代わりだった。
もちろん、死んだ娘の代わりになる者などいないということは分かっていた。
だが耐えられなかった。この際、同じ年頃で女なら、誰でも良いと思った。
ところが、何人もの養女候補の少女たちと出会って分かったのは『やはり誰でもいいわけではない』という事だった。
顔が可愛らしくない、辛抱がきかない、頭が悪い……。
どうにも欠点ばかりが目に付く。
死んだ花鳥姫だって、絶世の美女ではなかったし、辛抱強くも賢くもなかった。
それでも、唯一無二だった。
劣化コピーを手元に置くくらいなら、いっそのこと、自分に忠実な忍の娘を一から育てよう。
それはほとんど思い付きだった。
だが、悪くないアイデアだと思った。
くのいちなら、どんな酷い扱いをしても問題ない。それに、気に入らなければ何度でも代替可能だ。さらに婚姻ともなれば、どんなに最低な相手にでも、心置きなく嫁がせることができる。
考えれば考えるほど、くのいちを花鳥姫の代わりにするしかないと思うようになった。
婚姻は、重要な外交ツールである。
うまく使えば、今よりもっと「高み」を目指せるはずだ。
突然、黒トカゲの小屋に駆け込んできた娘は、「カゲロウ」と名乗った。
色黒で、みっともないほど痩せて、ぎょろぎょろと目だけが大きかった。
機転は利きそうだが、外見が悪い。
かわいらしい、とは疎遠の顔つき。
さらに胸元の醜い傷。
さすがに、どこかにもっと良い娘がいるはずだ、と思った。
だが、まあいい。
ものは試しというではないか。最初から上手くいくなどとは思っていない。まずは手始めに、この娘を連れて帰ってみよう。
くのいちなど所詮、使い捨ての駒。
とりあえず引き取っておいて、気に入らなければ取り換えればいいだけのこと。




