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~陰の巻~
密書を持たせた使者が帰ってきた。
「父上は、なんと?」
火鳥が聞いた。
使者が答えた。
「道三さまは、火鳥様の夫と、その弟君について、いたく興味があるとおっしゃっていました」
――承知いたしました。
「信秀の二人の息子について、詳しく調べよ」
それが次の指令だった。
この一か月、遠くから織口和颯を観察した。
織口和颯についてなら、既に多くのことを知っている。
馬術、剣術、槍術の稽古は、雨が降ってもさぼらない。
早寝早起きで、酒は飲まない。
厩は清潔。馬の世話は、いつも行き届いている。
それと。
萌が――斎藤家の人間には、誰にも心を開かなかった、あの萌が――織口和颯に、なついている。
一方、信勝に会ったのは祝言で一度だけ。
知っていることはあまり多くない。
今は織口和颯の妻なので、本家に顔を出すのも不可能ではない。
だが、無計画に訪れても、信勝に会えるとは限らない。かといって、何度も行くのは不自然だ。
既に織口和颯には疑われている身だ。
怪しまれる行動は慎みたい。
――どうやって調べようか。




