織口家本家
「お前の正妻が決まった」
父に呼び出されて本家に行くと、そう言われた。
俺も13歳だ。
そろそろだろう、とは思っていた。
「もちろん、政略結婚だ」
うん。正妻だしな。
それ以外、ありえない。
大丈夫。ちゃんと心得ております。
「ちなみに、相手は初婚ではない」
まあ……仕方ないか。
「初婚ではないし、二度目の結婚でもない」
むむ?
となると……。
「これが三度目の結婚だ」
お……おぅ。
離縁されたのか? 性悪なのか?
だが、俺に拒否権はない。
「相手の名前は、火鳥姫、という」
なかなか勇ましい名前の姫君だ。
うわぁ。性格、キツそうだな……。
「敵国・美濃の、斎藤道三の娘だ。
正妻の一人娘だと聞いたが、俺は眉唾だと思っている」
心得ました。養女でも問題ありません。
「そうそう。大切なことを伝えておく。
過去に火鳥姫が嫁いだ男は皆、結婚後すぐに、謎の死を遂げている」
――なぬっ!
それって、火鳥姫に殺されたんじゃ――。
「悪いが、お前、火鳥姫と結婚してくれ」
え~~~~~~~~!!!
「ち、父上っ!」
さすがに聞き流せないぞ。
「その縁談、お断りできなかったのですか!?」
俺、まだまだ生存希望ですけど!?
「あ~……」
父は、バツが悪そうに目線を泳がせた。
「俺は去年、斎藤道三と戦って、派手に負けた」
確かにあれはヤバかった。
もう俺たちに、戦う力は残っていない。
「で、斎藤道三が出してきた、和平の条件に『俺の嫡男と、火鳥姫の婚姻』が含まれている」
――うぐっ!
「おかしいと思わないか?
戦で負けたのは俺なのだ。
俺の娘を、人質代わりに、斎藤家へ嫁に出せ、というのなら分かる。
だが斎藤道三は、自分の娘を、織口家に嫁がせろという。
なんというか――……怪しさ満載だ」
うわぁ……。
――同感ですぅ……。
「俺の跡は、信勝に取らせるつもりだ」
知ってる。俺の弟だ。
ちなみに俺は、自分の屋敷を貰って独立済み。
それはつまり、俺がとっくに跡取り候補からは外れている事を示している。
「本命の跡取りを殺されるとさすがに困る。
幸いお前は、れっきとした、俺の長男だ。
道三には、お前が嫡男だってことにして、この縁談を進めておくから、お前はお前でいろいろ準備しておけ」
え~~~~~っ!!!
それはつまり、火鳥姫に殺されないよう、対策を練っておけってことですか!?
ってか、俺は殺されてもいいの!!?
――まあ、いいんだろうな。
戦では、身体が大きい方が有利だ。
でも俺は、あまり大きくなれなかった。
合戦の時、大柄な武将との一騎打ちに持ち込まれたら、ほぼ敗北確定だ。
――仕方ない、か……。
俺はため息をついた。
織口和颯、13才。
目標は、生き延びる事であります……!




