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三題噺もどき4

手紙

作者: 狐彪
掲載日:2025/12/19

三題噺もどき―ななひゃくきゅうじゅうさん。

 




 カチカチと忙しなく時計の針は進んでいく。

 カタカタとキーボードを叩いてはやめ、叩いてはやめを繰り返している。

 クルクルとマウスを動かしては、クリックをして画面を開いたり閉じたりしている。

「……」

 光のない暗い部屋では、パソコン画面は目に痛いほどに光を放っている。

 もう少し光度を下げてもいいのだろうけど、そうすると逆に見えづらくなるのだから扱いづらいところだ。

「……」

 仕事でこうして、パソコンを使ってはいるが、別に専門知識があるわけではないのだ。仕事に必要最低限の知識しかないので、これがどうすれば丁度良くなるのかとか、そもそもそんなことができるのかも知らない。困っていないから、知ろうとも思わないのだが。

「……」

 それに、役に立っているかは分からないが、ブルーライトカット加工のされた眼鏡はしているので……そこまで目に悪いような状態にもなっていないだろう。実感はないけれど。

 私の性質上、暗闇でもよくよく見えるように、光は取り入れやすい。その量を調整することは出来るが、仕事をしているとその調整が狂うことがあるので―集中しているとどうしても―その補助として眼鏡をかけている。今のところこれで困ってはいない。

「……」

 まぁ、そんな私の仕事事情はさておき。

 ―それにもう、今進めている仕事はもう終わりに近づいて来ている。

 あとは最終確認をして、先方にデータを送るくらいだ。

「……ふぅ」

 そう思い始めた瞬間、体の緊張はほどけ、前のめりになっていた体を、椅子の背中に預けた。

 ギシ―と小さく悲鳴を上げる椅子をよそに、小さくマウスを動かしていく。

 最終確認をしているのだが、思考は別のところへと飛んでいた。

「……」

 今朝がた―と言っても、世間一般では夕方の方が正しいのだが―起きて、いつも通りにリビングに向かったところ、机の上に一通の封筒が置かれていた。

 シンプルな白い封筒。封は―少し前にも見た、アレの紋章。

「……」

 端の方が軽くはがれていたから、先に見つけた家の従者が中身を確認したのだろう。本人は読んでないと言って渡されたが。そんなわけがないんだよな……。

 それが少しでもネガティブなモノであれば、こんなところに置いたりはしない。早々に捨てるだろう。……ここ数日、外に出ることをしなくなった原因は、アレのせいだから。接触がなくなった後でも、まだ少し躊躇っている。

「……」

 それが突然、手紙をよこしてきたのだ。

 いいような気分はしないが、ここにある以上見た方がいいのだろう。

 どうせたいしたないようではない。意外と、誰もがもらうような普通の内容だったりするかもしれない。そんなに―怯えることはない。

「……」

 そう言い聞かせながら、封筒を手に取り、蝋をはがした。

「……」

 中身は。

 まぁ、案外。

 拍子抜けするような内容だった。

「……」

 それと。

 どうやら。

 未だに、この辺りに潜んではいるらしい。

「……」

 曰く―いつまで引きこもりをしているつもりなのかな。ほんの少しだけ話をしたいのだけれど、君の従者が目を光らせているからね。何、ちょっとしたプレゼントだよ、クリスマスももうすぐ来るしね。気が向いたらあの公園に来ておくれ―だと。

「……」

 まぁ、信用はしていなかったが、いきなりあんな手紙をよこす意味も分からない。

 しかし、その従者が良しとして机の上に置いていたのだから、会う事自体は許容している……のだろうか。判断基準がよく分からない。

「……」

 その時は、どうせ一緒に来るつもりだろうから……その気になるかどうかは別として。

 未だに外に出られていないのは、確かだし、そろそろ出た方がいいことも確かではある。別に出なくても問題はないのだけど……気分的に、引きこもりはよくない。

「……、」

「ご主人」

 そうは言ってもなぁと、仕事から思考が完全に離れて、手が止まったあたりで、声がかかった。―部屋の戸には小柄な青年が、エプロン姿で立っている。裾の方に大き目の椿のイラストがプリントされているようだ。ホントにどこから見つけてくるのだろう。

「休憩にしましょう」

「ん……あぁ、」

 もうそんな時間だったか。

 まぁ、アレの事は、コイツと考えた方がいいな。





「……あの手紙、どう思う」

「どうと……言われましても」

「……あった方がいいと思うか」

「……読んでいないので分かりませんが、ご主人の好きにしてください」

「あとで見せてやろう」

「……いりません」











 お題:椿・ネガティブ・紋章

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