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ファニルside2


「何でこんな簡単な魔法も使えないんだ!コースタル家の恥さらしめ!」

「傷を治す魔法?気持ち悪い!魔法は殺すための兵器よ!」


「忌み子が!お前なんか生まれて来なきゃ良かったんだ!さっさと私の前から消えろ!」


━━━━━


辛い記憶を思い出しながら自らの生い立ちをファニル達に話すジャラオック。

テルバ共和国の元々の国名はゾグタン王国と言う王制の国であり王族は白髪で産まれると言う特徴があった。しかし王家はいつしか腐敗、それに伴い起こった革命により王族とほとんどの貴族は処刑され新たにテルバ共和国となったのである。


「僕は魔法の名門であるコースタル家の生まれなんです、でも治癒魔法しかマトモに出来ない僕は家では蔑まれて····嫌気が差して家を出たんです」

「そういやぁ、コースタル家の末子が行方不明になったって記事が出てたな!」


コースタル家は革命の際に中立を保ったため処刑を免れている。コースタル家の血を継ぐ者は王家とは対照的に黒色の髪で生まれてくる、白色で生まれたジャラオックは不貞の子と疑われ肩身の狭い思いをしてきたのだ。


「探してなんか無いと思いますよ····居なくなってくれて清々してるでしょうね」

「どうでも良いけど治癒魔法とか普通にレアでしょ?頭大丈夫?アンタの親族」


相変わらず空気を読まないファニルだが一般的に人が使える魔法は火水風土の4属性のみである、人を治癒する魔法と言う物は魔法観測史上初の代物なのだ。


「魔法は王家を守るための武器であり敵を殺すための物であると言うのがあの家の家訓だったので····」

「あれ?王家裏切ってない?」

「そこはどうでも良いだろ!とりあえず俺達のギルドに来てくれ!お礼がしたい!」


揚げ足を取りたがるファニルをスルーし冒険者二人は自分達のホームである冒険者ギルドへとジャラオックを案内しファニルも付いていった。


───


「仲間の命を救っていただき、ありがどうございます」


ギルド長の赤い髪の女性がジャラオックに頭を下げる。歳はファニルとさほど変わらないようだ。


「いえいえ····当然の事をしたまでです」

「彼らは私の家族です····本当にありがとう····!」

「家族って言い回し好きだねぇこの国の人間」


堂々と足を組みソファーに座るファニル、お茶は出ないの?と言いたげな様子だ。


「貴様は呼んでないんだがな····」

「ファニルさん!失礼ですよ!」


一触即発の空気が流れたがジャラオックがファニルを嗜めた事で収まった。


「ジャラオック様····この女は?」

「ファニルさんです、とっても強い女性なんですよ!」

「よろしく~」


汚物を見る目で睨むギルド長だが王太子ファラリスの愛人をしていた時に多くの令嬢から憎悪の視線を向けられたファニルとしては小娘のしかめっ面ごときでは動じない。


「ゴホン!ではジャラオック様、暫くは私の家の別荘でお過ごしくださいませ」

「やったー!気が利くじゃん」

「ギルド長は防衛大臣のアルストさんの娘なんだぜ」

「アルスト家の!?と言う事はサニアさんですか!?」


王国時代は辺境伯、今は国防を司る防衛大臣の職に就くアルスト家の令嬢サニア····弱冠16歳にして冒険者ギルドのトップにまで登り詰めた才女である。


「お久しぶりにございます、ジャラオック様····!すっかり大きくなられて····」


ジャラオックとサニアは幼少期にパーティーで顔を合わせていた仲である。過酷な辺境の地で育ったサニアは中央のボンボン貴族の子供達とは馬が合わず治癒魔法しか使えないため仲間外れにされていたジャラオックと良く話していたのだ。


「サニアさんもお綺麗になられて」

「お世辞だよバーカ」

「これ程までに性格の悪い女は初めて見たが?魑魅魍魎が渦巻く社交界にもいない逸材だぞ」


二人だけの世界に入ったのが気に食わないファニルが煽って来たがサニアもそういう奴なんだと受け入れる所まで来ていた。


積もる話しもあったろうがピンク髪のじゃじゃ馬が不貞腐れるためジャラオックはソレを連れて別荘に向かったのであった。


「もー、機嫌直してくださいよ」

「気を遣わせたみたいですみませんね~!折角の初恋の方との再開なのに~」


完全に拗ねているファニルにため息を吐く、早く夕飯の支度に入りたいのにこのままでは夜が明けてしまう。


「初恋じゃありませんよ、お姉さん的な奴です」

「口では何とでも言えますけどね~!」

「ファニルさん嫉妬してるの?」

「はっ!?してねーし!はっ?」


顔を赤く染めてオーバーリアクションで動揺するファニルをジャラオックは後ろからそっと抱きしめる。


「ウチのお姫様は嫉妬深くて困りますね」

「うっせーわ!早くご飯作って!」

「ハイハイ、かしこまりました」


その後、すっかり仲直りした二人は出来上がった夕食を食べてその日は眠りに就いた。


「何であんな女に····!」

「ギルド長····みっともないんで辞めましょうよ····」


ちなみにサニアがハンカチを噛み血の涙を流しながら一部始終を覗いていた事は内緒だ。




続く


























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