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愚かな女の末路


「リーエル!私は貴様との婚約を破棄する!」


豊かな自然に囲まれたダスクァ王国の王都カーティス。今宵は貴族が通うことを義務付けられている魔法学園の卒業パーティー、そんな華やかな舞台に相応しくない怒声が会場に鳴り響く。


声の主はダスクァ王国の王太子ファラリス、そして婚約を破棄された美女が公爵令嬢でありファラリスの婚約者であるリーエルである。


ファラリスは出来が良くない不真面目で遊んでばかりの愚かな王子であったが公爵家との婚約で強力な後ろ盾を得た事で次期国王に登り詰めたのだ。


そんな彼を支えるべく未来の王妃に選ばれたのがリーエルであるが勉学魔法ともに天賦の才を持つ彼女に一方的に嫉妬し関係性は最悪なものであった。


「殿下、今宵は我々の門出を祝う節目の日、そのような話はどうか後程····」

「そうやって逃げようとしても無駄だ!ここにいる皆に証人になって欲しい!ファニル!こちらへ」


ファラリスに呼ばれ前に出たのは平民の生徒であるファニル、桃色の髪をした美少女である。ファラリスと周囲の者達には小柄で可憐な少女に映っているだろうがリーエルにしか見えない角度で勝ち誇った様にニタリと笑みを浮かべていた。


「貴様はファニルに学年トップを奪われた腹いせで彼女を虐げた!未来の国母となる者が何と嘆かわしい!」


演技がかった口調でリーエルの容疑を語るファラリス、王子と言う肩書きを外せば詐欺師と言っても皆が納得する程だ。


「私は授業が終わったら王妃教育を受けに王宮に向かう毎日でした、そのような事をする暇はございません」

「嘘です!取り巻きの人達に命令してさせたんです!私ぃ····怖かったぁ····」


泣きながら訴えるファニル、ファラリスがリーエルの取り巻き令嬢達を睨むと全員が顔を逸らす。


「わ····私は何も命令しておりません、あの人達が勝手にやったことです」

「上の立場の人間には下の者達をまとめ、時には泥を被ってやる気概が必要なのだ!配下を見捨てるとは····ガッカリさせてくれるなよ?リーエル」


お前が言うなよと会場の者達は思ったが巻き込まれたく無いため口にはしない。

リーエルは配下にも見捨てられタジタジである。


「とりあえず婚約は無かった事にする、当分は実家で頭を冷やす事だな」


忠臣である公爵家が相手と言う事もあって大事にはしないと暗に示すファラリス。納得が行かず弁明しようとするリーエルにお待ちになってとファニルが駆け寄る。


「未来の王妃には私がなるから、負け犬は惨めな余生を過ごしてね~」


リーエルを挑発するかの如き言葉を耳打ちするファニル。


「平民がぁぁぁ!」

「キャア!助けて!殿下ぁ!」

「おのれ!許さんぞ!」


怒りの余りにファニルに掴みかかるリーエル····だがこれもファニルの策の内である、徹底的にリーエルを潰すつもりなのだ。


近衛兵達がリーエルを引き剥がそうとしたその時····

群衆を掻き分けて飛び出して来た男が近衛兵達をなぎ払う。


「うわあああ!」

「な····何者だ!」

「私のリーエルに汚い手で触らないでもらおうか」

「キュウクィ殿下····」


漆黒の髪を靡かせた美成年の正体は第二王子のキュウクィ、ファラリスの弟である。


「キュウクィ····貴様その悪女を庇うつもりか?」

「悪女はどっちだか、よく見ているが良いさ兄上」


キュウクィは空間上に魔法でスクリーンを造り上げ先程の耳打ちでリーエルを挑発した映像を流し始めた。


「な····何だこれは、どういう事だ!ファニル!」

「ち····違う!違うの!殿下!全部この女が仕組んだの!」

「苦しい言い訳だな、こんな映像もあるぞ」


次にキュウクィが流した映像は過去にリーエルがファニルに婚約者のいる男に近寄っては行けないと注意したときの物であった。


「王子に相手にされないからって僻まないでよね、負け犬の遠吠え乙~」


ファラリスを含む会場にいる者達はドン引きである。こんな可憐な少女が口角を釣り上げ醜悪に嗤う映像を見せられたのだからそうもなる。


「嘘よ!嘘嘘嘘ウソウソウソ!このメス豚が仕組んだのよ!ホント嫌な女!」

「私の映像魔法は真実しか写さない····貴様は私の使い魔たる精霊が常に監視し撮影していたのだよ」


分かりやすく口調を荒らげるファニル、映像から次々と垂れ流される醜悪な本性がバレてファラリスを含む周囲からは汚物を見る視線で睨まれる。


「ファニルさん····お可哀想····」

「カマトトぶってんじゃねぇぞ!クソ女ァ!殺ス!テメェだけはブッコロス!」


リーエルの憐れみの言葉に激情したファニルは魔法で氷の剣を創り怒りに任せてリーエルに斬りかかる。しかしキュウクィが剣を粉砕し彼の護衛騎士達に押さえられ魔封じのリングで魔法を封じられる。


「離せや!クソがぁあああ!覚えてろよ!クソ女!必ず殺してやんよ!」


やられ役の三下のような捨て台詞を吐き会場から連れ出されるファニル。

あまりにも汚ない言葉の応酬にリーエルの耳を塞ぐキュウクィ。


「平民の生徒の受け入れ基準を厳しくせねばならんな····ん?何だ?兄上」

「リーエル····済まなかった····あんな女だとは露知らず····」

「いえ····しかし私と殿下とでは相性が合わなかったのは事実でしょうね」


ファラリスは今までの事をリーエルに謝罪し会場を後にするのであった。


「リーエル、私の未来の王妃になって貰えるかな?」

「勿論ですわ、喜んで!」


キュウクィはリーエルにプロポーズしリーエルもそれを受け入れ会場は歓喜と祝福の渦に飲まれた。

会場を出たファラリスにもそれは聞こえたようで一滴の涙と笑顔を覗かせたのであった。


その後の顛末としては、ファラリスが王太子を降り隠居する事が決まりキュウクィが新しく王太子となった。リーエルも名実共に未来の王妃と言えよう。


さて····愚か者の末路だが裁判は行われず国外追放となった。王族を陥れようとしたファニルを祭り上げようとする勢力を生まない為だ、容姿だけは良いあの女は良い神輿になるとキュウクィは危惧したのだ。


処罰は死罪一択だったキュウクィ陣営だったがリーエルのお情けにより国外追放で許された。


ちなみにリーエルを裏切った取り巻き達もあの状況では仕方なかったとされ許されてる。全員婚約が決まり嫁いだそうだ。



「良かったのか?魔封じのリングは付けてあるから心配無いが····俺は百回殺しても足りないくらいだ」

「キュウクィ知ってる?国外に出るにはセウルム峠を越えなければ行けないのだけど····」

「っ!成る程ね····精霊を付けさせたのはそのためか····」

「あのクソ女の苦しみながら惨めに死ぬ姿····楽しみだわ····幻滅した?」

「ハハっ、まさか、それでこそ俺の妻だ!」

「私、やられたら百倍にして返す女なのよ?」


その後、二人の結婚式は盛大に行われ王都は三日三晩明かりが消えなかったと言う。


王都の南西にあるセウルム峠では今宵も獲物を捕食する野獣達の咆哮がこだましてましたとさ。




















Q、キュウクィさんはリーエルより年下なの?

A、双子だコラ!優秀なキュウクィ殿下は学校に通う必要がねーんだ!

映像魔法は見えない精霊を付けて撮影するから政争は最強だぞコラ!


Q、セウルム峠ってヤバいの?

A、死にます、人が生存できる場所ではありません

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