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第1話:序章「港の再生計画」
港は、亡くなった祖父の写真よりも醜く崩れていた。
波止場の木材は朽ち、船をつなぐ索具は錆びつき、漁師たちの視線は疲れと不信で暗かった。だが私は図面を描いていた頃の癖で、まず水はけのラインを確認する。
「……なるほど、この排水路じゃ大雨のたびに港は泥まみれね」
つぶやくと、背後の漁師たちがちらりとこちらを見た。
「あなた、何者だ?」
がっしりした肩の漁師が問う。剣も魔法も持たない、都会の紙仕事しか知らない令嬢に見えるのだろう。
「ユリア・ローレン。あなた方の港を、ちゃんと動かせるようにする者です」
私の声は落ち着いていた。だが胸の奥は、前世で積み上げた経験を異世界で試せる興奮で高鳴る。
港の水面に朝日が反射する。赤錆と泥にまみれた桟橋も、図面の上では再建の可能性を秘めていた。
「まずは排水から……その次は港を動かすための人と物の流れね」
ユリアは手元の設計図に鉛筆を走らせる。小さな港町の未来は、ここから始まるのだった——。




