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第三章② ちっこい仲間が増えました

YouTubeにて音声動画上げてます


OP「なりたい自分になればいい」


https://youtube.com/shorts/dFH4la04NC4


お手数ですがブラウザでコピペしてお聴きください

「いやー、エラい目に遭ったわねェー」

 ちょいと早めの昼食後、やっとヒエロフを出発できた。

 なんだってまぁ…オムルアからあの町へ行って出てくるまでに、盗賊に襲われるわキノコが襲ってくるわ…イベント詰め込み過ぎじゃないですかねぇ? ラノベだったらここまでで1冊分あるんじゃなかろうか?

 とはいえ、メルリが上機嫌なので無問題。オレとユーリの二人が先頭、その後ろをメルリがパイセンと何やら楽しそうに話しながらついてくる。

「メルリちゃんって、治癒系の魔法でも使えるのー?」

「はい。ご主人様から【設定】をいただきました。メルリが笑顔でいるだけで癒されるそうですよ?」

「へ、へぇ…」

 パイセンがドン引きしとるんだが。まぁ、同性の話し相手がいるというのは良いことだ。オレとユーリじゃ話題ないもんなー。

「…カナート。今メルリさんが言ってたことって、どういうことなんですか?」

「昨日、メルリに役目を与えた」

「ほう、どんな?」

「いつでも笑顔でいること、だ」

「…は?」

「大事な話だ、耳かっぽじってよく聞け。メルリの仕事は、いつでも笑顔でいること、だ」

「はぁ…」

「もう少し詰めて言えば、【笑顔の魔法】として登録してある」

「【設定】に⁈」

「ああ、そうだ」

「そんなものが… 通るんですか、【設定】に…」

「オレも驚いたよ。ちゃんと魔法として登録されている」

「効能は?」

「体力、ダメージ、ステイ

タス異常の回復だ」

「魔力は?」

「入れてないぞ? オレ、魔法使えないから」

「せっかくなら登録しておけばよろしいのに」

「やり過ぎるとチートっぽい気がしてな」

 まぁ実際、メルリの笑顔はチート級の威力がある。物理エネルギー化できるなら地上のエネルギー問題は全部解決するんじゃなかろうか?なんなら戦争も止められるかもしれん。

「実際、メルリの笑顔で癒されるだろ?」

「まぁたしかにそうですが」

 などとバカ話をしつつも歩く。

 で、オレたちの後ろにヒミコがついてくる。バックアタック警戒という意味では理想的な配置ではあるが…オレ、あの()の声、聞いたことがあるっけ? まだ話をしたことがないから記憶にないのか?

 まぁともかく、メルリもこのパーティーのメンバーに慣れたってことだろう、笑顔が眩しいぜ。

 ああ…カワイイなぁ、もう。間違いない、うちのメイドは世界一!

「いえ、その…」

 ん?

 メルリが真っ赤になって俯く。今のどの文脈で真っ赤になる要素があった?

「カワイイのは同感だけど…」

「やはり気付いていませんか…」

 パイセンとユーリが神妙な顔。

 なんだ? 何か隠し事か?

「いえ…そういうわけではないのですが…」

 ユーリよ、おまえはエスパーか?

 なぜモノローグに繋がるような会話をする?

「エスパーとかじゃなくってねー… カナっちー、ぼっちでいる時間が長いと独り言が多くなるらしいよ?」

 パイセンまで? 何の話?

「その…誠に言いづらいのですが…おそらくカナートが思っていることは全て口から出ています」

 …なんだって?

 メルリの方を見る。俯いたまま…というより目を合わせないよう下を見ている、というべきか。

「マジ、で?」

 ユーリに訊く。

「マジ、です」

 ユーリは答える。

 じゃぁ何? メルリはカワイイなぁとかうちのメイドは世界一とかも?

「はい」

 証明キタコレ。

 メルリは茹っている。耳まで真っ赤っかだ。

「そう…なのか…」

 愕然とした。思っていたことがダダ漏れだったとは…

「僕は最初、よく喋る人だなぁとは思ったのですが、どうも内容から察するに思ったことが口からダダ漏れなのだな、と。ただそれを指摘すべきか、ずっと迷っていました」

「パイセンは? 気付いてた?」

 コクリと頷く。

「メルリ…も?」

 コクコクと頷く。

「まいったな、こりゃ…」

 天を仰ぐ。

 どこかに穴はないか? オレはそこに入る。入ったら埋めてくれ…

「あの! でも!」

 急にメルリが佇まいを正し、真っ直ぐオレに向き直る。

「ご主人様はメルリを守って下さいました。目に見えるものはもちろんですが、過去のこと…その、エルフの森のことも…そんな記憶からもメルリを守って…優しくして下さって…メルリが笑っていられるよう、気をつかって下さって…だからメルリはご主人様にお仕えするのです。ご恩に報えるよう…メルリは、メルリを見つけて下さったご主人様に、一生お仕えするのです」

 そう言って…少し恥ずかしくなったのか、また俯いてしまった。

 ああ、カワ

 やめておこう。

「ねぇ、二人は結婚とかすんのー?」

 はァっ?

「いえ! そういうことでは! あの! その!」

 手が足がわたわたと空中を暴れる。オレは…固まったままだ。

 結婚、ねぇ?

 なんかそういうのとは違うと思うんだけど、ずっとメルリのそばにいたいとは思う。

 おっと

「ダダ漏れ、なんだよね…?」

 コクリ、と真っ赤なメルリはただ頷く。

 ちなみにユーリは先ほどから視界の空間に姿が見えない。ヤツは…さっきから地上を笑い転げており今…立ち上がってきた。

「ひぃぃ…ひぃぃ…こんなの呼吸止まりますって…ふぅ…いやー、臆面もなくよく言えるなとは思ってましたが。僕はカナートが本当に裏表のない人だなと思いましたので。だからこの旅にもお誘いしたわけですし」

 なるほど、そうか。

 あ、いや

「なるほど、そうか。分かった。これからは声出していくよ…」

 運動部の練習かよ…



「そういや、パイセンって武器、何使ってんの?」

「よくぞ聞いてくれましたーッ!」

 なんだなんだ? 急に元気度にブーストかかったぞ? パイセンは担いでいたリュックを下ろして手を突っ込み、次から次へと…

「まずこれ、よく使うのはP-90とSIG228。239が欲しかったんだけどエアガンじゃ無くってねぇ。あ、Five-seveNは持ってるよの」

 なんだこのリュック。明らかに容積と出てくるモノの大きさが合わない…

「それから狙撃用にSVD(ドラグノフ)でしょ? PSG-1でしょ?」

 次々に並べられる銃器。まるでアングラ武器市場を見てるみたいだ。

「あ、もういいです」

「そうそう、これもあるの。じゃーん! FA-MAS!」

 聞いてねぇ…

「これはねぇ…これこれ、SIG P210。サイドアームはこれとFA-MASの組み合わせで使うんだけど、手に入れるの大変でさぁー。でも念願叶って手に入ったら、もう嬉しくて嬉しくて。真っ赤なイブニングドレス着てサバゲに参加したったわ!」

 ふとヤンマーニって言葉が脳裏をよぎったんだが。それはそうと似

「今、似合わないって思ったでしょー!?」

「い、いや、そんなことは…」

 …思考が漏れるって想像以上にヤバいな…

「ドレスって…当たったら痛いんじゃないすか?」

「いーたーいーわーよーっ⁈ もっともドレスなんか着て出たのはその時だけで、普段はこのコスっ!」

 さらに下がる防御力。スク水で? サバゲ?

 頭おか

「うるさいわねー!」

「何も言ってな」

「でもね、当たれば痛い分、当たらないようにしようとは思うわね! だからこの乙女の柔肌にキズなんぞ付けようとする輩はみんな血祭りよ! ぎっひっひ」

 乙…いや、無心…無心…このままじゃ悟りを開きそうだ…

「でもこの世界、相手倒すのにBB弾じゃ弱すぎね?」

「うっしっし。じゃ、ちょっと見せたげるわ。そこの木、見ててみ?」

 木?


パシュッ カスンッ


 ウソ…

「ね?」

 直径30cmはゆうにある木の幹を、BB弾が貫通…微かに煙が上がってる…

「銃も弾も魔力で強化してあるから、この通り。もっともパワーあり過ぎて貫通しちゃうのよー。実弾だと体内に入ったらぐるぐる回って抉るんですって。エグいわよねー」

「…もう、実銃で良かったのでは?」

「いやー、実銃ってどんなもんか知らんもの。モデルガンもよく分かんないし。だからアタシの銃は元々エアガンで在るものばっか。それに単純なパワーだけなら鉛の実弾より上だもんね。異世界様さまですわ。ああ、当然これも持ってるわよ!?」

 リュックからゴソゴソと出したのは…Glock17…

「…パイセン、サバゲー好きなんすか?」

「サバゲーはそれほどでもなんだけど、ほら、ハマったアニメとかマンガで見たヤツって欲しくなっちゃうじゃん? コスなんかも。でもコスプレ会場で銃持ち歩くわけには、ってんで、サバゲーに出てみた、って感じよ」

 あー…分かりみが深い…

「しかし…パイセンが銃で、他はみんな剣って物理攻撃ばっかじゃん…魔法使いとか捕まえらんなかったの?」

「昔はいたんだけどねー」

 あ、キノコか。

「まぁいいじゃない、それぞれ好きなこと、やりたいことやれば。ガチでMMOやるんでもないしさー」

 …この世界は厳しいと聞いていたはずだが、随分のんびりな…でも勝利にこだわってギクシャクするよか、この方が良いのかもな。



 そんな感じでのどかな遠足の隊列よろしく森の中を歩いているわけだが

「ご主人様ッ!」

 不意にメルリが声を上げた。

「気配が! それも大きな!」

「何ッ⁈」

 と振り返ると


のそー


 でっか!

 最後尾のヒミコの向こうに怪物出現。

「キャァ!」

 悲鳴と共にメルリはオレの腕に縋り付く。

 で、これ…何?

「サンショウウオ、ですね! それもオオダイガハラサンショウウオです!」

「さすがユーリ、よく知ってんな! それ、あんなでっかいもんなの?」

「いえ、普通は20cmほどですから、あれはおそらくミュータント」

「ミュータント?」

「変異体です。キメラを合成している者がその研究過程で生み出しては捨てているって噂で」

「迷惑な話だ」

「ごもっとも」

「で…パイセン! どうすんだ、これ?」

「どうするもなにも」

 こっちがモタモタと対応を云々している間に

「もらったァッ!」

 凛々しくもかわいい声。

「たぁりゃァァァァァァァッ!」

 なんと。ヒミコが刀を抜いて巨大サンショウウオへ走る。

「ヒィちゃん! 待っ


ばくんっ


「…あーあ…」

 喰われちゃった…

「あーあ、て…ちょ、パイセン???」

 声裏返っちゃったよ!

「ヒィちゃんねぇ、残念美人なのよ…動くもの見るとああやって行っちゃうのよねー。止めらんねー止まんねー」

 あの()、前世はブラックバスかなんか?

「…で…助けなくて…いいのか?」

「うーん、ちょっと様子みて、ヤバかったら」

 気のせいか? パイセン、なんだか楽しそうなんだが…


ズクッ


 サンショウウオの背中から刀身がにょっきり。


ザクッ ザクッ


 そうこうしている間に、サンショウウオは内側から切り刻まれ、姿を消した。

「…勝った」

 そう言いながら、ヒミコはこちらへ向けて歩いてくる。

「もー、ヒィちゃーん。消化液まみれじゃないのー」

「…生臭い」

 それこそ、頭のてっぺんからつま先まで、どろっとした粘液まみれだ。

「どうします? ロッジ、出しますか?」

 とユーリが言う。ロッジ?

「うーん、その辺に川とか泉でもあればじゃぶじゃぶ洗えるんだけどなー」

 人を洗濯物のように…

「ちょっとその辺、探してみましょうか」

「ヒィちゃんはじっとしててね! 何か来ても斬りに行っちゃダメよっ⁈」

「分かった」

 ああ、これお母さんと子供だ…



 というわけで手分けして近くの水辺を探すことに。

「みずぅ、みずぅ…」

 と砂漠で彷徨う人の如く独り言なんぞ言っていると

「キャァァァァァァァァァァッ!」

 悲鳴が上がる。この声、間違いない!

「メルリッ!?」

 慌ててそちらへ向かう。そこにはヘタぁと尻もちついたメルリがいた。

「どうしたッ?」

「ごめんなさい、大きい声を出してしまって。でも…これ…」

 メルリの指す方向には…

 人。しかし大きさは20cm少々。人と呼ぶには小さすぎるのだが…

「これは…ニンフ、ですね」

 元々がどうなのかは知らないが、一糸纏わぬ姿で、なおかつ背中から流血している。

 パイセンもやって来た。ヒミコは…さっきの場所で待機。約束を守る偉い子だ…

「おそらく羽を毟られたんでしょうねー」

 メルリが地に横たわるニンフに手を伸ばす。

「かわいそう…」

 両手で、慈しむように抱え上げる。皆でそれを見守るが、メルリは今にも泣きそうだ。

 その時


ぴくん


 微かに動いた。

「う…」

「この子っ! 生きてますっ!」

 メルリが驚きと喜びの声を上げる。

「う…ううっ…」

「大丈夫。もう大丈夫」

 それは神々しいまでの笑顔だった。慈しみの声と笑顔がニンフに容赦なく浴びせられる。

「う…ここは…」

 メルリの両手のひらの上でニンフが起き上がった。

「大丈夫? 痛いところはない?」

 ニンフはキョトンとした表情から一転

「イ…イヤァァァァァ!」

 胸と股間を隠すようにして叫び声を上げた。

「あ、そうか! うーん、ご主人様! ごめんなさいっ!」

 メルリはそう叫びニンフを膝の上に乗せると、エプロンドレスの裾を掴んで


ビリリッ


 破り切った布片をニンフの体に巻きつけた。

「ごめんなさい。今はこれしかできないの」

「あ、ありがとう…」

 おお、しゃべった。

 と、オレたちの存在に気付くと

「キャァァァァァァァァァァ! イヤァァァァァァァァァッ!」

 また叫び声を上げ、メルリの膝の上に頭を抱えて(うずくま)る。

「落ち着いて。大丈夫。この方たちは、メルリのご主人様とお友達。敵じゃないわ。あなたの味方よ」

「み…かた…?」

 恐怖の峠は超えたか、落ち着いてきたようだ。

「あなた、お名前は?」

「…フルル」

「そう。ステキな名前ね。メルリ、って言います。こちらの赤い騎士服の方は、メルリのご主人様のカナート=オヌマー様。隣の黒い服のウサギさんはユーリ様。そちらの…えっと、形容し難い服の方はミキミキさん様。今、メルリたちは一緒に旅をしているの」

 …なんか今、容赦ない描写が入った気がするが…でもそうとしか形容のしようが…

「ミキミキだよん」

「カナート=オヌマーだ。よろしく」

 つっ立ったままで見下ろすのはなんだし、ニンフってのもなんかよく分からんので、片膝を付いて礼をした。

「ユーリ=カモメです」

 ユーリも同じように膝を付き礼を。

「フルル…なのでして」

 立ち上がり、軽く膝を曲げ、エプロンドレスの端切れでできたスカートの裾をひょいっと持ち上げるような仕草で礼をした。

「何があったか、話せるか?」

 声を掛けた途端、顔を蒼ざめガタガタと震え出した。さぞかしの恐怖体験だったのだろう。

「いや、無理には聞かん。まずは落ち着いて体をいたわってくれ」

「大丈夫。メルリたちが一緒だから。大丈夫…」

 フルルはメルリに託し、オレたちは少し距離を置く。

「すごいですね」

「そうだろ? さすがメルリだ」

「そうですが…そうではなく、メルリさんの魔法ですよ」

「魔法?」

「あなたが登録した【笑顔の魔法】。傷付いてぐったりだったニンフが見るみる元気になったじゃないですか」

 そう言えばそうだな。さすがメルリ。うちのメイドは世界一。

「いや、魔法の話で…」



「あの、ご主人様」

「お、メルリ」

 メルリがフルルを手のひらに乗せてやって来た。

「フルルにお話しがあるそうです」

「分かった。だが辛いなら無理しなくてもいいんだぞ?」

「あの、ボクをたすけていただき、ありがとうございますなのでして」

 ボクっ()だ! あ、いや…娘…だよな? さっき全裸で悲鳴あげてたし。もっともニンフなら性別とか関係ないのか?

「あらためまして、ボクはフルルともうしまして。ニンフのもりにいちぞくとすんでいまして…オークが…トウゾクというオークがやってきて、ボクたちをつかまえはじめまして…そしてボクたちのもりを、すみかをやきはらったのでして…」

 これ…は…

「ボクの…ははもあねもボクをにがしたあと、つかまって…ボクはにげるとちゅうではねをつかまれ…ランボウにひっぱられたときにちぎれて…じめんにおちて…」

「ちょ、ちょっと待て」

 まるでエルフの森の件と同じじゃないか。

 フルルを制止し、メルリを見た。

 フルルを凝視していたメルリだが、オレの視線に気付いて顔を上げた時、目が合った。

 そして、ふっと

「ご主人様。メルリなら、大丈夫です」

 と微笑んだ。事態が掴めずメルリを見上げるフルル。

 二人を見ているオレは、一体どんな顔をしているのだろう?

 そしてオレはメルリを誤解していた。彼女はオレの思っているより遥かに、強い。

 メルリはフルルに向き直り、続ける。

「それでさっきの場所に?」

「はい…でして」

「そう。大変だったわね。でももう大丈夫。あなたは、メルリたちが護るから…って、すみませんっ! ご主人様! メルリ、勝手に…」

「え? ああ、勝手も何も、当然そうするに決まってるだろ」

「それに、その、衣服を…勝手に…その…破いて…しまって」

 それは咄嗟の判断だったのだろう。メルリが「ご主人様」と呼ぶオレよりも、目の前の困っている人(?)を優先したのだ。そしてそれのどこが悪いというのだ?

「っていうか、オレたちにはそんな気の利いたことはできなかっただろうな。いい判断だった。ありがとう」

 にっこりとメルリにそういうと、彼女はかーっと顔を真っ赤にし

「そんな! お礼なんか! その! あの! もったいないです! あ、ありがとうございます!」

 ぺこぺこと頭を下げる…がフルルを落とすなよ?

「あ、はい!」

「さて、話はひと段落ということで…フルルちゃんは、悪いけどもう少しその格好でいてもらうようかなー。何せそのサイズの服って、ちょっと持ち合わせがないからねぇ」

「いえ、ありがとうございますでして…」

 人相手は話し慣れていないのかぎこちないが、まぁいい。

「まぁとりま、探そっか」

「え?」

「フルルちゃんのか・ぞ・く。アタシたちの旅のついでになっちゃうけど。一緒に探そうと思うんだ。どうだい? 一緒に来るかい?」

「よろしいので?」

「モチのロンよ!」

 パイセンがドンっと胸を叩く。

「あ、ありがとうございますなのです!」

「フルルちゃん!」

「うわーい!」

 大喜びのフルル。バンザイと両手を挙げたその時、ふわっと浮き上がった。

「え? 飛べるの?」

 メルリが目を丸くする。見れば羽が生えてきた様子は無いのだが…

「ちゅうにうくことはできますのでして。ハネはほうこうをかえるときにつかうものなので、いまはうくだけしかできないのでして」

 そういうもんなのか。

「羽ってまた生えてくるものなのー?」

「わからないのでして。すこしきずついたくらいならしばらくすればもどるのですが、ねもとまでだと…」

「そうですか…失礼ですが、【設定】を見させてもらっても?」

「かまわないのでして」

「分かりました。では失礼して…」

 しばしユーリがフルルを凝視する。

「何か分かったか?」

「…いえ。種族が違えば分からないことも多いかと」

「そうか、残念だ。何か推進機でも付けられればな…」

「フルルさんを音速で飛ばす気ですか?」

「え? そういうことになっちゃうの?」

 オレたちのやり取りを見て、メルリがクスクスと笑う。

「ねぇ、フルルちゃん。メルリ、って呼んで? メ ル リ」

「メ…メルリ?」

「はい」

「メルリ!」

「はい!」

「ねぇ、メルリたち、お友達になりましょ?」

 パァッとフルルの表情が明るくなる。

「メルリがともだち!」

「そう、お友達」

 種族や大きさが違えども、メルリに同性の友達ができるのはいいことだ。

オレに付き従うだけでは息が詰まっちまうだろうしな。

「そんなことはないですよ? あ、ご主人様たちのことは何とお呼びすれば…」

「カナートで構わないよ」

「僕もユーリで」

「アタシはミキミキ!」

「カナート! ユーリ! ミキミキ!」

「そんな、呼び捨てでは…」

「構わないさ」

 こうして、旅の一行に仲間が加わった。


ED「しょー⭐︎みー⭐︎せってー」


https://youtube.com/shorts/-xdiB2mkXBU

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