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第六章 なりたい自分になればいい

ツイッター(現X)にて音声動画上げてます


OP「なりたい自分になればいい」


https://x.com/HanashioKikei/status/2015005325829754896?s=20


お手数ですがブラウザでコピペしてお聴きください

「さーて、おへそを曲げちゃったお姫様のご機嫌をとりに行くぞ。せっかく貰ったカードだ、これから先、必要になるものの買い出しにでも行こうや」

「そうですね。分かりました」


「バァさんは…戻ったのかな? メルリ。フルルはどうだ? 起きてるか?」

「はい、先ほど」

「ボクはなんだかねてばっかりでして…?」

「いいじゃねぇか。メルリも言ってたろ、寝る子は育つって。さて、それじゃちょっと買い物しに街へ出てみるか!」

「ええ? ホントですか?」

「わぁ!」

 ご機嫌ナナメに見えたがそうでもないようだ。よかった。


 エレベーターで降りてロビーへ。出掛ける旨、フロントに伝える。

「ここ、オヌマー様御一行って書いてありますっ!」

 おお、ホントだ。一般客と同様の扱いだが、むしろこの方が落ち着くか。変に持て囃されても嫌だしな。

「オヌマー様…かぁ…l

 メルリがため息混じりにつぶやく。これは…来たぞ、メルリクイズ。従者が何を欲しているか(以下略)

 …分かんねぇ。

「そういえばメルリは苗字が無いんだな。オヌマーとか名乗っとくか?」

「…よろしいのですか?」

「よろしいも何も、メルリが付けた名前だぜ? 好きにして良いだろう。同じの名乗ったらもう家族の一員みたいなモンだな。ははは」

 まぁ軽い気持ちで言ったんだがな? ところが

「あれ?」

 隣にいると思ったメルリがいない。振り返れば立ち尽くし泣いてるんですが⁈

「どうした、メルリ! オレ、なんか悪いこと言っちゃった? ごめん、ごめんて」

「違う…違うんです…ご主人様と同じ名前名乗れるって、家族の一員って、聞いて、あの、どうしたんでしょう、メルリ、涙が止まらなくて、その、嬉しくて嬉しくて…どうしちゃったんでしょう…どうしていいか分からない…」

 ここはホテルのエントランス。行き交う人々の視線が痛い。オレは悪くない。かと言ってメルリが悪いわけじゃないんだが…どうすりゃいいんだい?



 姫のお望みは家族の一員だったとは、お釈迦様でも分かるめぇ。その姫君はオレの腕に掴まって泣きしゃっくりを鎮静中だ。

「うくっ…メルリ=オヌマー…」

「そうだ。オヌマー家のメルリ様だ」

「メルリ=オヌマー…」

 何度も何度も繰り返す。噛み締めるように何度も。何度も。

「ボクはどうしたらいいのでして?」

 メルリが大変なことになっていたのでフルルは現在オレの頭の上に避難中。スマンな、居心地の良いふわふわベッドじゃなくて。

「フルルは一族の名前とか無いのか?」

「そういうのはないのでして。なんかナカマハズレみたいでさみしいのでして」

「仲間はずれなんかにゃするつもりはないけど…フルルさんもオヌマー、おひとつどうです?」

「よろしいので?」

「フルルが良ければ、っていうか名付け親が良ければ、ってことかな? どうなんだ、メルリ」

「もちろんっ! フルル=オヌマー!」

「メルリ=オヌマー!」

 ふわっとオレの頭から飛び降りるとメルリの胸へ着地。やっぱりそこがいいよねぇ…2人は両手を繋ぎぐるぐるぐるぐる。そんなに嬉しいもんか。

「で、ユーリさんはいかがです?」

「遠慮させていただきます」

 まぁそうだよね。

「おや? カナっちたちはお出掛けかい?」

 エレベーターから出てきたパイセンとヒミコに遭遇。

「ああ。ちと買い物にでも行こうかと思ってな。パイセンたちも行くかい?」

「行く行くぅー!」



「そうそう。ホテルにはプールがありますよね?」

 メルリがオレの顔を覗き込むように見上げる。メルリクイズもこれは簡単だ。

「それじゃぁ…水着も買う…か?」

 …どうだ?

「よろしいんですかっ?」

 よっしゃ正解。心の中でガッツポーズ。

 なんとこの街にはニンフ専門の洋服店まであるのだそうだ。街中のあちこちに同じレリーフや透かし彫りの看板があるのだが、よくよく観察してみればそれらは羽を広げたニンフの姿。ニンフで成り立つ街だというのはウソではないようだ。そういえば着いた時と違い、道行く人々の目が優しい。司祭が手回しでもしたか?


 さて、フルルの水着はその専門店で揃えたのだが…

「水着、ご主人様が選んで下さい!」

 難問が、来た。古来よりアニメやマンガ、ゲームで散々見たヤツだ。そしてそれらに模範解答は無かった。しかも…街の規模に比べて、この種類の豊富さってどうなのっ? 色とりどりの女性用水着が陳列されている様はまさに花園。本来男子禁制の場ではないかと思うのだが、アニメやマンガ、ゲームのどの主人公もこの花園へ引き込まれ、命を落とすのだ。選べと言われても…

「すまん、多すぎてオレにはどうしたらいいか分からん。せめていくつか見繕って、その中から選ばせてくれないか…」

 せめてもの妥協案を提示。

「分かりました! 皆さん、一緒に行きましょう!」

「わ、わたしもー、ビ、ビキニとか買っちゃおっかなー」

「おー、いいんじゃない? 女体ライフを満喫したまえー。 よーし、パパ頑張ってヒィちゃんとメルリちゃんの水着選んじゃうぞー」

「ミキミキさん、いつからパパに?」

「ああん、フルルも選んであげるのでしてー」

 楽しげな声が遠ざかる。 

「ふぅぅぅぅ…」

 売り場近くのベンチに座り一息つく。

「ご苦労さまです」

「まぁメルリが楽しそうだからいいさ。ん?」

 水着売り場の隣は雑貨屋だ。ファッション雑貨。その中に、ふと目に留まるモノがあった。それはいわゆる髪留め。ヘアピンだ。メルリがカワイイのは自明の真理として、ヘアピンの一つでもつけて彩りを加えるのも悪くない。というか昨今はヒロインのマストアイテムになってると思うし。

 というわけで、買ってみた。

 メルリの薄桃色の髪に合うであろう、深い青。

 …で、いつ渡すかな、これ。

「ご主人様!」

 厳選に厳選を重ねたか、2着まで絞られている。試着室ファッションショーは回避できた模様。

「どっちがいいでしょうか…?」

「こっちで」

 その間、わずか0.05秒。即答だ。

「わぁ…メルリもこっちがいいなって」

 それは胸元とウェストにヒラヒラとした白いフリルのついた淡いブルーのビキニ。多分メルリのあの胸のボリュームではワンピースだと太く見えてしまうだろう。

 よし。この選択肢はイタダキだ。



「さーて、そろそろホテルに戻ってごはんにしよっかー。なんか色々選べるらしいよー?」

「ホントでして? ボクにも食べられるものがあるのでして?」

「そいつはシェフとやらにお願いすれば良いだろう」

 何せこの街の信仰対象で在らせられるニンフだもの、イヤとは言わんだろう。

「どうした?」

 メルリが急に立ち止まって不安げな表情を浮かべている。

「気配…この気配、身に覚えが…ああっ! 盗賊のっ!」

 メルリの叫ぶ声の向こうから複数の排気音が聞こえてきた。やがてそれらはすぐ目の前の、街の目抜通りを我が物顔に通過していく。

「ヤツら、何しに来たんだ?」

「盗賊ですからそれ相応の、ということでしょうが、ミキ先輩、どうします?」

「白騎士団にお任せだねー」

「まぁ進行方向同じだし、ちと見物して行くか」

「こ…コワい…」

「フルルちゃんは、ここに入ってて?」

「ハイでして…」

 フルルが潜り込んだそこは、エプロンドレスとブラウスの間。つまり特等席、だ。



 陽は落ちたもののまだ明るい駅前の広場中央にその輩たちは陣取っていた。総勢…11人。こないだより多い。ってことはあれは別行動する遊撃隊みたいなものだったのか。すでに周りは黒山の人だかりができている。

 その輩の一人がアジり始めた。

「オレたちゃ【真祖の魔王】に仕えるシラヒゲ団だ! 今日、今この瞬間からこのサージエンスは【魔王】オラシオン=ハウウェル様の支配下に入る! 文句があるなら相手になってやるゼ!」

 なんだってー⁈ オレの名前をブン取った挙句、使ってやがる⁈ それにしても【真祖の魔王】とか言ってんだが、マジか?


ジャキィ


 腰の剣を抜いた。

 威力誇示(デモンストレーション)ってとこか。

 グルッとバイクが囲む真ん中に、ジープ系のクルマ。その後席から立ち上がったのは歯ブラシみたいなモヒカン頭の…

 ブタぁっ⁈ ってかあれオークか! オムルアの宿にあった貼り紙ってコイツなのか!?

 デケェ。タテにもヨコにもデケェ。山のようなって形容が過言じゃない。

「俺たちゃ何も暴力振るいに来たんじゃねェぜ? 大人しく従ってくれりゃァ悪いようにはしないゼェ? ブヒヒヒ!」

「待てッ!」

 白騎士団登場。全員白銀の鎧を纏い武装している。街の人々も全幅の信頼を置いてるんだろう、場に安堵の空気が流れる。

「ワタシは白騎士団サージエンス支部団長のオスカレッテ=グランディール! このサージエンスでの勝手な振る舞い、許すわけにはいかないッ!」

「ほほう。俺様も団長だぜェ? シラヒゲ団のなァ! ブッヒッヒッヒッ! おう、そうだ。最近手に入れた俺様のペットを紹介してやるぜェ!」

 人だかりがざわめく。嘆きの声さえ聞こえてくる。

 金属製の籠、というよりは檻。

 その中から出てきたのは…

 ニンフだ。

 首輪に鎖を掛けられ、ふわふわと宙に浮くその姿はトンボに糸を結びつけてオモチャにしているかのごとく。そしてそのニンフ、銀髪ポニーテールにビクトリアン調ロングスカートのメイド服。それは以前のメルリの【設定】そのもの。【設定】があればサイズとかはどうでもいいのか。

 だがそれらはつまり…

「カナート!」

「分かってるよ!」

 オレから強奪された【設定】そのもの、ってことだ。名前といい【設定】といい…ンなろぉ…

「なんと破廉恥な…【魔王】ともあれば尚のこと! 全員拘束する! やれッ!」

 始まった。

 11人の盗賊相手に白騎士団は…30は超えた人数を揃えて一気に攻めかかった。

 しかし。

 盗賊の方が戦い慣れている。素人のオレの目からしても。クルマの上の歯ブラシオークは上から見てるだけ。一名戦力欠いて、なおこの結果、か。結局団長のグランディール他、数名残して白騎士団は惨敗。

「さて、よいしょっとォ」

 歯ブラシオークがクルマを降り、グランディールたちの前に出た。

「白騎士団の団長サンともあろう者が子分相手に負けるってわけにもいかんだろう。せめてもの情けだ、俺様が引導を渡してやる。どっからでもかかって来なァ!」


ギャキィィィ


 腰の大剣を抜いた。デカい。あのサイズを片手で…相当な腕力ってこった。

「んなっ…舐められて引き下がるわけにはいかぬ。尋常に勝負ッ!」

 グランディールが突きに出る。それはオレが受けたのと同じ鋭いものなのだが、歯ブラシオークのヤロウ、見た目以上に機敏に避けやがる。

「クッ…なぜ…」

「おうどうした、もう終わりかァ? じゃぁこっちから行くぜェッ!」


ブンッ


ドゴォッ


 大剣を一振り。横薙ぎに走ったその刃は、鎧の上から叩きつけられ、それを変形あるいは破壊しながら進み、グランディールを吹き飛ばした。

「グアァァァァ…ッ!」

 腕も身体もタダでは済まない、だろう。

「グゥッ…ウウッ」

 うめき声を上げてのたうち回るしか、ない。

「白騎士団てェのも大したことねぇもんだ。コイツ、声が女だったなァ? ツラァ拝ませてもらおうかァ」

 乱暴に剥ぎ取られた兜からグランディールの、金色の長い癖毛が溢れ落ちる。その髪を鷲掴みにグランディールを持ち上げる。ブチブチッと髪の毛が切れる音さえした。

「ほほう、なかなかいいツラしてんじゃねぇェか、ブッヒッヒッヒッ」

 ブタ野郎は舌なめずり。

「クッ…ひと思いに殺せ…」

「グワッハッハッハッ! おもしれェ。この女は貰っておいてやろう。肉便器にして可愛がってやるぜェ!」


「…ミキミキ先輩…わたし…がまんできませんッ!」


シャキィ


 ここまでずっとだんまりだったヒミコが

「ウオォォォォォォォッ!」

 刀を抜き叫び声を上げて歯ブラシオークに突進する。

「そう来なくっちゃねっ! ミッキミキにしてやんよーッ!」


ジャキ

パタタ パタタ パタタ


 リュックからM16を取り出したパイセンも3点バーストでヒミコを援護しつつ突進。

 だが。

「ゥオォリャァァァァァァッ!」

 ヒミコが大上段からブタ野郎に切り掛かったが


ドス


「ギャァァァ!」

 切先がブタ野郎に届く前に手下の振るった剣で吹き飛ばされた。

「ヒィちゃんッ!? グワァ」

 パイセンもまた同じ。背後から迫ったヤツに叩きのめされた。

「お頭ァ! コイツら、どうしますかい?」

「好きにしろォ。くれてやる」

「よっしゃぁ!」

 …誰も動かない。

 アイツが、パイセミが、ヒミコが…あんな目に遭ってるってのに。

 …あぁそうか…アレは…オレだ。



「クソが! 持ってきてねぇのかよ!」

「当たり前だろ…金なんか持ってねえょ…」

「母ちゃんの財布からパクってくりゃいいんだよ!」

「できるワケねぇだろ…」

「ザコのクセして何ナマイキな口聞いてんだよ!」

 教室の隅で…廊下で…理不尽な目に遭わされて…

 周りに人はいたんだ。

 でもみんな…見ているだけだった。

 …そうか…そうだよな、みんな怖かったんだ。

 巻き込まれれば同じ目に遭わされるかもしれない。

 逆の立場だったら…オレはどうしていただろうか?

 助けに入って…勝てるのか?

 理不尽な暴力を振るう、複数人を相手に…



 そっか。

 分かっちゃった。

 なりたい自分になれる世界で、オレが何になりたいもの。

 正義の味方なんてカッコいいモンじゃなくていい。

 それでも、理不尽に立ち向かい、何かを誰かを守れるオレ。

 …どっかの誰かが言ってたな。

 負けちまったら護れない、だとさ。

 その通りだ。

 それでも…



「待てよ」

「ん? なんだぁテメェは」

 一歩。二歩。ゆっくりとヤツに近づいて行く。

「そいつを放せ」

「お頭! コイツですぜ、俺たちに歯向かったヘナチョコ野郎は!」

「ほう。で、そのヘナチョコが俺様に何の用だ。あァんッ?」

 やっぱデケェ。近くで見ればますますデケェ。

「その女たちは渡さねぇ」

「ああ? テメェのモンだってぇのか?」

「オレのものじゃねぇ。誰のものでもねぇ。それに何より『物』じゃねぇッ!」

 それでも戦わなきゃならん時が、あるってこった!

「なんだとぉ? ザコの分際で!」

「何が肉便器だ、テメェの(ピー)なんかフル勃起してもブヨブヨの脂肪から先っちょすらコンニチワしねぇクセに! おっと、皮も被ってりゃそもそもコンニチワしねぇがなぁ!」

「なんだこんガキャァッ!」

「足の小指ほどもねぇ(ピー)なんざ、(ピー)に入れようったって、『あらヤダ、股間にモンシロチョウの幼虫が』って言われるのが関の山ってこった!」

「おもしれぇ、俺様に啖呵切ろうってのか。相手になってやるゼェっ!」

 歯ブラシオークはグランディールを振り投げ棄てた。


ドサァ


「グアァッ」

 微かにグランディールの呻き声。

 ブタ野郎は金色の髪の毛が絡む左手を大剣に添え、両手持ちで振り上げ、振り下ろす。


ズドゴォォォッ


 大剣は大音響と共に地面を引き裂いた。

「コイツを喰らわしてやんよ、小僧ォ」

 喰らえば…ひとたまりもない。

 オレはエックスカリなーに手を掛ける。

 相手は思いの外すばやいのだ。

 あの大剣が振り落とされる一瞬、懐に入れば…

「お頭っ! 人質を捕まえやしたぜっ!」

「ご主人様ァッ!」

 メルリの声。

「何ッ?」

 チッ。メルリの鈍臭さがここでアダになったか!

 そして…不覚にも、一瞬敵から目を逸らしてしまった。

「どこを見ているッ!」


ヴォン


ザグゥゥゥッ


 ブタ野郎の大剣はオレの肩口から、文字通り袈裟斬りに入った。

 冷たい何かが身体を割って入っていく、イヤな感触。

「ご主人様ァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 …遠くに…メルリの絶叫が… …聞こ え た…



サク…


「グォ…」

「おおっと、お静かに。動かないで下さい」

「ウ…グ…」

「今刺さっているの、何だと思います? アサシンナイフ、っていうんです。とってもよく切れるんですよ? ですからね、下手に動くと【人格設定(コア)】に刃が届いてしまいます。この場で消えちゃいますよ?」

「グ…ア…」

「ご理解いただけて何よりです。それではそーっとその方を放して下さい。そーっと、ね?」

 メルリを拘束していた手下の手が弛む。


(メルリ! ボクが【彼女】にお願いしてくるのでして!)


(え…?)


 エプロンドレスの胸元に隠れていたフルルの姿がメルリへと吸い込まれるように消えた。


(【メルリ】! ボクたちをたすけてほしいのでして!)


《わかった》


「ではこのままもう少しじっとしていていただきましょう。え?」

 拘束から逃れたメルリ。

 その彼女は逃げ去るでなく、手下と対面すると


パンッ


(けが)らわしいっ!》


 顔を叩き、一言吐き捨てる。

 そしてその姿…


 全身が金色に輝き、微かに宙に浮いている。

 それだけではない。

 薄桃色のミディアムボブだった髪は、氷のように透き通り腰まで届く長い銀髪となって風に靡く。

 透き通るような白い肌は褐色に、そして濃紺のビクトリアン調ロングスカートのメイド服。

 赤い瞳がキッと睨みつける。


《ヤるからにはヤられる覚悟はあるんでしょうねぇッ!》


挿絵(By みてみん)


 身を翻しそう叫ぶと、天を仰ぎ見、右手を翳す。


《不浄なるこの者たちへ裁きの(いかずち)を! (とどろ)け雷鳴ッ! 【近所の落雷(ネイバーサンダー)】ッ!》


カッ


 振り下ろした手と共に、雲ひとつ無き空から無数の雷光が降り注ぎ、手下一味を狙い澄まして次々と貫き、一人残らず地に伏せ倒れる。


《次はアナタの番だ。まだ終わってはいないのでしょう? カナート=オヌマーッ!》


「ああ…」

 誰かが、オレの名を呼んだ。

「始まったばかりだが、間も無く終わる」

 声が魂に直接響いた。

(いて)ぇ、なぁ…」

「グヌゥ! 【人格設定(コア)】ごと抜き出してやるッ!」

「だがもっと痛い、心の痛みを感じた人たちが、いるんだ」

「グ…剣が…抜けねぇッ⁈」

「オレの【人格設定(コア)】は強いらしいぜェッ?」

「ク、クソッ!」

「そのまま手を放すんじゃねぇぞォッ! オラシオン=ハウウェルゥゥゥッ!」

「手が! 手がぁ!」

「根こそぎブン抜いてやるッ! やるぞッ! エックスカリなーッ!」

「グヌッ、キサマぁ!」

「【設定強盗(イーゴテイカー)】ァァァァァァァッ!」

「グァッ!」

「もういっちょ!」

「ゴァッ!」

「トドメだァッ!」

「グァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ…」


ドオォッ


《上出来だ》


フ……


ドサ…


 一度は地に落ち、身体を横たえたメルリ。

「メルリさんッ⁈」

 ユーリによって抱え起こされる。

「う…ん…ハッ⁈ ご主人様はッ⁈」

「大丈夫。勝ちましたよ。あなたのおかウワッ」

 しかし気がつくや否や

「ご主人様ァァァァァァァッ!」

 カナートの元へ走った。


 …遠くから…

 …この声…

 …メルリの声だ…

 近づいてくる…

 もう少し…

 もうすぐ…


どぉっ


 ああ…この感じ…

 柔らかくて暖かくて…

 メルリが…抱きついているのか…

 オレは…泣かせたりしてないだろうか?

 目を開けるのが…ちょっと怖い、な…

「ご主人様!」

 恐る恐る…目を開ける。

「メルリ…!」

 そこには…涙と満面の笑みを湛えたメルリの笑顔があった。その笑顔を抱きしめたいが、あいにく肩からバッサリ斬られている。

「お疲れ様でした!」

「ああ…ありがとう…」

 不思議だ。痛みがスーッと消えて行く。

「おお、見る見る傷がっ! 奇跡だ! 奇跡が起こりましたぞ! お集まりの皆様! 神に! 彼に! 感謝の祈りをっ!」

 その場にいた全員が、皆跪き祈りを捧げた。

 奇跡なんかじゃない。

 そうだ、これが…

「【笑顔の魔法】、だな」

「はいっ!」

 今度こそ、その笑顔をしっかり抱きしめた。



「ありがとう、メルリ。オレはもう大丈夫だ。まずグランディールを。パイセンとヒミコも頼む」

「はい、分かりました。オスカレッテさん!」

「カナート様。ありがとうございます。我らサージエンスの民、皆あなた様に救われました」

「司祭か。ああ、一つ、頼まれてくれるか?」

「何なりと」

「このブタ野郎からは【設定】を全部抜き出した。もう悪さはできないだろう。子分たちも。それで、コイツらを教会で引き取って、ゼロからやり直しさせてやってくれないだろうか? 抜き取った【設定】も、全部預かって欲しい」

「更生させよ、ということですね。心得ました。白騎士団の監視の元、必ずや。それにしても、【設定】も…よろしいので?」

「構わんよ。オレは他人の【設定】にゃ興味ないからな」

ED「しょー⭐︎みー⭐︎せってー」


https://x.com/HanashioKikei/status/2015698683749372310?s=20

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