第五章② やっぱりオレたち悪くなかったろうが!
YouTubeにて音声動画上げてます
OP「なりたい自分になればいい」
https://youtube.com/shorts/dFH4la04NC4
お手数ですがブラウザでコピペしてお聴きください
さて、誤解が解けて一件落着。
なんでもニンフのバb神様が口添えしてくれたとかで犯罪者から一転、VIP待遇とあいなった。
駅ビルと一体化した、街で一番格式の高いホテルの最上階スイートが人数分あてがわれた。人数分といってもフルルはメルリと一緒の部屋だがな。
現在、オレの部屋に集合している。
それにしても…駅ビル。ホテル。
異世界って何だっけ?ってくらい現代的な風景なんだが
「素敵なお部屋ですねぇ…」
メルリはその豪華な内装にウットリ。
「みるのでしてみるのでして! プールがあるのでしてっ!」
フルルはプールに大はしゃぎだ。森の泉じゃ不満なのか?
「そんなことないのでして。でもプールはべつものなのでして」
そうか、そうなのか。でもこんなもんで誤魔化そうったってそうはいかねぇ。オレの腹の虫はまだ収まってねェんだ。
「メルリは何かされたわけでもないことですし、もうお許しになられてはいかがでしょうか?」
うーん、メルリがそう言うなら、まぁ考えなくもないが…
…アレ?
…漏れてる?
「はい」
「ずっと?」
「地下牢でまたお会いできたあたりから」
むぐ…そ、そうか…あの女騎士の剣が刺さった時にバァさんの魔法が解けちまったか?
「メルリは、またご主人様の心の声が聞けて嬉しいのですけど」
そうかもしれんがそうもイカン時もあるのだよ。
「ただいま」
そうそう、ユーリはお姉さんの行方の手掛かりを探しに役場へと出掛けていたのだった。
「お帰りー。どうだったー?」
「残念ながら空振りでした」
「まぁ…それは残念です…」
「仕方ないですね。それより、役場から何からみんな協力的になりまして。資料もすんなり見せて頂きましたよ。それもこれもカナートの大立回りのおかげで…どうしました?」
口を塞ぎ心を無にしているオレに話しかける。
今はダメだ、ほっといてくれ。
「ああ、漏れてる件ですね? また神様に直してもらえるといいですね。少しは態度改めたらいかがです?」
「…」
「ああ、心を閉ざしてしまった」
ピンポーン
「あ、はーい」
来客か? ぱたぱたと出迎えに出るメルリの後ろ姿がカワイイ…いやダメだ、煩悩退散!
「カナっちー。漏れてるよー」
◆
「ご主人様。司祭様と白騎士団のオスカレッテ=グランディール様がお見えになりました」
「ほう。入ってもらいなさい」
「はい。こちらへどうぞ」
メルリの案内で応接室へ二人を通す。スイートともなるとそんな部屋まであるんだよ。初めて知ったけどな。
少々待たせてから顔を出す。勝者の正義を誇示するためにな!
「先ほどは大変ご無礼並びに失礼をいたしました。白騎士団の統括責任者である私ドミナントと、団長を務めておりますこのグランディールが、代表として改めて謝罪に参りました」
二人揃って頭を下げる。メルリにも席に着くよう言ったのだが
『メルリには難しいお話のようなので』
と固辞された。今はある意味メイドらしく、オレたちの後ろに控えて立っている。辛い思いをしたのはメルリだろうに、と思うのだが。
「つきましては、こちら」
「なんだ、これは?」
黒いカードがテーブルに置かれた。
「ナハルル様からの御指南で、できる限りの償いをせよと。皆様方、旅をなさっているとのことで、こちら、使用上限額無しのカードでございます。お役立ていただければと」
「…金で解決しようってのか?」
ちょっとカチンと来た。
「無論、そのようなご意見あろうかと存じますが、言葉や態度で示せる誠意にも限りがございます。なれば金品で、というのも即物的ではありますが…これにはもう一つ、我らの思いもあるものとお考えください」
「お前たちの思い?」
「我らサージエンスの民はニンフの森の恵みを受けてその生活を成り立たせる者です。ニンフは崇拝こそすれど乱暴狼藉、ましてや愛玩動物として飼おうなど、言語道断。この街の法で厳しく罰せられます」
なるほど、そうか。サージエンスに入ってから何か目線を感じると思ったらフルルを見ていたってことか。
「皆様方がフルル様とご一緒な上、オラシオン=ハウウェルを名乗る盗賊が周囲で出ているとの情報もあり、よく調べもせずあのような醜態を。誠に申し訳ございませんでした」
「僕たちは誰もオラシオン=ハウウェルを名乗らなかったのに、なぜ?」
「オムルアから、ユーリ=カモメ様とご一緒なのがオラシオン=ハウウェルだとの情報が人相書き付きで参りまして、はい」
「なるほど、そっち経由か」
オムルアの宿帳にはオラシオン=ハウウェルで記載されているのは間違いない。むしろこっちが勝手に名前を変えたのだ、とも言える。
「ああ、話が逸れましたが、皆様がニンフの森を襲撃した犯人を追っていると、ナハルル様より伺いました。罪滅ぼしと言ってはなんですが、その活動、我らサージエンスも街をあげて支援させて頂こうかと思いまして、このように参じたわけでして、はい」
この世界、正直大金は要らない。スライムでも潰していれば最低限の生活費程度は稼げる。ただ…どこまで本気か分からないが、これは賠償金ではなく活動資金だと言う。それに、ニンフのバァさんも背後にいるとなれば…
「誰がバァさんじゃい!」
ボコッ
「イッてぇっ! って、バ、神様。また出てきたのかよ!」
「ナ、ナハルル様!」
司祭はひれ伏し、グランディールは膝を付き礼をする。
「バカもん。お主の思考がダダ漏れで、心配になったんじゃ!」
「あ、いけね…」
慌てて口を塞ぐが、塞いでも漏れるのがコレなのだ。
「まぁ、今直しておいてやったぞ」
「あ? あぁ、そう言うことか。サンキュー神様!」
「やれやれ。で、どうなんじゃ? これを受け取るんか、受け取らんか」
「神様直々に言われちゃ、もはや脅迫じゃねぇか?」
「まぁ…そのつもりがないわけでもないが」
「おいっ!」
「じゃが、盗賊たちに攫われた者も、フルルの家族はもちろん、生きておれば一人でも多く森に帰ってきて欲しいのじゃ。ワシからもお願いする」
神様が頭を下げた。
「んぐぐぅ…分かった! 分かったよ、分かりました! これ、受け取ればいいんだろ? でもって、コレとは無関係に、オレたちはフルルの家族を探す。ニンフの仲間たちはそのついで、ってことでいいだろっ?」
「素直じゃないヤツじゃ。じゃが、請われてやる仕事ではない、己の意思でやるというのなら、なおのことお主らを支援したい。のう、司祭よ」
「全く仰せの通りでございます」
「あー! もー! 分かったから!」
「あの、もし…」
「なんでございましょう、ユーリ殿」
「地下牢で、そちらのグランディールさんがおっしゃっていたのですが、『魔王』であるとか『魔術』であるとか…これは、どういったことで?」
「それはワタシから説明させていただく」
「のう、オスカレッテ、話が長くなるのならイスに座れ。ずっとその体勢では辛かろう。司祭も」
「いえ。ワタシはこのままでも結構です」
「オスカレッテさん? ナハルル様もこうおっしゃってますし、お掛けになりましたら?」
「あ…う…そ、それでは失礼して…」
グランディールは席に着くとオレをキッと睨み付けた。
(あれ? …この女性…ご主人様を…見てる?)
「カナート。何かしたんですか?」
ユーリが小声で聞いてくる。
「後で種明かししてやる」
「やれやれ…」
さて、【魔王】の件はグランディールがひたすら喋ってただけなので要点だけ説明する。
で、まず今オレたちがいるこの世界は【フォビドゥン】という名で、これを造ったのが【真祖の魔王】なのだそうだ。【フォビドゥン】は文字通り何かを禁じた世界なのだが、何を禁じられているか分からないので住んでる住人も禁じられていることに気付かず暮らしている。
その【真祖の魔王】と周辺にいるヤツらが使うのが【魔術】で、【魔法】とは勝手が違う。なにしろこの世界のルールを無視して使えるんだと。確かに【物体転送】も物理法則やら無視して物の移動ができたからな。そしてオレたちがそれ、【魔術】の一つである【物体転送】を使ったので【真祖の魔王】の一味と勘違いしたんだそうだ。魔法結界が張られた牢屋なのに使えたからな。ついでに言えば【焼き鳥火炎】も魔力関係なく使えるせいで更に疑いが深まったそうな。
それにしても、いくら大事な話とはいえこれを冗談の一つも挟まないでずっと喋ってるんだもん、辛いって。小学校の朝礼だったら何人か貧血で倒れてるぞ?
「それで何で【真祖の魔王】ってヤツは憎まれてんだ?」
「ヤツは【設定】を奪い、集めていると言われている」
「集める? そりゃまたなぜ?」
「それは分からない」
「分かんないの⁈」
「ああ。【真祖の魔王】に直接遭遇した者は【人格設定】も抜かれいることが多いのでな。証言がなかなか集められないのだ」
「死んだ、ってことか…」
「アナタのような強力な【設定】の持ち主ほど狙われ易いことも付け加えよう」
「ふーん…」
「自信がおありのようだが注意されたい」
「まぁ、気を付けておくさ」
「では私どもはこの辺で。しばらくはこの部屋をお使いいただき、おくつろぎくだされ。サージエンスを発たれる際にはお声掛け下さい。では」
「ああ、すまぬ。最後に…アナタに一つ聞きたいことがある」
「ん? なんだ?」
「先ほどの地下牢で…アナタはワタシの剣を避けないばかりかむしろ自ら刺さりに行った。あれはナゼだ?」
「ん? ああ、避けらんねぇって思ったからさ」
「それだけ?」
「それだけだ。さすがに騎士団団長の剣技はスゲー。だから逃げるより受けて、オレの間合いにした。それだけさ」
「だが【人格設定】を貫かれれば消えたかもしれんのだぞ?」
「そうかもしれねぇが、アンタの目的はオレの捕獲だろう? 生きて捕まえたけりゃ急所は外す。そしてそれができる技術を持っている。オレに向かってくる刃を見て、なおのことそう確信した。だからオレは受けに行けた。アンタを信じて、な」
グランディールの表情が少し満足げに緩む。
「そうか…いや、長々と失礼した」
「何のお構いもしませんで。あの、オスカレッテさん?」
「は?」
「またいらして下さいね?」
「喜んで。ごしゅウグッ」
何か言い掛けたところで慌てて口を塞ぎ、オレを睨む。
(この女性、またご主人様を…)
「クッ…では、また。サージエンスの滞在、お楽しみください」
「はい」
最後、メルリがにっこり笑って送り出した。
「と、いうことなんだが、どうするパイセン?」
パイセンとヒミコはメルリとフルルの後、別室監視付きの順番待ちだったそうな。もっとも地下牢のゴタゴタですっかり忘れられていたんだが。
「なんなら財政破綻するレベルで使い込んじゃう?」
「この街で使えば商店街大儲けでウハウハ、税収アップで行政もニッコリ、じゃないかねー?」
「そ、そうか…うぬぅ…姑息な手をぉ…」
「まぁいいじゃん、好意は好意として受け取っておきましょ。ナハルル様のメンツもあるだろうし、アタシたちが試されてる、ってことでもあるしね」
「ニンフ探しが本気かどうか、ってこと?」
「そゆことー。じゃ、アタシらちっと館内観光に行ってきますわー」
と、パイセンとヒミコは陽気に部屋を出ていった。
「お土産よろしくー」
「ご主人様ァッ!」
「ん?」
あれ? 今メルリに結構な勢いで呼ばれたんだが…怒ってる?
「ごーしゅーじーんーさーまーっ!」
「は、はい、なんでしょう?」
「ちょっとここへ来て座ってください」
「え? なんで?」
「すーわーりーなーさーいーっ!」
「は、はい…」
「正座でッ!」
「はい…」
「さっき地下牢であの女性が下着姿でいましたが、あれはどういうことですかっ?」
「あ、あれはですね、メルリさん。エックスカリなーで【設定】を根こそぎブン取ったら剣から騎士服から全部ブン取ってしまいましてね、【設定】に記述がなかった下着だけが残った、とまぁそういうわけでして…」
「それなら… あ! …ま、全くもうっ。いいですか? どういう事情があっても女の子を辱めるようなことをしてはいけませんっ!」
女の…子?
「今ちょっと失礼なことを考えましたね?」
「あれ? 漏れてんの?」
「漏れてなくてもご主人様の考えてることくらい分かりますっ! いいですか? 女の子は年齢に関係なく女の子なんですっ。大切に扱わなくてはいけませんっ! ですから」
右手の人差し指を立て、左手は腰に当て、上からガミガミ。
ああ、なんだろう、この気持ち…メルリに叱られるって、なんか新しい扉が開きそう…
「…ということなんですよっ? 分かりましたかっ?」
「はい!」
背筋を伸ばして元気に答えた。途中、ちょっと意識が飛んでたかもしれない。
「全く。見ず知らずの女の人を裸にするなんて、何かあったらどうするんですか…」
ん? 何かってなんだ? それってどう…いや、ちょっと足が痺れてきた…ここで余計なことを言って話を長引かせてはマズい。メルリ様のお言葉をもうちょっと聞いていたくもあるんだが…あれ? オレにも【設定】掛かってる? …ふぅ、大丈夫。
「はい! お話はここまでですっ!」
お盆を胸に抱え、プイっと背を向け行ってしまった…
…隣ではユーリが呼吸困難を起こしている。
「ヒィィィ…ヒィィィ…ハァッ…ハァッ…とても楽しませていただきました」
「こういうのって見てる方はいいよな、よっこいしょ…ウギィィィ!」
正座を崩すが案の定痺れかけていた。
「で、何をしたんです?」
「ああ。【設定】を返す時にちょっと仕掛けをしてな。2つ潰して2つ追加。追加した一つが【メルリを主人として尊べ】とした」
「はぁ?」
「だからさっきアイツはうっかり『ご主人様』って言い掛けたんだ」
「…悪趣味な…でも、どうしてあなた自身でなくメルリさんを?」
「うーん、アイツさ、自分が【騎士】だってこと、やたらと主張してなかったか?」
「そういえばそうですね」
「それが気持ち悪くてな」
「気持ち悪い?」
「あれって、何なら騎士の誇りに賭けてー、とか言って死んじまうぜ? 死にたがりの高度な自己満足を見せられてるみたいで気持ち悪いなって思ったんだ」
「それとメルリさんがご主人様になるのとどういう関係が?」
「メルリ様の言うことなら友だちの進言って感じで聞いてくれるかな?って。そもそもオレたちがここを出たら関係なくなるけどな」
「あなたなりに気を使った、ってことなんですかね」
「まぁそんなところだ。多分」
「潰した【設定】というのは?」
「【主命に命を賭ける】【騎士の誇り】の2つ、だな」
「ああ、それで話が繋がるのか。で、もう一つ、仕掛けたんですよね?」
「まあな。だがそれは本人が己の身を以て味わえばいい。ふっふっふっ…」
◆
「今日は全く…酷い日だったな…」
勤務時間を終え、自分の部屋へ帰ってきたオスカレッテ。
「…そうだ…シャワーを浴びよう…少しは気が晴れるかもしれない…」
そのまま風呂場の脱衣場へ向かう。スカートを脱いだ時、違和感を覚える。
「あれ…? ワ、タシ、今日、下着こんなのだったか?」
見下ろす自分の姿にあるのは、黒いブラと黒いショーツ。
「いや…今日は…まさかっ?」
急いで部屋に戻り、クローゼットを開ける。下着専用に使っている引き出しから出てきたのは、黒。黒。黒。全て黒い下着だった。
「どういうことだ…あっ!」
精神を研ぎ澄まして己の【設定】を見る。その中に…見慣れぬ【設定】があった。
【下着は上下とも常に黒】
「あの…男…ォォォッ! 敗北を上回る屈辱とはこの事かぁーッ!」
◆
ED「しょー⭐︎みー⭐︎せってー」
https://youtube.com/shorts/-xdiB2mkXBU




