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プロローグ

世に「異世界モノ」なる小説ジャンルがあると聞いて書いてみました。

とりあえず「死んだら異世界に行っていた」というテンプレを踏んで、あとはろくにプロットも作らず思いつきのアドリブでひたすら書き殴り。

まぁ、あとで苦労するんですが…

文庫本で3冊程度、一応着地地点は用意してあるのですが、そこまでたどり着くかなぁ…応募に出してみたらけちょんけちょんだったので、萎えてます…理由はもっともなのですが。

ともかく、エタるところまでお付き合いください。よろしくお願いします。

あ、縦書き推奨です。

「ふーむ…難しいもんだなぁ。あ、…ん、ンーンッ!」


ギッ

ダンッ


「グガッ…」


 …不覚。

 死んでしまった。

 だが、正直自業自得だ。

 というのもイスの上で胡座をかいて、やれやれと伸びをしたところでバランスを崩し、ベッドのフレームに後頭部を強打したのだ。

 痛い、とは思った。しかしそれも一瞬だった。

 打ちどころがよほど悪かったのだろう、あっという間に呼吸が止まったのだ。


 …と、そこまでの記憶はある。

 だが…今は真っ暗闇だ。

 目を開けているのか閉じているのかも分からない。

 これがあの世というヤツなのか?


「もし」


 声が聞こえた。


「もし?」


 まただ。

 どこから?


「もしもし?」


 若い、女の子の声。年にして…12歳くらい?

 高域のホワイトノイズ成分が多い、耳に心地よく届くウィスパーボイス。

 このまま耳元で囁かれて永遠の眠りについてもいいくらいだ。

 …もう死んでるんだけど。


「起きてくださいまし」


 オレは眠っているのか?

 それなら起きよう。起きてその声の主の姿を拝もうじゃないか。

 オレは上体を起こし、目を見開いた。

 つもりだった。

「ようやく起きてくださった」




 誰だ?




 その姿、おぼろげなシルエットですら見えてこない。

 いや、違う。

 銀髪のポニーテール。

 身長142cmの小柄な身体は、上からB89W53H81。

 しかしそのダイナマイトボティは濃紺のビクトリアン調ロングスカートのメイド服に身を包むがゆえに、ゆったりとした衣服に微かに現れるラインから想像するよりほかない。

 その彼女の名は…

「メルリっ!」

「はいっ」

 その瞬間。

 彼女の名を叫んだ瞬間、目の前がパァっと明るく開けた。

 その視界の中に、心配そうにこちらの顔をのぞき込む、銀髪の少女が入った。

 彼女の名はメルリ。

 種族はエルフ。

 住んでいた森を焼かれ、命からがら逃げてきたところを助け、今はその森を焼いた犯人を探して共に旅をしている。エルフと言っても耳は尖っていない。今時こんなことを言えばルッキズムだ何だと叩かれるのだろうが、どうも人外的容姿は好みではないのだ。


 …なんだって?


 何だその話は?

 いつ一体どこでどうやって…?

 いや、心当たりがある。

 死ぬ直前に開いたスマホのメモ帳のファイル。

 オレは小説を書こうとしていたのだ。小説、と言ってもラノベだ。出版社で募集している新人賞、そいつに応募して一攫千金、そしてラノベ作者の大先生として君臨し、親も、教師も、クラスの奴らにも、一泡吹かせてやろうと思ったのだ。だが創作は思うにままならぬもの。ストーリー以前に設定を考えていたところで頓挫、難しいもんだと伸びをしたところでお亡くなり、だったのだ。

 しかしどういうことだ? オレはそれほどまでに自分の創作物に対して未練があったのだろうか? あの世の果てまで持ち込むようなものでもあるまいに。何より話自体、まだ何も決まっていないのだ。それに愛着とは…考えにくい。

 ともかく自分に害なすものでないと分かればまずは安心だ。

 安心したと同時に周りの景色が視界の中で色づきはじめる。

 これは…森だ。森…しかもおそらく北欧の。針葉樹の多さからそんなところだろうとは思うのだが…

 自分のラノベではまだ舞台の設定をしていなかったはずだ。にも関わらず直感的に中世欧州風の世界が舞台と分かってしまった。キャラ設定とは別の記憶がある…?

 ははぁーん、分かったぞ。

 これは、異世界だ。

 これこそがウワサに聞きし異世界というやつだ。死んだ後に飛ばされたんだ、きっとそうに違いない。

 だとしたら…今までに読んだあの作品やこの作品のキャラと会えるんだろうか?

 それはそれでなかなかにエキサイティングな話だ。しかしその望みは薄いな。だって、それらの作品もお互いのキャラが出てくるわけじゃなし。この世界だけが都合よくつながっているとは思いにくいものな。そもそもオレのものは作品として出版されたわけでもないんだ、そんな異世界業界の大スターとお会いできるはずがない。


 …いや、もっと根本的な疑問が湧き起こった。

「メルリ、オレは誰だ?」

「何をおかしなことをおっしゃるのですか?




 まただ。

 また景色が、視界が、消えた。

 真っ暗になったというのとは違う。何というか…パソコンのモニターケーブルを引っこ抜いて突然何も映らなくなったような…そんな感じ、とでも言えばいいのだろうか?

 オレの名は…


【オラシオン=ハウウェル】


 オラシオン=ハウウェル様でらっしゃいますわ」

 名が脳裏をよぎると同時にメルリがその名を告げ、そして視界が開けた。

 そうか。オレはオラシオン=ハウウェル…なの…か?

 いやいやいや。オレってば完全無欠の純粋な日本人なはずだぞ? 何でそんなカッコよさげなカタカナの名前なんだ?

 …心当たりが。言うまでもなく、これも書き始めたラノベの主人公の名だ。名は決めたのだ。あとせいぜい決めたことといえば騎士というジョブ持ちだというくらいで。

 騎士?

 はたと自分の手を胴を脚を見る。

 鎧のような甲冑のような…それっぽいがなんか違う気がするものを身に付けている。

 まぁ自分の想像力を考えればやむなし、か。

 考えてどうにかなることならそうするが、いかんせん情報が少ない。

 ともかく分かっているのは、オレはこのエルフの少女と旅に出るのだ。

 ストーリーなきラノベの世界を…


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