何度ループしても国家滅亡する王様。後宮の妃達は思った。こいつ(王様)のせいじゃね?
国王エドアルフは、最後の力を振り絞って、足を引きずるように塔の階段を上った。
背に刺さった矢は深く、止めどなく血が溢れていた。今や、エドアルフの輝くばかりに白い肌は夥しい血で赤く染まっている。
階段にはエドアルフから流れた血が、その行方を教えるよう残っていた。
塔の上から王都を見下ろすと、炎に包まれている。
エドアルフは、絶望に呻いた。
ああ……また滅んだ。
口からコプリと血を吐き、絶命した。
エドアルフは、もうすでに十二回死んでいた――。
◆
エドアルフは、アバルーン国の若き王であった。
艶やかな長い黒髪にエメラルドのような瞳の、美しい王だった。
アバルーン国は十三の部族からなる国で、エドアルフ・アバルーンの一族は代々それらの部族を王として従えてきた一族だった。
それぞれの部族から一人ずつ年頃の娘を人質として後宮に出させ、その中から正妃を選び残りは側室とした。
そうして、何代も争うことなくアバルーンの一族を頂点に栄えてきたのだった。
一度目の生の時、エドアルフは成人の儀で王位を継承すると共に、第一部族の第一妃を正妃に選んだ。
一番大きな部族であったことを後から知り、エドアルフは自分の運の良さにほくそ笑んだ。よい正妃を選んだと褒められて、嬉しくなったのを覚えている。
しかし、その後は転がるように事態は悪くなっていった。
エドアルフと高慢で口煩い第一妃は、諍いが絶えなかった。そんな疲れ切ったエドアルフに、第二妃は夜優しく寄り添った。
エドアルフは、第二妃こそが真実の愛の相手だと確信した。
そして、とうとう愛の結晶を授かったのだった。
王と十三部族の間では、後継ぎが揉めないように必ず正妃に男児ができてから側室と子作りをという約束事があった。
しかし、真実の愛には逆らえなかったのだからしょうがない。
エドアルフは、第一部族に誠意をもって金を払っておさめた。
しかし、金にがめつい各部族が文句を言った。そのごたついた隙を狙うように、隣国ダイルが急に攻め込んで来たのだ。
頼りにならない部族達は早々に敗れ、王都には火が放たれた。
エドアルフの一度目の生は、塔から身を投げて終わった。
――そして気づいたら、時は巻き戻り、エドアルフは成人の儀の三日前に戻っていた。
エドアルフは訳がわからなかったが、早々に考えることを放棄した。元より、彼は考えることは苦手だった。
それよりも、妃選びが大事だと思った。
エドアルフは、第二妃を選んだ。これなら国が滅ぶこともないはずだ。
エドアルフにとって、二度目の人生だ。真実の愛の相手を間違えることはなかった。
エドアルフは、第二妃を誰に遠慮することなく愛することができた。
彼女が懐妊するのも早かった。
エドアルフがこれで安泰だと思った矢先に、またダイル国に攻め滅ぼされた。一度目の生より、早かった。
エドアルフの二度目の生は、塔でダイルの騎士に刺されて終わった。
――そしてエドアルフは、また成人の儀の三日前に時が戻っていた。
エドアルフは、三度目の生では第三妃を選んだ。
第一妃、第二妃と続いたから、数を数えるように三を選んだだけだった。
しかし、剣を振り回すことが好きな野蛮な第三妃とエドアルフは、根本的に合わなかった。
優しい第二妃がまた寄り添ってくれたが、エドアルフは、今回はそれをきっぱり断った。
死にたくなかったので、一度目の生と同じことはしたくなかった。
エドアルフは三度目こそ死を回避するため、ダイル国と同盟を結ぶことにした。
残念ながら、ダイル国と同盟を結ぶことはできなかったが、そこでエドアルフは真実の愛の相手に出会った。
蠱惑的な瞳の美しい女性だった。
エドアルフは目があった瞬間、この女性こそが真実愛する相手だとわかった。短い日々であったが、いや、だからこそ貪るように愛を交わした。
無情にも訪れた帰国の日、エドアルフは必ず迎えに行くと約束して別れた。
その数日後、ダイル国がまた攻めて国が滅んだ。
エドアルフの三度目の生は、塔で首を切られて終えた。
――その後の生も、似たり寄ったりだった。
その生、その生で、エドアルフは真実の愛の相手に出会っては、ダイル国に攻められ死んでしまうのだ。
もう塔で死亡するのは、エドアルフのルーティンと言えよう。
そうして、とうとう残り最後の第十三妃の順番になってしまった。
彼女は、十三人の妃の中で一番地味で平凡で凡庸であった。
光が当たればまあ金色といえなくもない麦藁色の強くうねった髪に、よくいえば黒曜石、正直にいえばただの黒の瞳。鼻は高くもなく低くもなく普通で、十六歳にしては凹凸も少なくて魅力の欠片もない娘だった。
しかし、もう第十三妃しかいない。
今度こそ、死なないことをエドアルフは切に祈った。
◆
(あ、また戻った)
第十三妃である私は、エドアルフの成人の儀の三日前にまた戻っていた。
いつものように、私の前には十二人の妃達がにこやかな笑顔でお茶会の席に座っていた。
私が住むアバルーン国は、十三の部族からなる国だ。
穏やかな気候に肥沃な大地は、他国から狙われやすく、内部で争ってはいられないので統一されたあとは、それぞれの部族から娘を後宮に出して争うことなくまとまってきた。
エドアルフが王になるまでは……。
エドアルフは、トリートメントに毎日三時間かける艶々の長い黒髪に、ニキビができようものなら治るまで引きこもる新雪のような白い肌の、美の権化の傍迷惑な美貌の男だった。
剣なんかやってこのお肌に傷がついたらどうする!?と金切り声で叫んだのは六歳の時。未だ近隣諸国で笑われる逸話だ。
勉強も目が赤くなるのが嫌だとわけのわからない理由で拒否し、お馬鹿さん街道を真っ直ぐ駆け抜けている。
どうにか褒めるところを見つけろと言われたら、その傍迷惑な美貌くらいしかない王だった。
十三の部族と戦って統一した当時の王が見たら、間違いなく王座から蹴り出していたろう。
成人したらすぐに王位を継承して、先代の王は人質としてダイル国に行くのだが、先代夫妻は最後まで心配されていた。
そうして、その心配は現実となった。
◆
――一度目の生では、エドアルフは正妃に一番大きな部族である第一部族の第一妃を選んだ。
第一妃は公正で賢く、凛とした佇まいの美しい女性だった。
その後ろ盾となる部族も大きく、阿呆なエドアルフをしっかり支えて……というより、しっかり背負ってどうにかこの国を守ってくれるだろう。
みんなに喜ばれた正妃だった。
阿呆だとは思っていたが、意外にわかっているではないかと。
しかし、みんなに褒められるエドアルフは、なぜ褒められているのかわからないと、目をパチクリとさせていた。
その純真無垢なエメラルドの瞳を見て、みんなは悟った。
ああ、なんで褒められているかわかっていないお馬鹿さんだと。
第一妃は、エドアルフを根気強く窘め、フォローした。それは端て見ていて、頭が下がるほどだった。
しかし、奴はやらかした。
あろうことか、第二妃との間に子供を作ってしまったのだ。
揉めるから駄目だって言うのに、あの阿呆はわかっていない。
第二妃のアハンな肉体に溺れ、とうとう避妊まで怠ったのだ。
これにはみんな大激怒だった。
本人は第一部族に金だけ払って、あっけらかんとしているのがまた腹立たしい。
しかも、その金も後宮にいる娘のために各部族が納めている金だ。
この金を使うんじゃない!お前の物ではない!
それが原因で王家と十三の部族がごたついた隙をついて、ダイル国が攻めて来た。
私は後宮まで助けに来てくれた、幼馴染のオドアルと共に逃げた。
短く刈り上げた黒い髪に、綺麗な深緑の瞳の精悍な顔立ちの彼が、血濡れた剣を手に目の前に現れた時は、私の願望が見せた幻だと思った。
しかし、幻ではない証拠のように、彼は力強く私の手を引き、炎に包まれた王都から逃げ切った。
そして、私達は愛を告げ合ったのだ。
手と手を取り見つめ合い、ずっと好きだったと。
オドアルは私の部族の騎士だったし、私は部族長の娘だったから結ばれないはずだった。
それなのに、オドアルは私を助けにこんな所まで来てくれた。
それはもう、お互い気持ちが盛り上がった。
そして口づけまであと1センチ!……で、私はエドアルフの成人の儀の三日前に戻っていた。
地団駄を踏んだのは、無理もないだろう。
――しかし、その時はまだ時が戻ったなんて思いもしなかった。
随分リアルで生々しい幸せな白昼夢を見たもんだと思っただけだった。
その後、第二妃が正妃に選ばれた。
夢と違うなぁと思っていたら、またもや奴はやらかした。
第二妃と後宮にこもって出てこなくなってしまったのだ。
豊満な体をもつ第二妃にすっかり夢中だ。
仕事しろよと後宮の妃達みんなが思った。
元々低い彼の求心力は、とうとうマイナスに突入した。
第二妃は早々に懐妊した。それでも、だらだらと後宮に居座るエドアルフにみんなうんざりだった。
そうして、あっという間にダイル国に攻め込まれた。
今回でわかったことだが、第二部族はダイル国と繋がっていたようだ。
阿呆なエドアルフは、第二妃のアハンな肉体を前に隠し通路やら、軍のことやらペラペラと国の機密の全てをしゃべってしまっていたのだ。
こうして、あっさりこの国は滅された。
私は、助けに来てくれたオドアルと共に逃げる途中で、あれ?これ、デジャヴ?と思いながら、前回同様口づけまであと1センチでまた時が戻った。
もちろん、地団駄を踏んだ。
――間違いない。これ、時が巻き戻っている。
そして、多分エドアルフも時が戻っているようだ。
妃選びの時、「今度は、第三妃でいいかぁ」って聞こえた。
とはいえ、時を戻って来ていますと言って誰が信じてくれるだろうか。いや、頭がおかしいと思われておしまいだ。
エドアルフに言う?奴がいったい何の役に立つだろう。
私はとにかく、今度こそオドアルと口づけすることを目標に三度目の生を送ることにした。
悲しいことに、エドアルフは第二部族がダイル国と通じていると気づいてもいない。
あれだけあからさまに、第二妃に軍事機密やら秘密通路を聞かれていたでしょう!?と、奴に問いたい。
どうして端で見ていた私が気づくことを、当事者のお前は気づかない!?と、襟首つかんで揺さぶってやりたい気持ちでいっぱいだ。
そうして、三度目の生でもやらかした。
奴は、ダイル国のハニートラップに見事にかかった。というか、自らハニートラップにダイブしたようなものだった。
同盟を結びに行ったんじゃないのか!?
奴はダイル国のアハンなメイドさんにどはまりし、機密をしゃべりまくって帰って来た。
そうして、また国が滅んだ。
もちろん、私の口づけもまた寸止め1センチだ。
私はまた、地団駄を踏んだ。
――その後の巻き戻りも、奴は似たり寄ったりなハニトラにひっかかり、というか自らかかりにいき、ダイル国に攻め込まれる、私の口づけ寸止め1センチ、地団駄!を繰り返した。
◆
――もういい加減十三度目だ。
今度こそ口づけをと拳を握りしめた時、はたと気づいた。
しまった、私の番がきてしまった!?
やばいやばいとお茶会の席で目を彷徨わせ、私は思わず呟いてしまった。
「とうとう順番がきた……」
その瞬間、カッと第一妃が目を見開いた。
「十二回戻っている人!」
私は反射で手を挙げた。見ると全員が挙手していた。
そして、手を挙げたままハッとした顔をした第二妃は、慌てて立ち上がり逃げようとした。
「確保!」
武芸に秀でた第三妃が、速やかに第二妃を捕まえた。
なんてことだろう。どうやら時が戻っていたのは私だけではなかったようだ。
第二妃とその侍女を縄で縛って転がし、私達は神妙な顔で集まった。
「みなさん、今後のことを話し合いましょう」
第一妃が仕切る。やはり、この方が正妃であるのが正解だ。
「はい!第一妃に正妃になっていただくのが一番かと」
私が手を挙げて述べると、みんなが頷いた。
しかし、第一妃は苦虫を噛み潰した顔をされた。
「エドアルフ様と私は合わないので、またどこぞのハニトラにひっかかりにいくでしょう」
ああ……とみんなが頭を押さえた。
「第十三妃の順番ですから、みんなで支えるのはいかがですか?」
おずおずと、第十二妃が言った。
「いえいえいえ!こんな平凡な私では、エドアルフ様はすぐさまハニトラを探しにいっちゃいますよ!」
自信を持って言える。奴の好みは第二妃みたいなアハンな体つきだ。
その後も、どうにか国家滅亡を阻止できないか話し合ったが、結局は奴がハニトラにかかるルートから外れない。
「そもそも国家滅亡するのは全部あいつのせいじゃ……」
私は思わず呟いてしまった。
「そう!それ!」
みんながそうだそうだ、全部あいつのせいだと同意した。
結果、奴がいる限り国家滅亡は免れないと結論が出た。
聞けば、この時戻りの中、みんな好きな人が助けに来ていたようだ。
私達は決心した。
今回こそ、真実の愛の相手と結ばれよう!と。
そして、私は今度こそオドアルと口づけをする!
◆
タイ厶リミットまであと三日。
私達はそれぞれ実家に連絡を取った。
奴では駄目だ。みんなで国のために立ちあがろう!がスローガンだ。
そこで驚愕の事実が判明した。
なんとオドアルは、エドアルフの双子の弟だったと判明した。
言われてみれば、よく似た名前じゃないか!
オドアル、エドアルフ、『ドアル』が同じだ。
顔は全く似ていない。
しかし、同じ黒髪に緑の目だった。あまりにも、阿呆なエドアルフと精悍なオドアルでは印象が違うので、全く気づかなかった。
オドアルは、厳しかった王太后によく似ているそうだ。
王様夫婦は厳しかった王太后を嫌っていたそうだから、自分とよく似たエドアルフの方を王にしたかったのだろう。
しかし、真実が分かった後は待ったなしだ。
え?え?と困惑するオドアルをさっさと旗印にして、まず第二部族を占拠した。
ダイル国と繋がっている証拠がわんさか出てきた。
◆
そうして、迎えた今。エドアルフの成人の儀のこの時。
まさに今が分水嶺!
「私は今日この時をもって、この国の王位を継承する。そして、正妃には第十三妃を選ぼう」
若干嫌そうな顔でエドアルフが私を指差した瞬間、部族長である私達の父上達が立ち上がった。
「異を唱える!」
それを見てエドアルフは深く頷いた。
「わかっている。第十三妃は地味で平凡で凡庸だ」
そうだけど、そうじゃない!
異を唱えられたのはお前だよ!
みんなが気の毒そうに私を見るのが哀しい。
私は立ち上がった。
「畏れながら申し上げます。正妃のお話ですが、お断りいたします。私は、真実の愛を選びます」
私は、ゆっくりとオドアルの手を取った。
「オドアル様、ずっとずっとお慕いしておりました」
「第十三妃……いえ、アイリス様。私もずっとお慕いしておりました」
私はオドアルに優しく抱きしめられた。
私がオドアルの妃になるのは、妃達によって各部族説得済みである。
みんな好きな人と一緒になるために、根回しは完璧だ。
側室制度はもちろんなくした。
目を白黒させたエドアルフだったが、散々自身も真実の愛と謳ってきたのだ。
しかも、私のことは微妙だと思っている。
「う、うむ。真実の愛ならしょうがない」
我に返った前王夫妻が、文句を言おうと立ち上がったが、もう王位を譲っちゃったエドアルフがよしとしてしまったので、何も言えずに座った。
「では第一妃、お前を選ぼう」
どうやらはじめに戻ることにしたようだ。
第一妃がにこやかに立ち上がった。
「畏れながら申し上げます。お断りですわ。私も真実の愛を選びます。サウド、私はあなたが好きよ」
「第一妃、いえ、ラーナ様。僕もずっと好きでした」
エドアルフが顔を引き攣らせた。
そうしてエドアルフは、次々に妃達に声をかけてはお断りされ、真実の愛を見せられる。
ちなみに第二妃は急な病ということにして、第二部族と一緒に捕まえてある。
「それでは、ここにはいないが第二妃を選ぼう」
「はい。エドアルフ陛下の真実の相手は間違いなく第二妃でしょう」
私達は祝福の拍手をした。
そして。
「捕えろ」
あっと言う間にエドアルフを縄で縛った。
実にあっさり謀反が成った。
「何をする!?」
慌てて立ち上がった前王夫妻に、お父様達は第二部族とダイル国が繋がっている証拠をこれでもかと出していった。
「我が国は、危ういところまで来ています。このエドアルフで、どうにかなるとお思いで?」
「もちろん……」
前王夫妻も、エドアルフがお馬鹿さんなのをよく理解している。
もちろんの後が続かない。
何の抵抗もできないで、あっさり縄で縛られ転がっているエドアルフの姿は、この国の未来のように見えただろう。
「無理だろう……」
前王はウロウロと目を彷徨わせた後、力無く答えた。
「我々はエドアルフの双子の弟、オドアル様を王として従います」
みんなが一斉に跪き、オドアルに頭を下げた。
私も跪こうとしたが、オドアルに一人にしないでとばかりに強く抱きしめられた。
未だに戸惑いばかりのオドアルだが、さすがに王座から逃れられないことはわかっている。
せめて、私が一緒に立っていてあげよう。
ごめんよ、オドアル。
私は心の中でそっと合掌した。
「私が王だぞ」
エドアルフが足元で叫んでいるが、みんなは無視した。
そっと猿轡をかまされた。
「わかった。認めよう……」
がくりと項垂れて、前王が渋々オドアルを王と認めたのだった。
◆
その後、第二部族でダイル国に繋がっていた者達は奴隷に落とされた。
第二妃と共にエドアルフは幽閉となった。しかし、第二妃が一緒なのでエドアルフは満足そうだ。
エドアルフのせいで悉くダイル国に滅ぼされてきた。しかし、今生で何かしたわけではなく、何より、処刑して万が一にも時が戻ったら大変なので、これが妥当だろう。
元第二妃は、奴隷になるよりはマシだとエドアルフの相手をがんばっている。
そして、私はというと――。
「オドアル様、本っ当に初夜まで私に触れないつもりですか?」
「ああ。アイリスに触れたら、多分俺は止まれない」
未だに私は、口づけできずにいた。
オドアルとの婚儀は、半年後の予定だ。
彼は鉄の理性をもって、私に触れようとしない。
しかし、私ももうこれ以上は待てない。
なんせ十二回も口づけが寸止めなのだ。
オドアルの吐息を感じるほど唇を寄せたのに、次回に続くを十二回。
「わかりました」
私は決心した。
徐に右目を押さえた。
「痛い……目にゴミが」
「大丈夫か?」
心配したオドアルが私の目を覗き込んだ瞬間。
踵を上げて、オドアルの唇を奪ってやった。
もちろん、もう時は戻らなかった……。
読んでくださり、ありがとうございました。
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