第一話「ゲーム世界に産まれまして…」
俺の名前は田中太郎…16歳…ごくごく平凡な高校一年生…テストも平均、体育も平均、音楽、美術のセンスも平均…人と違うところと言えば…ゲーム『ファンタジー・ドラグーン』の開発者ということ…
『ファンタジー・ドラグーン』…ゲームの難易度は高いため、敷居が高いが、ストーリーやサブクエストがしっかりしているオフラインRPGだ。
当初はオンラインRPGで馴染めなかった俺が自分がやりたいことを自己満で詰め合わせたゲームなのだが、これがマニアに大ヒット、みるみる売れて、初月の売上、約30万枚。大手ゲーム会社もビックリの数字である。
正直、俺はこの状況を喜ばしく思っていた。
なんせ、このまま続編も当たれば、更に収入が増え、両親をもっと楽にさせてあげられる。今の俺にはファンがついてる。最低数の売上は確保できているようなもんだ…
そして、今、俺は机とパソコンに向かって『ファンタジー・ドラグーン2』を制作している…最中…5徹したのが原因だろうか…
「よし…後は…バグ…取り……あれ……眠い……や…」
俺はそのまま深い眠りについた…
…
…
…
「…ん?ここは…」
俺が目を覚ますと…そこは木の下だった。寝転んだ体を起こし、辺りを見渡す。
なんだ…見え辛いな…けど、何処かで見た光景だ…まるで作ったような…
俺が木陰から出た…その時…
「ルイン様…何処行ってたんですか?」
メイド姿の美少女が俺の元まで走ってくる…
「…ルイン?」
…俺は咄嗟に自分の目の位置に手を置く…すると、細々とした、しなやかな髪が俺の手に触れた…
目が隠れる程髪が長い…そして、名前はルイン…多分、俺の予想が合っていれば…
「メイドさん、俺の名前ってルイン・フォーネストで合ってる?」
「ん?はい、合ってますよ。」
俺の予想は当たっていた…マジか…
ルイン・フォーネスト…僕がゲーム世界で作ったキャラクターだ。
そして…学園編の中ボス的立ち位置だ。
俺は公爵令嬢のミランの命で暴れるんだけど、主人公だけじゃなく、王子にも手を出してしまい、ミランからも反感を買ってしまう。そして、学園編のボスであるミランに斬り捨てられ、ミラン配下の男共に殺される。
それがルイン・フォーネストの『学園編』の大まかなあらすじ…
マジで最悪だ…俺は殺されるため、ミランの凶悪さを引き立てるために作られたキャラ…俺はそんなことで死にたくない…マジでごめん…ルイン・フォーネスト…許してくれ…
「ぐぅぅぅぅぅぅ…」
俺が頭を抱えているとメイドの一人が俺に近付いてくる…
「ルイン様!だ、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ、大丈夫だよ。心配かけたね。」
俺は小学生にも満たない小さな体を必死に動かして、メイドと一緒に屋敷へと戻った。