第521話 傀儡VS抵抗者達
「何をごちゃごちゃわけわかんねぇことを! お前達、さっさとこいつらを蹴散らせ!」
「「「はい」」」
「「「「「っ!!!!!」」」」」
ノルベルトの命令に返事をした傀儡達に、フリージア達は絶句する。
改竄魔法で傀儡された者は、自我すらも術者のものになるため、術者からの命令に対して返事はおろか、言葉を発することすらない。
だが、ノルベルトの傀儡であるダリア・ルベル・グレアの3人は、ノルベルトの命令にハッキリと返事をした。
どうしてこの3人が、ノルベルトの言葉に返事が出来たか分からない。
もしかすると、3人の中に残っている自我が、ノルベルトの呪縛に反抗した結果なのかもしれない。
だとしても、これだけははっきりしている。
それは、ノルベルトの命令で3人がフリージア達に害を与えようしていること。
「皆の者、頼んだぞ!!」
「「「「「はい!!!」」」」」
レクシャの掛け声で、フリージアとメスト、そしてリュシアンは国王が待つアリーナ出入口に向かい、大剣を構えて自身に強化魔法をかけたフェビルは、レクシャに襲い掛かってきたグレアの攻撃を防ぐ。
「おっと、お前の相手は俺だ! グレア!」
「っ!」
不敵な笑みを浮かべたフェビルの強烈な一撃により、グレアの体が吹っ飛び、そのままコロッセオの壁に叩きつけられる。
「久しぶりに本気の手合わせといこうじゃないか」
笑みを深めたフェビルは、強化魔法の重ねがけをすると、よろよろと立ち上がるグレアとの距離を一気に詰める。
「全く、フェビル団長ったら」
(いくらなんでも張り切りすぎではありませんか?)
緊張感漂う中、笑って部下を追い詰めるフェビルを見て、ロスペルは呆れたように小さく肩を竦める。
「まぁ、気持ちは分からなくもないですけどね」
(僕も、団長との本気の手合わせが出来ると考えたら、不謹慎ながらワクワクしているから)
苦笑を漏らしたロスペルは、静かに笑みを潜めると銀色の瞳をルベルに向ける。
そして、既に青色の魔法陣を展開しているルベルに向かって赤色の魔法陣を展開した。
(《ウォーターショット》)
(《ファイヤーショット》)
無詠唱で発動された無数の水と炎の弾のぶつかり合いに、辺り一帯に水蒸気が立ち込める。
その刹那、水蒸気を切り裂くように氷の弾丸がロスペルに向かって飛んできて、それを見たロスペルは魔法でつむじ風を起こして水蒸気ごと吹き飛す。
「へぇ、私のいない間に実は不器用で大雑把な団長が、繊細な無詠唱を取得されていたのですね。さすがです」
ニヒルな笑みを浮かべながら嫌味を言うロスペルに、無表情のルベルはロスペルに杖を傾ける。
(まぁ、大方ノルベルトの改竄魔法のせいなのでしょうけど)
「とはいえ、ここでは少々狭くて戦いづらいので、広い場所へ移動しましょう。《テレポート》」
そう言って、レクシャを一瞥したロスペルは、転移魔法でルベルと共にコロッセオの外へ出た。
「さすが師匠! いつか、師匠みたいにカッコイイ魔法師になりたい!」
「だったら、僕たちでインベック伯爵令嬢を無力化しないとね」
「「はい!!」」
ロスペルの魔法に目を輝かせていたカトレアは、シトリンの言葉にラピスと共に頼もしい返事をする。
その時、カトレア達を視界に捉えたダリアが、カトレア達に向かって火球を放ってきた。
(そう来ると思ったわよ!)
笑みを零したカトレアは、2人の騎士とアイコンタクトを交わすと、無詠唱で水属性の初級魔法を放って火球を打ち消す。
それを合図に、魔道具で強化魔法をかけた2人の騎士が、一気にダリアとの距離を詰めた。
「っ!」
「すまんな、お前1人に対して3人がかりで襲うような真似をして」
「けど、安心して。君を死なせるようなことは絶対にしないからっ!」
そう言うと、シトリンは剣の柄でダリアのみぞおちに強烈な一撃を入れた。
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