表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
528/566

第496話 俺と彼女の出会い②

 リュシアンの誘いを受けてから数日後、俺はシトリンと共にサザランス公爵領で行われている祭にお忍びで参加した。



「よう、来たな! おぉ、いかにも大商人のボンボンらしい身なりじゃねぇか!」

「それは、お前だって同じだろうが。リュシアン」

「そうだね。お招きいただいたことは光栄なことなんだけど」



 領都の入口でまっていたリュシアンの言葉に、俺とシトリンが揃って指摘すると、楽しそうに笑ったリュシアンが俺とシトリンを領都を案内しようとした。


 その時、遠くから女性の悲鳴が上がった。



「キャ――――!!!!」



 突然の女性の悲鳴に、祭りの熱気に包まれていた領都の街が一気に静まり返る。


 そんな中、小さく舌打ちしたリュシアンが、傍にいた護衛達に指示を出す。



「チッ、こんな日に騒ぎを起こすとは……よっぽどサザランス公爵家を敵に回したいようだな」

「ここは我々が……!」

「いや、ライル、お前達はメストとシトリンの護衛を頼む」

「坊ちゃんは?」

「もちろん、次期当主として事態の鎮圧に行くに決まっている!」



 それを聞いた俺とシトリンはアイコンタクトを交わすと、リュシアンに視線を戻す。



「リュシアン、俺たちも行くぞ」

「は? お前達はお客さんだろうが! ここで大人しく待って……」

「けど、手は必要では?」



 俺達の顔を見たリュシアンは、周囲を見て少しの間、逡巡すると苦々しい顔で再び舌打ちする。



「……チッ、分かったよ。その代わり、そこにいる俺の護衛の指示に従えよ」

「分かった」



 そうして俺たち3人は、悲鳴の聞こえた場所に向かうと人だかりが出来ており、既に公爵家のお抱え騎士団が到着していた。

 だが、騎士団は民衆を抑えていたまま、事態の収束に動いていなかった。


 おかしい、『有能騎士揃い』と噂の公爵家の騎士団が動いていないなんて。


 思わず首を傾げる俺の隣で、険しい顔をしたリュシアンが人混みをかき分けると近くの騎士に声をかける。



「おい、どうした」

「あっ、リュシアン坊っちゃま! 実は……」



 そう言って、騎士が目を向けた瞬間、何かを見たリュシアンが額に手を当てると深く溜息をついた。



「リュシアン、どうした?」

「いや、その、なんだ……」



 酷く疲れたような顔をしたリュシアンが、後から追いついてきた俺たちに無言である場所を指差す。

 そこには、長い銀色の髪を1つに纏め、乗馬服に身を包んだ少女が、メイドの女性を庇いながら、いかにも貴族のボンボンらしい悪ガキの男どもに訓練用の木剣を向けていた。



「あんた達! 嫌がる女性のスカートを寄ってたかって面白半分で捲るなんて、それでも貴族令息なの!?」

「だ、だってたかがメイド……」

「『たかがメイド』ってなに!? このような人達がいないと、ろくに食事も着替えも出来ないくせに!!」

「チッ! 女だからって調子に乗りやがって――!!!」

「「っ!!」」



 危ない!


 威勢よく悪ガキ達に説教した少女の危機に、シトリンと共に助太刀に行こうと前に出ようとした。


 その時、無表情になった少女は、襲ってきた悪ガキ全員の攻撃をダンスを踊るかのように華麗に躱すと、持っていた木剣で急所を的確に当て、悪ガキ達を動けなくした。


 す、すごい! それにとても美しい!


 冷静に相手を見て攻撃を躱して攻撃に転じる。


 普通の女性なら出来ないことを、自分より明らかに年下な女の子がやってのけた。


 少女が見せた刹那の美しさに、俺は助けることを忘れて見惚れてしまった。


 すると、小さく息を整えた少女が、近くにいた騎士達に指示を出し、背後で庇っていたメイドと一緒にその場を離れた。


 その直前、申し訳なさそうな顔をするメイドに向けた少女の笑顔に、俺は初めて心臓が高鳴った。


 今思えば、これが恋の始まりだったのかもしれない。



「強いね~、あの子。ねぇ、メスト」

「あ、あぁ、そうだな」



 少女が迅速に事態を収集させたお陰で、静かになった街が再び祭りの熱気に包まれた。

 ニヤニヤと笑うシトリンから出た感想に、心ここに在らずで答えると、再び深く溜息をついたリュシアンが小さく呟く。



「はぁ、まさかフリージアが事態を収拾させるなんて。さすが、我が家のじゃじゃ馬娘というべきか……いや、これが父さんと母さんの耳に入ったら、どうなることやら」

「「フリージア?」」



 もしかして、それが先程の少女の名前なのだろうか?


 不思議そうに首を傾げる俺とシトリンに、深くため息をついたリュシアンが、疲れた顔をしたまま少女の正体を明かす。



「さっきの女の子、俺の妹でサザランス公爵令嬢のフリージア・サザランスだ」

「「えっ、えええええっ!?」」



 これが初めて俺が『フリージア』という少女をを見た時だった。


 そして、この数日後、俺は彼女と言葉を交わすチャンスを得る。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


じゃじゃ馬娘、フリージアの登場です!


この女の子、一応宰相家令嬢です(笑)


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ