閑話 ぼくのともだち
はぁ、はぁ、はぁ……
主の命令で住処を離れ、森を離れた僕はよくフリージアのところに来ていた人間……メストの魔力を追ってひた走る。
フリージア曰く、メストは魔法によって主のことを忘れているらしい。
僕はメストのこともフリージアのことも覚えているのに。
恐らく、動物の僕には効かない魔法なのだろう。
けど、メストと一緒にいる時のフリージアは、とても生き生きしていたし、とても楽しそうだった。
まるで、僕がまだあの屋敷にいた頃、馬小屋にいた僕を甲斐甲斐しくお世話していたフリージアに戻ってきたような。
だからこそ、フリージアの命令で森から離れた時、魔道具でメストの魔力を感じ取った時、僕は迷わずメストのところに向かうことを決めた。
メストなら……『貴族令嬢』と呼ばれていた主を呼び起こしてくれたメストなら、フリージアに起こった一大事に駆けつけてくれると思うし、危機的状況にいるフリージアを救ってくれると思うから。
多分、最初からフリージアは分かっていた。
今日、怖い人間達があの場所に来ることを。
だから、怖い人間達が来る前に、フリージアは『命令』という形で僕を逃がした。
それなら、僕は君を救うためにメストを連れてくる!
例え、君に怒られると分かっていても。
エドガスから君を託されたから、僕はエドガスとの約束を果たすために彼を連れてきて、君を救ってみせる!
その時、メストがいる場所から懐かしい魔力達が魔道具を通して感じ取った。
これは……剣が大好きなリュシアンの魔力だ!
それに、魔法を極めているロスペルの魔力も近くにある!
あ! エドガスが『旦那様』と呼んでいた人間の魔力もある!
リュシアンや旦那様が『殿下』と呼んでいた人間の魔力も近くにある!
カトレアやラピスの魔力も!
もしかして、メストの近くに彼らがいるのかな?
だったら、彼らにも伝えないと!
フリージアが今、嫌な人間達に連れて行かれたことを!
すると、人間達が集まっているのが見えてきた!
メスト! それに旦那様達もいる!
見覚えのある人間達が見えて、僕の走るスピードが速くなる。
体力はもう限界だ。
このまま倒れてもおかしくない。
それでも、僕はメスト達にフリージアのことを伝えないと!
「あっ!」
走っている僕に気づいたカトレアが驚いた顔で僕の方を見た。
すると、カトレアの声に反応したメストと目が合う。
メスト!
「ステイン!」
驚いた表情をしたメストがこちらに駆けてくる。
あぁ、これでフリージアが助けられる。
カトレアと共に駆け寄ってきたメストに安心した僕は、走るスピードを緩めるとその場で倒れた。
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