第479話 合流
「ラピスにカトレア嬢! それに、父上まで!」
「久しぶりだな、メスト。元気にしていたか?」
「あ、はい。お陰様で……」
(どうして3人がここに? それに、一緒にきたあの人達は一体誰だ?)
突如として空から落ちてきたのは、今年の建国祭の警備から外されていたカトレアとラピス……そして、建国祭の裏で協力者達と共に結界魔法用の魔法陣をノルベルトの手から奪還していたレクシャやディロイス達だった。
見知った者と見知らぬ者の登場にメストやシトリンだけでなくリアンも驚く中、険しい顔をしたフェビルが砂埃を払っているレクシャ達に声をかけた。
見知った者と見知らぬ者の登場にメストやシトリンだけでなくリアンも驚く中、険しい顔をしたフェビルが砂埃を払っているレクシャ達に声をかけた。
「公爵様、ご無沙汰しております」
「フェビル君、よく頑張ってくれた」
「いえ、私は大したことなど……」
(魔法陣の奪還に比べれば大したことなど……)
『公爵』という言葉に驚いているメストとシトリンを他所に、僅かに目を伏せたフェビルは、小さく咳払いをするとカトレア達を見回して話の本題に入る。
「公爵様、こちらにいらっしゃるということは作戦の方は……」
「作戦?」
(フェビル団長は一体、何の話をしているんだ?)
フェビルの言葉にメストとシトリンが揃って眉を顰める中、レクシャは笑みを浮かべながら作戦の結果を伝える。
「あぁ、皆の働きのお陰で無事に成功したよ」
「そう、でしたか」
(これで、この国がノルベルトの魔法で好き勝手されることは無くなったのか)
「あの、団長。一体何の話を……」
「おい!」
話の意図が分からず、困惑したメストがフェビルに話しかけようとしたその時、蚊帳の外にいたリアンが指を差しながら声を荒げる。
「さてはお前達、そこにいる反逆者どもと手を組んでいたのだな!」
「はぁ!? 一体、何を言って……」
「問答無用! この国の第一王女の婚約者にして、この国の次期国王! 『稀代の天才』と呼ばれるこのリアン・インベック様が、貴様ら裏切り者を反逆者や国王ごと殺してやる!!」
メストの言葉に一切耳を傾けず、血走った目で国王ごと全員皆殺しにすると宣言したリアン。
その狂気を孕んだ態度にメストとシトリンが剣を構えた時、サザランス公爵夫妻に守られていたジルベールが小さく溜息をつく。
「全く、ノルベルトの操り人形のくせに『次期国王』など……まぁ、こんな奴が国王になったらこの国も終わるね」
「き、貴様! 反逆者のくせに、現国王である父上や次期国王である俺をバカにするなんて!」
「ほう、今の国王はご健在なのに、それ以外の者が『国王』と名乗るなど、一体どちらが反逆者なのかな?」
(それも、王太子である僕の前で『次期国王』などと……本来なら不敬罪で即処刑なのだが)
「き、貴様……!!」
本物の王族であるジルベールに煽られ、怒りを露にしたリアンが黒い魔力を体に纏う。
「あ~あ、この程度で感情を露にするとは……国王の資質はおろか、貴族としての資質もなかったようだね」
(まぁ、これも全てノルベルトの改竄魔法の影響なのだろうが)
「殿下、これ以上のお戯れは……」
「分かっている。ただ、彼の言葉に少しだけ頭にきただけだよ」
「はぁ……」
(その割には、物凄く怒っていらっしゃる)
目を血走らせながらこちらを睨みつけるリアンに、冷気を纏わせながら絶対零度の視線を向けるジルベール。
そんな彼に小さく溜息をついたレクシャは、近くで顔を青ざめさせているフェビルに声をかける。
「フェビル団長。魔物討伐はロスペルとカトレア嬢が引き受けます。ですからあなた方は、ここにいるリュシアンとラピス君、そしてディロイスと共に傀儡になった騎士達の無力化をお願いします」
「分かりました。では早速、ロスペル君から貰った魔道具を使い、馬車に強力な結界魔法をかけましょう」
「助かります」
そう言って、フェビルは随分前にロスペルから秘密裏に貰った懐から小箱型の魔道具を懐から取り出して魔力を流すと、そのまま馬車の下に滑り込ませる。
すると、箱から魔法陣が2つ現れ、馬車が二重結界に覆われた。
「団長、これって……」
「この国で一番の魔法師に貰った物理と魔法のどちらも防げる結界魔法が付与された魔道具だ。上級魔法程度なら防ぐことが出来るらしい」
「上級魔法って……そんな魔法師、この国にいましたか」
「あぁ、いるぞ」
(それも、お前達のすぐ傍に)
涼しい顔をしているロスペルを一瞥し、思わず苦笑したフェビルは、笑みを潜めると静かに剣を構える。
「お前達、聞いていたと思うが奴が召喚した魔物は2人の魔法師が討伐してくれる。だから、俺たちは奴の傀儡になった騎士達を助けるぞ!」
「無力化? それだけで、あいつらを救うことが出来るのですか?」
「救える、必ずだ!」
(無力化して、術者であるノルベルトを倒されるまで大人しくしてもらえれば、奴らは絶対に正気に戻せる!)
「団長。ラピスとカトレア嬢は信用出来ますが、一緒に来たあの人達は……」
「あぁ」
(そう言えば、今のこいつらは知らないんだったな)
レクシャ達を怪しむシトリンからの問いに、フェビルは小さく頷いた。
「大丈夫だ。あの人達は俺たちの味方だ」
「そう、ですか」
(団長がおっしゃるなら、僕たちに敵対するつもりはないんだろうね)
フェビルの言葉に渋々納得したシトリンは、メストに声をかける。
「メスト」
「あぁ、奴らを助けるぞ」
メストの言葉にシトリンが深く頷いた時、カトレアの傍にいたラピスが2人の隣に来た。
「隊長、それに副隊長も」
突然真横に来たラピスに声をかけられ、メストとシトリンは真っ直ぐ前を向いたまま話しかける。
「ラピス。なぜお前がカトレア嬢と一緒にいるかは聞かない」
(それが団長に与えられた任務だと思うから)
「だけど、今のラピスは僕たちの味方……その認識で間違いはないよね?」
「もちろんです!」
ラピスの頼もしい返事を聞いて、メストとシトリンが安堵の笑みを浮かべた時、リアンが魔物と操り人形達に命令を下す。
「お前達! 奴らを皆殺しにしろ!!!!」
リアンの声で魔物や操り人形達が動くと、フェビルも負けじと声を上げる。
「お前達、国王陛下を守り、仲間を救い、そこにいる魔物使いを捕らえろ!!」
「「「ハッ!!!!」」」
「皆さん、作戦開始です!」
「「「「「はい!」」」」」
レクシャの言葉で、多勢に無勢とも思える戦いの火蓋が切って落とされた。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
というわけで、レクシャ達がメスト達に合流!
明らかに不利な状況で、果たして彼らは道を切り開くことが出来るのか!?
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(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)