第471話 王族護衛
――時は、ノルベルトの傀儡達に連れられたフリージアが、地下牢に閉じ込められたところまで遡る。
「ようやく近衛騎士らしい仕事が振られたね。メスト」
「あぁ、そうだな」
建国祭の始まりを告げる祝砲が鳴り、フェビルと第四部隊の面々は王族の護衛騎士として、王族を乗せた豪勢な馬車を護衛しつつ、王城からコロッセオまでの道のりを歩いていた。
そんな中、フェビルやシトリンと共に馬車のすぐ傍を護衛していたメストは、シトリンに話を振られて感慨深そうに頷く。
(色々あったが、こうしてようやく近衛騎士らしい仕事が出来て本当に誇りに思う)
思わず笑みを零すメストを見て、何かを思い出したシトリンが苦笑する。
「と言っても、第一部隊が去年の王族護衛の引き継ぎを全くしてくれなかったから、イチから作る羽目になって本当に大変だったけど」
「そうだったな」
フェビルから王族護衛の任を与えられ、メストは早速、シトリンと共に建国祭の王族護衛の引き継ぎを行うために第一部隊から第三部隊の隊長のところを訪れた。
しかし全員から、『今、宰相閣下の仕事で手は離せないから無理だ!』と断られた。
中には『お前達も近衛騎士なのだから、そのくらい自分で考えろ!』と門前払いを食らった。
その結果、2人はフェビルとグレア、そしてフェビルの計らいで呼んでくれた宮廷魔法師団長のルベルと副団長フォレスから助言をもらいながらイチから警備計画を立てた。
「それに、警備計画も最終段階に入ったタイミングで宰相閣下が突然、『当日のルートはこれだ!』っていきなり言われたんだよね」
「そうだったな。それも、言ってきたのは去年王族護衛のしていた奴じゃなくて、宰相閣下の使いを名乗る奴だったから、どういう意図でこのルートにしたか聞いても無駄だった」
(そのお陰で最初から警備計画を立てることになって……はぁ、本当に大変だった)
今までの苦労を思い出して苦い顔をしたメストに、シトリンが再び苦笑を漏らしているとふと馬車に乗っている護衛対象のことが気になり、誰にも聞こえないようんメストに小声で囁く。
「そう言えば、体調が優れないのに建国祭に出席されるなんて、さすが国王陛下だね」
「確か、王妃殿下も第一王女殿下もご気分が優れない中、ご出席されるんだったな」
「そうだね」
今から半年ほど前、執務中の国王が突然、原因不明の病で倒れた。
そこからしばらくの間、公務を全て王妃や第一王女が国王の名代として担っていた。
しかし、その数日後、今度は王妃と第一王女が国王と同じ原因不明の病で倒れた。
王族全員が病に伏せられたという事実に、王城と貴族達から不安が広がっていたが、病に伏していた国王が全権を宰相閣下に渡したことで、事態は深刻な状況にならずに済んだ。
……というのが表向きのことで、実際は国王から全権委譲され、宰相閣下の横暴ぶりに拍車がかかっただけだった。
そんな王族達が今回の建国祭に全員出席されるというのは、王族の体調を心配していた国民達にとってはこの上ない嬉しいことだった。
それは、護衛役を務めるメスト達も同じ気持ちだった。
(それにしては皆さま、随分と憔悴しきっている。それに、どこか虚ろな目をされていたが……)
ノルベルトのエスコートで馬車に乗った王族達の顔を思い出し、メストが思わず眉を顰めると、突然黙ったメストを不思議に思ったシトリンがメストの顔を覗き込んだ。
「メスト? どうしたの、急に黙って?」
「あ、いや……とりあえず、コロッセオに到着したらより厳重な身辺警護に切り替える。同時に、王族の皆様の様子に注視しながら、必要に応じて医者を呼べるようしておこう」
「分かった。僕の方で皆に伝えるからメストは団長に報告を頼む」
「了解、助かる」
シトリンの頼りになる返事に、メストが安堵の笑みを浮かべていると、ふとシトリンが何かをおも出して眉を顰める。
「それよりも、ダリア嬢とはあれからどうなったの?」
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
というわけで、今回からメスト達のお話です!
ノルベルトの影響下にあったはずの彼が、なぜフリージアを助けに来たのか!?
それがこれから明らかになります!
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