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第468話 劣勢の果て

 ノルベルトの駒達による総攻撃が再び始まってしばらく、戦いにおいてはいつも涼しい顔をしていたフリージアが苦悶の表情を浮かべていた。



「うぐっ!」



(やっぱり、この手の攻撃はキツイわね)


 2年前に王都でリースタからの猛攻とは比べ物にならない、宮廷魔法師の魔法が付された武器を容赦なく振るう騎士達の猛攻は、いくら戦い慣れているフリージアでも受け流すだけでやっとだった。


(騎士達の動き自体は、ノルベルトの改竄魔法の影響で近衛騎士とは思えない鈍いから、素人の私でもなんとか躱せる。それでも、宮廷魔法師の魔法が付与された武器の攻撃を全て躱すのはさすがに難しい)


 かつてない劣勢を強いられたフリージアは、次々と襲い掛かってくる騎士達の攻撃を躱したり受け流したりしながら必死にコロッセオを駆け回る。

 その様子を特等席で見物していたノルベルトは、改竄魔法を使って宮廷魔法師達に騎士達への強化魔法をかけさせた。



「っ!」



(嘘でしょ!)


 目の前にいる騎士達の体が白く光ったことで、フリージアは『騎士達に強化魔法がかけられた』悟って咄嗟に後ろに下がる。

 だが、宮廷魔法師によって強化された騎士が一気に迫り、風属性の魔法が付与された斧を大きく振りかぶる。


(マズイ!)


 驚いたフリージアは急いで透明な魔力を纏わせたレイピアを構えて受け身を取る。

 大きく振りかぶられた斧はレイピアにあたり、斧に付与された風属性の魔法は無効化魔法によって打ち消された。

 だが、付与された魔法によって乗った勢いを打ち消すことは出来ず、アリーナの中央にいたフリージアが一気にコロッセオを壁際に吹き飛ばされた。



「ガハッ!」



 背中から叩きつけられたフリージアは、口から血を吐きながら地面に倒れると、懐からポーションを取り出してそのまま叩きつける。

 すると、体中に広がる痛みがみるみるうちに引いていく。



「ハァ、ハァ、ハァ」



(うっ、痛い、痛いわ。こんな大けがをするなんて初めてよ)


 幼い頃から剣を振っていたフリージアは、鍛錬の中で多少なりとも怪我をすることは多々あった。


 だが、壁に叩きつけられるような大きな怪我をするのは初めてだった。


 ポーションで回復したフリージアがレイピアを支えによろよろと立ち上がる姿を見て、ノルベルトが満足げに嗤う。



「フン、これで公開処刑も大詰めだな」

「くっ!」



 ギュッとレイピアの柄を握ったフリージアは、特等席で嗤っているノルベルトを睨みつける。


(私の役目はノルベルトとダリアの気をひくこと。だから、こんなところで弱音を吐くわけにはいかないのよ)



「当たり前よ! 私は、ここで死ぬわけにはいかないから!」



(家族に、友人に、再会する約束をしているのだから!)



「ハハッ、威勢だけは良いな! この平民貴族が!」



 フリージアの言葉を聞いて、ノルベルトが嘲笑を浴びせる。

 その直後、頭上から矢と魔法の雨が降ってきた。



「くっ! こんなもの!!」



 レイピアを構えたフリージアは、足元に纏わせた魔力を爆発させて避ける。

 それを皮切りに、今まで動かなかった騎士達は属性魔法の付与された武器を持って一斉にフリージアに襲いかかり、観客席にいる貴族達や宮廷魔法師達は数多の魔法や魔法が付与された矢をフリージアめがけて降らした。


(こんなところで、負けたりしない!)


 再びコロッセオに砂塵が舞う中、フリージアは襲い掛かってくる猛攻に対し、避けたり受け流したりしてしのぎながらコロッセオを駆け回る。



「ハアアッ!」

「フッ!」



(私は会うんだ! 家族に!)



「ハッ!」



(友人に! そして……!)



「《直接干渉》!」

「うぐっ!」



(メスト様に!)



 無効化魔法で隙を作ったフリージアは、レイピアで強烈な一撃を入れて騎士を無力化する。


 その直後、ノルベルトの駒になった神官達が騎士に治癒魔法を使い、無力化された騎士が立ち上がらせた。


(やっぱり、そうなるわよね)


 ノルベルトが来た瞬間、フリージアは騎士や宮廷魔法師達だけでなく、治癒魔法に長けている神官達が来ていたことをフリージアは分かっていた。


 だからフリージアは、一々無力化するのではなく、攻撃を受け流したり避けたりして体力を温存させつつ、彼らの魔力切れを待ち、魔力が切れたタイミングで騎士達を一気に無力化する作戦に出たのだった。


(ここにいる彼らには、いつか罪を償ってもらう。例え、ノルベルトに操られていたとしても、彼らは今まで平民を傷つけた。その罪だけは必ず償ってもらう。だから、ここで生きていてもらわないと!)


 それは、約束のために泥臭く生きたとしても、貴族として生まれた誇りは忘れなかった、『王国の盾』の2つ名を冠するサザランス公爵家の人間に生まれた者の使命。


『甘い考えだと思う。けれど、この国に生きる者なら、この国に生きる者として罪を償って欲しい。それが死であってはならない。生きて償え』


 そして、この国の本当の宰相であり、父レクシャ・サザランスの理想だから。


 そんなことを考えていた矢先、目の前にダリアが現れた。

 かと思いきや、ダリアの背後にいた宮廷魔法師が、ダリアに向かって雷属性の上級魔法を放とうとしていた。



「マズイ!」



 それに気づいたフリージアは、咄嗟にダリアを庇って背中で雷属性の魔法を受ける。

 その瞬間、2つの矢がフリージアにむかって放たれた。



「くっ!」



 透明な魔力で纏わせたレイピアで飛んできた矢ごとを弾き飛ばしたフリージアは、腕の中にいるダリアを気絶させ、足元に纏わせた透明な魔力を爆発させてアリーナの出入り口に逃げると、ダリアを出入り口に寝かせる。

 その直後、再び2つの矢がフリージアを襲った。



「しまっ……!」



 慌ててレイピアに透明な魔力を纏わせて、飛んできた矢に付与されていた風属性の魔力を打ち消そうとフリージア。

 だが、彼女が気づいた時には二つの矢は、フリージアがいつも身につけているアイマスクを外し、脇腹に突き刺さった。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


な、なんと!


戦いにおいて負け知らずのフリージアの体に矢が突き刺さった!


一体、彼女はどうなってしまうのか!?


(バッドエンド? いやいや、絶対にさせませんから)


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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