第465話 総攻撃
「では、処刑の再開だ! ダリア!」
「っ!」
ノルベルトの言葉に驚いたフリージアは、慌ててアリーナの出入口に目を向ける。
そこには、目にハイライトを失っていたダリアが、フリージアに向かって赤い魔法陣を展開していた。
(ダリア!)
傀儡と化したダリアが無詠唱ではなった火球を、フリージアが透明な魔力を纏ったレイピアで無効化する。
その瞬間、騎士や宮廷魔法師達に貴族達が一斉に魔法や得物でフリージアに襲い掛かってきた。
「うぉぉぉぉぉ!!!!」
「おりゃあああああああっ!」
「うがががががっ!!!」
「っ!」
(まさか、隙を作らせるためにダリアの名前を呼んだのね!)
結界の中でニヤリと笑うノルベルトに、眉を顰めたフリージアは頭上から飛んでくる魔法と、眼前に迫ってくる騎士達の攻撃を紙一重で躱すと人の少ない方へ駆け出す。
(なるべく動いて魔法の攻撃を分散させて、向かってくる騎士達の攻撃を躱していかないと!)
400人の人間とまともにやり合うのはあまりにも現実的ではない。
それに、フリージアの目的はレクシャ達がコロッセオに来るまでの間、ノルベルトとダリアの気を引くこと。
だからフリージアは、先程と同じように魔力切れを狙いつつ、なるべく集中攻撃を受けないようコロッセオを走り回って攻撃を分散させる作戦に出た。
前方から繰り出される騎士達の攻撃は基本的に受け流しつつ、頭上から降ってくる多種多様な無詠唱魔法はなるべく躱し、無理そうだったら無効化魔法で打ち消す。
(幸い、自分に襲い掛かっている騎士達が来ている黄金の鎧は、上級魔法までなら耐える代物だから、例え味方の魔法が偶然当たっても、彼らが怪我をすることは無い)
「それに、状況次第で盾代わりにもなってくれるのよね!」
鎧の特性を知っていたフリージアは、状況に応じて受け流した騎士を盾代わりにして魔法を躱していた。
(まぁ、それで胸が全く痛まないと言ったら嘘になるけど。例え、敵の傀儡だとしても、彼らもまた、この国の民なのだから)
「それにしても、本当キリがないわね! その上、ノルベルトが改竄魔法をかけたせいで騎士の動きが、今まで戦ってきた騎士の動きに比べて明らかに洗練されているし、飛んでくる魔法だってさっきの貴族の魔法にと比べれば威力が増している!」
コロッセオに再び砂塵が舞う中、ありとあらゆる手段で攻撃を躱していくフリージアが苦悶の表情を浮かべる。
だが、そんな彼女に傀儡達が手加減をするわけでもない。
「うぉぉぉぉぉ!!!!」
「おりゃあああああああっ!」
「っ!」
「ギャハハハハハッ! そうだ殺せ! 俺を苦しめる死神なんざ、殺してしまえ!!」
ノルベルトの汚い高笑いが耳に届いたフリージアは、不快そうに眉を顰めると腰にあるマジックバックから体力回復用と魔力回復用のポーションを取り出す。
(とりあえず、動きながらでもポーションを飲ま……って、そうだ!)
全方位から猛攻を紙一重で躱していたフリージアは、手に持った2つポーションを地面に叩きつける。
すると、フリージアの体が黄緑色に光り、消耗していた体力と魔力が瞬く間に回復していった。
(そう言えば、随分前にロスペルお兄様からポーションの使い方を教えてもらっていたのを忘れていたわ!)
それは、フリージアが8歳の頃、ロスペルから魔法の知識を教わっていたフリージアは、ロスペルから『万が一の時は瓶ごと叩き割った方が良い。その方がすぐに回復が出来る』と教わっていたのだ。
「全く、こんなに魔法を放ったらコロッセオが壊れるなんて分からないのかしら!」
ノルベルトの汚い高笑いを聞きながら、フリージアは止む気配が一切ない猛攻にコロッセオが倒壊しないか心配をしていると、突然攻撃の手が止んだ。
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