表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
493/578

第462話 廃人

「っ!」



 フリージアが無効化魔法を発動するよりも先に改竄魔法を発動したノルベルト。

 それにより、コロッセオにいた貴族達の目からハイライトが消えた。



「ギャハハハハハッ! これで貴様の逃げ場も無くなったな! さぁ、公開処刑の続きを始めようじゃないか! 今度は貴族達だけじゃなくて宮廷魔法師や騎士達が相手だ!」



 そう言って、愉悦に浸ったノルベルトが片手を上げた瞬間、黄金の鎧に身を包んだ騎士達が観客席の一番奥から現れ、猛スピードで階段を駆け下りると、フリージアがいるアリーナまで降りてきた。



「くっ!」



 苦い顔をしたフリージアは瞬時に周りを見回す。


(観客の数はおよそ300。そしてここに集まっている宮廷魔法師達はざっと見積もって40。治癒魔法が使える神官たちも20ってところね。騎士達は宮廷魔法師達と同じ40かしら。となると、私は400人を相手に戦わないといけないってわけね)



「いくら改竄魔法の影響で、多少なりとも剣や魔法の腕がいくらか落ちているとはいえ、さすがに400人も相手をするのは骨が折れるわね」

「何か言ったか?」

「いえ、何でもありませんよ」



 涼しい顔をするフリージアに、本来国王しか座ることが許されない特等席にドカリと座ったノルベルトが軽く鼻で笑う。



「フッ、そうか。まぁ、せいぜい俺を楽しませるくらいには平民らしく醜く足掻いて死んでくれよ。どうせ、貴様に助けが来るなんてありえないと思うが! ギャハハハハハッ!」

「……うるさいわよ、このバカ宰相が」

「っ!」



(あなたの下品な笑い声、聞いていてイライラするのよ! 少し黙っていてくれないかしら!)


 レイピアの切っ先をノルベルトに向けたフリージアは、切っ先に小さな透明な魔力を集めるとノルベルトに向かって放った。

 その時、ノルベルトの横から風の刃が飛び、透明な魔力の塊が風の刃に打ち消された。



「えっ?」



(ほんの少しの魔力とはいえ、無効化魔法が込められた魔力の塊を、ただの魔法で打ち消した? それも、高度と言われている無詠唱魔法で?)


 無効化魔法が無詠唱魔法に打ち消され、フリージアが驚きを隠せないでいると、それを見たノルベルトが自慢げに笑った。



「フン、そんなちんけな魔力では、私の改竄魔法で強化された宮廷魔法師達を倒すことなんて出来ないぞ」

「強化、ですって?」



 ノルベルトの言葉にフリージアは思わず眉を顰める。


(改竄魔法は、あくまで対象者の魔力と自分の魔力を使って対象者の記憶の改竄する魔法。強化魔法や支援魔法のような他の人の能力を底上げする効果はなかったは……)


 その瞬間、フリージアの脳裏にノルベルトが改竄魔法をかけた瞬間が過り、フリージアは驚愕の表情でノルベルトを見る。



「まさか、さっきの魔法陣って!!」

「ギャハハハハハッ! やっと気づいたかこの愚か者が!」



 そう言うと、ノルベルトは特等席から立ち上がり自慢げに両手を広げた。



「そう、ここにいるのは正真正銘俺の駒……改竄魔法で廃人寸前になった奴らだ!」

「なんて、ことを……!」



 改竄魔法が闇魔法として忌み嫌われている最大の理由。


 それは、対象者の記憶を好き勝手に改竄した挙句、対象者自身を廃人に変えてしまうからだ。


 そして、廃人になった対象者は術者の操り人形として、痛みも苦しみも感じることも無いまま、術者からのどんな無茶ぶりな命令にも忠実に従う。


 術者が解除するか命を落とすまで。


 そんな恐ろしいことを自慢げに話したノルベルトに、フリージアは怒りで肩を震わせる。



「あなた、それでも人なのですか?」



(こんな大勢の人間の尊厳を奪い、いとも容易く廃人にすることに、罪悪感も躊躇いもなかったの?)



「フン、俺はこの国の……いや、この世界の覇者になるのだ。これくらい出来て当然だろう」

「っ!」



(本当、清々しいくらいのクズね)


 不快そうに鼻を鳴らしたノルベルトを、鋭く睨みつけたフリージアが僅かにレイピアを下ろした時、フリージアから少し離れた場所から女性の遠慮するような声が聞こえた。



「あ、あの……お父様?」

「ん? 何だ、ダリア?」



 殺気を放っているフリージアから愛娘であるダリアに視線を移したノルベルト。

 その視線の先には、恐る恐ると言ったように手を上げているダリアを騎士が取り囲んでいた。

 だが、ノルベルトの傀儡に成り下がった彼らは、誰一人として宰相の娘である彼女をフリージアから守ろうとする気配を一切漂わせなかった。



「この愚民の処刑をお父様自らされるのでしたら、その前に私のお父様のお傍に転移してもよろしいでしょうか?」

「あぁ、そうだったな」



 満面の笑みを浮かべる父を見て、安堵したダリアは愉悦の笑みを浮かべながらフリージアに侮蔑の目を向ける。


 けれど、ダリアは気づかなかった。

 愛娘に向けていたノルベルトの目がすっかり冷めきっていることに。



「アハハハハッ! これであんたもおしまいね!」



 ダリアがフリージアを侮辱したその時、ノルベルトから黒い魔力をかけられた宮廷魔法師がダリアに向かって赤い魔法陣を展開した。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


本当、ノルベルトってどこまでもクズですよね(笑)


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ