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第455話 偽りの真実は憤怒を煽る

「……今、なんて言ったの?」



(今『無効化魔法』って聞こえた気がするんだけど……?)


 ノルベルトの改竄魔法によって、『無効化魔法』というフリージアが唯一使える魔法の存在はペトロート王国民の記憶から消されている。

 それを知っていたフリージアは、ダリアの口から発せられた言葉に耳を疑う。


 そんな彼女を見て、満足げな笑みを浮かべたダリアはもう一度だけ魔法の名前を口にする。



「あら、聞こえなかったかしら? 今、『それが、無効化魔法なのね』と言ったのよ。この愚民が」

「っ!」



(どうして、どうして、ダリアが無効化魔法のことを知っているの?)


 半年前にダリアと出会った時、フリージアの魔法を見たダリアはそれが魔法だということに気づいていなかった。

 なのに、どうして今になってダリアが無効化魔法のことを知っているのか。


 レイピアの柄を強く握ったフリージアは、僅かに表情を険しくしながら問い質す。



「その魔法、誰から聞いたのかしら?」

「それはもちろん、お父様からよ」

「え?」



(ノルベルトから聞いた? どうして改竄魔法の影響下にいるダリアにそんなこと……はっ!)



「もしかして、ノルベルトは……!」



 ダリアの話を聞いて嫌な胸騒ぎを覚えたフリージア。

 その時、満足げな笑みを浮かべていたダリアが突然睨みつけた。



「あなたのことも聞いているわ。フリージア・サザランス」

「っ!……さて、誰のことで」



(やっぱり、ノルベルトは知っていたのね!)


 僅かに虚を突いた表情をしたフリージアだったが、すぐさまいつもの無表情に戻る。

 それを見たダリアが激高する!


「とぼけないで頂戴! 大昔に私たちインベック家に冤罪を着せ、全てを奪った隣国から来た蛮族どもの末裔が!」

「っ!」



(『冤罪を着せた』ですって?)


 声を荒げながら怒鳴り散らすダリアの罵倒の中に、聞き捨てない言葉を耳にしたフリージアは僅かに眉を上げて冷たい目を向ける。


 それでも、ダリアは義憤に駆られたようにノルベルトから聞いた話をコロッセオにいる聴衆に訴えるように堂々とした出で立ちで語る。


 それが真実であると言わんばかりに。



「この国の神であるお父様から全て聞いているわ! 300年前、あんたの生家であるサザランス家が、この国で最も尊ぶべき貴族である我がインベック家に『国家反逆罪』という冤罪を着せ、インベック家から地位も名誉も全て奪い、それを全て自分たちのものにしたと!」

「…………」



(お父様。私、宰相家の令嬢として『どんな理不尽なことを言われても、己が正しいと信じるのならば、決して感情的にならず、毅然とした態度でいろ』という教えを平民になった今でも守ってきました)


 偽りの話で生家が貶され、怒りで我を忘れそうになるところを必死に抑えるフリージア。

 そんな彼女の想いを踏み躙るように聴衆から罵声が飛ぶ。



「何だと! だったら、この下民の先祖は300年前、我らが女神であらせられるダリア様の先祖を陥れたというのか!」

「なんと卑劣外道なことを! 許せない!」

「ダリア様! 今すぐ処刑してください!」

「そうです! 国の害悪でしかないこの下民を殺してください!」

「「「「「「殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!」」」」」」



 聞くに堪えない罵声に、フリージアの堪忍の緒が切れる。


(ですが今だけは……ノルベルトが捻じ曲げた真実を正義として掲げ、誇り高き我が家を容赦なく貶している今だけは、1人の人間として感情的になっても良いですよね?)



「だから、あなたはお父様の力を使ってこの国から私たちを消し、私の大切なものを全て奪ったと?」



 フリージアの冷たさを帯びた言葉に、コロッセオが一気に静まり返る。


(地位や名誉だけじゃなく、友人や恋人も全部、全部……!)


 沸々と湧いてくる怒りを殺気に変えるフリージアに、ダリアはさもと当然とばかりに鼻を鳴らす。



「フン、当然じゃない! だって元々、全て私のものだったのだから!」

「私のもの?」

「そうよ! あなたの友達も恋人も全て私のものだったのよ!」



 その時、フリージアの脳裏に在りし日にかけられた言葉達が蘇る。



『フリージア! 今度遊びに行きましょう!』

『フリージア嬢、またカトレアと遊びに行ったと聞いたが?』

『フリージア嬢、メストの過保護なところを許してあげてね』

『フリージア、今日はどこへ行こうか?』



(私が大切なだと思っていた者は全てあの女のものだったなんて、そんなの、そんなこと……!)


 ダリアの言葉で、フリージアは後生大事にしていた思い出さえも踏み躙られ、フリージアの頭と心は怒りに支配される。

 そんなことなど露知らず、ダリアは怒り心頭のフリージアをとことん煽っていく。



「それで、お父様の力で悪魔の力を持ったあなた達ごと消し去っていたと思っていたけど……どうやらそれは間違っていたみたい。だから、平民になったあなたを余興としてこの場で処刑する! そして、この国から悪魔の力を一掃するのよ!」



『悪魔の力』という言葉に、フリージアは一瞬だけ冷静になる。



「……『悪魔の力』というのは、無効化魔法のことですか?」

「当たり前よ! その穢わしい力も、その力を持つあなたもこの王国には必要ないわ!」

「っ!」



(そうか、ノルベルトは私の全てを否定することで私の心を折り、観衆の前で無様に処刑したかったのね)


 目を吊り上げたダリアの言葉に、フリージアはようやくノルベルトがなぜ娘に無効化魔法のことやフリージアのことを話したのか理解した。

 そして……



「……フフッ」

「え?」

「アハハハハッ!!!」



 僅かに眉を顰めたダリアに対し、少しだけ体を曲げたフリージアが思いっきり顔を上げると貴族令嬢らしかぬ大きな口で笑い声を上げる。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


今回はとことんダリアが煽り、フリージアの怒りが増す回でした!


さて、怒りでどうにかなったフリージアはどうなるのか?!


次回、第7章終幕です!



そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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