第446話 彼と私の出会い①
※フリージア視点です。
――彼と出会ったのは、私がデビュタントを迎える遥か昔。
物心がついた頃から読書と運動が大好きだった私は、淑女教育の合間にリュシアン兄様と剣の鍛錬をよくしていた。
普通の令嬢なら絶対に鍛錬なんてしない。
でも、私は『王国の盾』という二つ名を賜っているサザランス公爵家の令嬢として生まれたのだから、その2つ名に恥じない令嬢になろうと思い、剣の鍛錬をしようと決意した。
それを両親に告白した時、2人はとても驚いていた。
特に、お母様は一瞬気絶しかけ、お父様が心底慌てた。
けれど、私が『サザランス公爵家の人間として強くなりたい!』と知ると、両親は揃って嬉しそうな笑顔を見せると、私に剣の鍛錬をすることを許してくれた。
厳しい淑女教育を受けることを条件に。
そんな私だから、幼心ながら『嫁の貰い手なんて絶対現れないだろう』と思っていた。
だって、剣を振り回す令嬢なんて誰が選ぶというの?
政略結婚でもそんな規格外な令嬢は嫌に決まっている。
しかし、両親は私に貴族では珍しい恋愛結婚をして欲しいと考えていたらしい。
特に『切れ者宰相』と言われているお父様が強く望んでいたらしい。
『生まれたその瞬間からたった1つの魔法しか使えない運命を歩むのならば、せめて誰かを愛し、誰かに愛される人生を送って欲しい』と切なる思いから。
だけど、私は幼心ながらサザランス公爵家の令嬢として剣を持った瞬間、誰かを愛し、誰かに愛される、そんなおとぎ話のような幸せな人生を諦め、サザランス公爵家の一員として家と国のために尽くそうと思っていた。
……あの人に出会うまでは。
◇◇◇◇◇
「フリージア。くれぐれも、お父さんかお母さんかリュシアンかロスペルの傍を離れないでおくれよ。ここは、領地ではないのだから」
「分かっています、お父様。なにせ今日は、王家主催のお茶会なのですから。私もサザランス公爵家の一員として、家の名に泥を塗るような真似は致しません」
生まれてから領地で過ごしていた私は5歳の時、お母様や2人の兄と共に王都にある屋敷に越してきた。
そしてその数日後、『陛下がお前を見たいから連れ来いと言われた』とお父様から言われ、私は家族全員で王家主催のお茶会に参加した。
私にとって人生初のお茶会。それも王家主催のお茶会。
だから、家名に泥を塗るようなことは許されない。
(それしてもお父様、本当に心配性ね。私がどれだけ厳しい淑女教育を受けているかご存じないのかしら?)
王都の仕事が忙しいため、滅多に領地に帰ることがないお父様は、お茶会デビューをする私を不安そうな目で見つめる。
そんな父を内心不満げに思いつつ、淑女教育で鍛えた笑顔で答えた私は、お父様に連れられて陛下にご挨拶をする。
「レクシャ、その子がそなたの娘か?」
「はい。フリージア、ご挨拶を」
初めて見る陛下のご尊顔と威厳ある風格に恐縮しながら、泣くことも許されない鬼のような厳しい淑女教育で身につけたカーテシーを気合で披露する。
「お初にお目にかかります、国王陛下。サザランス公爵家が娘、フリージア・サザランスでございます。本日はお招きいただき、誠にありがとうございます」
「ほう! この幼さにしては完璧な挨拶ではないか! さすが、レクシャの娘だな!」
「恐れ入ります」
深々と頭を下げたお父様が、安堵した表情で冷や汗を掻いているのが面白く、思わず笑みを零しそうになった時、こちらを見たお父様が私の小さな手を取る。
「それでは陛下、これで失礼させていただいてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、我の願いを聞いてくれてありがとう。礼として、今日は思う存分楽しんでいってくれ」
「お心遣い、大変感謝致します」
父と共に深々と頭を下げた私は、父に連れられるまま陛下の御前から離れる。
その瞬間、すぐ後ろで父親と共に順番を待っていた令息に一瞬だけ目を奪われる。
(うわぁ、あの人。ものすごくカッコいい!)
領地にいた時は、同い年ぐらいの領民の子どもたちとよく遊んでいた。
もちろん、その中には男の子もいた。
けど、淑女教育で貴族としての矜持を叩き込まれていたお陰か、異性に対して目を奪われるなんてことは全くなかった。
だから、異性に目を奪われるなんてことは初めてだった。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
というわけで、フリージアとメストの出会いのお話が始まりました!
『クライマックスでは絶対に入れよう!』と前々から考えていた話でした!
なにせ、この物語はフリージアとメストの切なくて甘い恋もメインですからね!
どうやって、フリージアはメストと仲良くなり、婚約することになったのか!?
楽しんでいただけると幸いです。
そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!
(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)




