第443話 全員に解呪魔法をかける
「それって、もしかして村人達に解呪魔法をかけるの?!」
「「っ!?」」
(そんなことをすれば、ノルベルトにバレてしまうじゃないの!?)
ロスペルのやろうとしていることに察しがついたティアーヌが驚いたように声を荒げ、それを聞いていたカトレアとラピスが揃って目を見開く。
すると、3人の驚いた顔を見たロスペルがニヤリと笑う。
「母さん。今までの調査で、ノルベルトは国民全員に改竄魔法をかけたと思っています。ですが実際、我がサザランス公爵家とその協力者は改竄魔法にかかっていません」
「確かに……でも、私たちには無効化魔法が付与された魔道具があるから」
「そうですね。ですが、帝国で解呪魔法をかけてもらったカトレア嬢とラピス君は、王国に戻ってきた後、再び改竄魔法がかけられた形跡がありません」
「それは、2人ともあの人から貰った腕輪をつけて、上手く立ち回ってくれたからでしょ?」
「それもあります。ですが、これらの事実をノルベルトは全く気づいていないのです」
そう言って笑みを潜めたロスペルは、得物を持ったまま下卑た笑みを浮かべる村人達に目を向ける。
「つまり、何が言いたいの?」
「つまり、ノルベルトは国民の記憶から私たちを消し去ったあの日から今日までずっと『この国の民は全員、自分のかけた改竄魔法にかかっている』と思い込んでいるのです」
「っ!?……それは、本当なの?」
「えぇ、ここにいる2人がそれを証明してくれています」
(術者であれば、対象者が改竄魔法にかかっているかどうか分かるはずだから)
改竄魔法の使い手であるノルベルトであれば、マーザスの解呪魔法でカトレアとラピスの改竄魔法が解けた直後、感覚的に2人が自分の影響下から外れたことを察知すること出来る。
そして、2人が帰国したのを見計らって、直接2人を呼び出して改竄魔法をかけ直して再び自分の影響下に置く。
『猜疑心が強く、独善的な彼ならやるだろう』とレクシャも危惧していた。
けれど、実際はノルベルトが2人に改竄魔法をかけ直すことは無かった。
加えて言うなら、ノルベルトが改竄魔法にかかっていない者がいることを把握していれば、その者たちを捕らえて改竄魔法をかけた上で、レクシャの与えた魔道具を調べるだろう。
そして、サザランス公爵家が生きていることに気づいて、あらゆる手を使って見つけ出して手にかけるだろう。
そうなれば、レクシャの作戦は瞬く間に破綻し、これを引き金にノルベルトはペトロート王国民全員を傀儡にして世界征服に乗り出していたに違いない。
(まぁ、改竄魔法を使い過ぎて、副作用で自分の記憶をも改竄した結果、2人が影響下から外れたことを察知することが出来なかったのだろうけど)
「ですので、ここで、村人達に解呪魔法をかけたとしても気づかれることはない。何せ、今の彼は自分の思い込みの中で生きているのだから」
ロスペルが言わんとしていることが理解出来たティアーヌは、小さく笑みを零すと真っ直ぐ眼前を見つめた。
「それでロスペル、私は……いや、私たちはどうしたらいい?」
険しい顔をしたティアーヌは、懐に忍ばせていた小さなマジックバックから使い込んだ鞭を取り出す。
そこには、風属性の魔法陣が刻まれていた。
(母上、本気を出すみたいですね。それでしたら……!)
鞭を持つ母親と、その後ろで得物を構えている2人を見たロスペルは三人に指示を出す。
「では、僕が解呪魔法の準備している間、3人は村人達の足止めをお願いします」
「分かったわ」
「「分かりました!!」」
(正直、こんな大人数に解呪魔法をかけるにはそれなりに時間がかかるからね。3人には頑張ってもらおう!)
ロスペルからの指示に3人が返事をした直後、ニタニタと下卑た笑みを浮かべながら様子を伺っていた村長が口を開く。
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