第436話 一難去って……
「お待たせ~♪」
「筆頭宮廷魔法師殿!」
「マーザス殿!」
「マーザス様!」
傀儡の騎士達の後始末を終え、黒いフードの集団と共に帰ってきて、安全な場所で体力と魔力の回復に専念していたカトレア達が駆け寄ってきた。
「お疲れ様です。その様子だと、騎士達の鎮圧は無事に終えたみたいですね」
「うん、全く歯ごたえが無くてつまらなかったけど」
「アハハハ……」
(それは、筆頭宮廷魔法師の圧倒的な実力と『帝国の死神』の力を持ってすればたいしたことは無いわよね)
帝国で記憶を思い出したカトレアとラピスは、筆頭宮廷魔法師であるマーザスの実力と、『帝国の死神』と呼ばれている彼らの力がどれほどのものか知っていた。
だから、ノルベルトの傀儡でしかない彼らを鎮圧するくらい造作もないことも分かっていた。
すると、話を聞いていたライドがマーザスに鎮圧した傀儡達について問い質す。
「ちなみに、鎮圧した騎士達は?」
「魔除けと睡眠の効果が付与された拘束魔法で縛った後、土属性の上級魔法で固めたよ。これならしばらくの間、大人しくしているかも」
実は、マーザスがこの日のために実験用として魔除けと睡眠の効果が付与された拘束魔法の刻まれた魔道具を持ち込んでいた。
(念のために持ってきておいて良かった。お陰で、良いデータが取れそうだし)
切羽詰まっている状況の中、他国の騎士を実験に使ったマーザス。
その後、彼がロスペルに怒られたことは言うまでもない。
そんなことなど露知らず、ライドはマーザスが傀儡達を動けなくしたことに深々と頭を下げてお礼を言う。
「ありがとうございます」
「いやいや、これも全て彼らの迅速な動きがあってのことだよ」
「そう、ですか」
(国防を担う者として、一度でも良いから彼らの戦いぶりを見てみたかった)
マーザスの話を聞いて、ライドが少し離れた場所で固まっている黒いフードの集団に目をやると、マーザスが周囲を見渡す。
「それより、あれから魔法陣に異常はなかった?」
「はい、特に異常はありませんでした」
「そう」
(でも、念のため確認しないとね)
「筆頭宮廷魔法師殿?」
「念のため、出発前に確認してきて良いかな?」
「は、はい。構いませんよ」
「ありがとう」
ライド達に柔らかく微笑んだマーザスは、足早に森の奥にある巨大な魔法陣が敷かれた場所を訪れると、魔法陣の前にしゃがみ込んで手を翳して目を閉じる。
「うん、問題ないだね」
(禍々しい黒い魔力も感じないし、これなら大丈夫でしょ)
そっと目を開けたマーザスは、満足げに笑うと後から追いかけてきたライド達に魔法陣に異常が無いことを改めて伝える。
それに安堵したライドは、マーザス達と共に騎士達が集まっている場所に合流すると、この場所に敷かれた魔法陣が元に戻ったことを改めて部下達に報告し、次の場所に行く指示を出そうとした。
「では、それじゃあ次に……」
「ラピス!!」
その時、切羽詰まったカトレアの声がライドの言葉を遮る。
突然のことに周囲が少しだけざわめく中、名前を呼ばれたラピスは、顔面蒼白になっているカトレアの指さす方向を見た。
「あれって……!」
カトレアが指を差した先には、白い煙が黙々と立ち上がり、その方角にはフリージアが木こりとして住んでいた家があった。
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