第431話 魔法陣奪還戦(前編)
魔法陣を守っていた第一騎士団の騎士達を無力化してすぐ、ライドの指示で騎士達は『帝国の死神』を護衛する班と魔法陣から出てくる魔物を討伐する班に分かれて陣形を整える。
辺り一帯に緊張感が包まれる中、カトレアとラピスはマーザスや『帝国の死神』、そしてライドや護衛役の騎士達と共に魔法陣に赴く。
「「「「「っ!!」」」」」
「これが……」
「そう。これが本来、結界魔法を張る時に使われる魔法陣だよ」
(これが結界魔法を張る際に使われる魔法陣。とてもそう見えないわ)
漆黒に染まり、瘴気を放つ魔法陣を見て言葉を失うカトレア達。
その近くで、険しい顔をしたマーザスは魔法陣の前でしゃがみ込むと、真っ黒に染まった魔法陣に触れる。
「筆頭宮廷魔法師殿! 近づいて触っては……!」
「大丈夫だよ。今なら魔物が出る前兆はなさそうだから」
「は、はぁ」
魔法について疎かったライドは、マーザスの言っている意味が分からず、ただただ呆けた声を出すしかなかった。
そんな彼に優しく微笑んだマーザスは、視線を魔法陣に戻して魔法陣に触れると、表情が再び険しいもの変わる。
「けれど、あと1日遅ければ、この魔法陣は使い物にならなかったね」
「「「「「「っ!」」」」」」
マーザスの抑揚のない冷たい声で告げられた事実に、その場にいた全員の表情が引き攣る。
漆黒に染まった魔法陣は、ノルベルトが幾度となく改竄魔法を使ったせいで、魔法陣には無数の綻びが生じ、今にも消えかかりそうになっていた。
(本当、魔法陣を何だと思っているんだろうね)
魔法を探究する者として、ノルベルトの横暴な使い方に、怒りを覚えたマーザスは、静かに拳を握ると怒りを鎮めるように小さく息を吐く。
そして、静かに立ち上がったマーザスは、唖然としているライドに微笑みかける。
「ねぇ、無効化作業を始めていい?」
「は、はい! お願いします!」
ライドの焦りの交じった返事に、少しだけ緊張感が解れたマーザスは、小さく口角を上げると『帝国の死神』達に指示を出す。
「それじゃあ……皆さん、よろしくお願いします」
マーザスの号令に、無言の返事をした『帝国の死神』達は、そそくさと魔法陣を取り囲むとその場にしゃがみ込む。
そして、両手をついた『帝国の死神』達は、漆黒に染まった魔法陣に透明な魔力が一斉に流し込む。
すると、魔法陣から放たれていた瘴気に『帝国の死神』達が流した透明な魔力が纏わりつき、瞬く間に打ち消されていく。
「これが、『帝国の死神』と呼ばれる皆様の力」
(団長から話を聞いていたが、まさか本当に魔力を無効化する力があるとは!)
「そう。これが、『帝国の死神』と恐れられる彼らの力。どう? スゴイでしょ?」
「えぇ、魔力があれば瘴気でも一瞬で打ち消けせるとは……とても素晴らしい力だと思います。ですが同時に、魔法が効かない彼らが武芸に長けていると考えると、とても恐ろしいとも思いました」
「でしょ? だから『帝国の死神』って呼ばれているんだよ」
(『戦で彼らを見たならば、死を覚悟せよ』。周辺諸国ではそんな風に恐れられているけど、あながち間違いじゃないんだよね)
戦場で何度か彼らの活躍を見てきたマーザスは、眉間の皺を寄せるライドの感想を聞いて、静かに同意する。
すると、魔法陣に異変が起こり、辺り一帯に途轍もない緊張感が走る。
「隊長殿。来るよ」
「はい」
『帝国の死神』達の護衛を騎士達に任せ、マーザス達と共に急いで引き返したライドは、陣形を整えて待ち構えている騎士達に指示を出す。
「来たぞ! 皆、気合を入れろ!!」
「「「「「お―――――――!!」」」」」
その瞬間、魔法陣から大小様々な魔物が現れ、魔法陣周辺に剣戟と魔法の音がしばらくの間響き渡った。
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