閑話 カトレアが会得した魔法は?
ご無沙汰しております! 今日から再開します!
――それは建国祭前、フリージアの家に久しぶりに訪れたカトレアとラピスが、フリージアの手料理に舌鼓をうっていた時だった。
「ねぇ、カトレア」
「何?」
食事も終盤に差し掛かり、各々の皿が段々と空になり始めた時、カトレアとラピスに紅茶を淹れたフリージアが、何かを思い出してカトレアに問い質す。
「随分前にメスト様が『学園卒業時、火属性の超級魔法を会得した』って聞いたんだけど本当?」
それは随分前、メストがフリージアの手伝いをしていた時に話していたことだった。
(大方、ノルベルトの改竄魔法の影響だと思うんだけど……とはいえ、カトレアはロスペル兄様の弟子だから会得しているかもしれないし)
その瞬間、カトレアのシチューを掬う手が止まった。
「……それ、私のことよね?」
「え、えぇ……そうね」
いつになく怖い顔をするカトレアから聞かれ、フリージアが戸惑いがちに答えると、『カトレアが学園卒業時、火属性の超級魔法を会得した』という話を思い出したラピスが納得したように頷く。
「そう言えば、そんな話聞いたことがあるな」
「嘘でしょ!?」
(私、そんな話したこと……あっ)
『《インフェルノ》!』
「だが、その時はノルベルトの改竄魔法にかけられていて……って、カトレア、どうした?」
(正直話した記憶は無い。けれど、超級魔法を実践で使ったことはある。でもあれは……)
「カトレア、突然黙ってどうしたの?」
フリージアとラピスが心配そうに見つめる中、魔物討伐で火属性の超級魔法を使ったことを思い出したカトレアは、俯いたまま突然椅子から立ち上がる。
「……そ」
「「そ?」」
親友と婚約者が揃って小首を傾げると、顔を上げたカトレアが真実を声高に口にする。
「そんなわけないでしょ――!!」
羞恥と恐怖の感情が混ざり、顔を真っ赤にしたカトレアが両手を顔で覆うと、再び何かを思い出したフリージアが恐る恐る問い質す。
「でも随分前、魔物討伐で『《インフェルノ》!』って叫んで上空から火属性の超級魔法らしきものを放っていたけど……」
すると、顔から両手を外したカトレアが、顔を真っ赤にしたままフリージアに弁明をする。
「私が《インフェルノ》って堂々と言っていたあれは、上級魔法に威力を高めただけで超級魔法じゃないの!」
「えぇ……」
(そもそも、本当に超級魔法を放ったら、森どころかこの辺一帯全てが焼き払われてしまうわ!)
「それじゃあ、『カトレアが火属性の超級魔法を会得した』っていう話は……」
「あのクズが改竄した情報に決まっているでしょ!!」
「「やっぱり」」
「あぁ、師匠にバレたら完全に怒られる……2人とも、くれぐれも私が超級魔法を撃ったこと絶対に言っちゃダメだからね!」
「う、うん。そもそも私、兄様には会えないから言わないけど……」
「お、俺は何も聞いていない! だから、絶対にロスペル様に言うことなんて何もない!」
慌てたように嘘を吐くラピスを見て、カトレアとフリージアが揃って噴き出す。
「お、おい! 今のところは噴き出すところじゃないぞ!」
「ごめんなさい。それでちなみに、学園卒業時に何を会得したの?」
すると、何かを思い出したカトレアが酷く落ち込んだ顔をすると静かに椅子に座った。
「何も会得していない。そのせいで、師匠からきつい鍛錬をさせられて、危うく死にそうになった」
「あぁ……」
(ロスペル兄様、きっとカトレアが自己鍛錬を怠っていたってことで、リハビリを兼ねて厳しい修行をカトレアにつけたのね)
俯いているカトレアにフリージアが憐れみの目を向けると、ラピスがカトレアの鍛錬で何かを思い出して納得する。
「あぁ、だからこの前の修行で全属性の上級魔法を会得したのか!」
「そうよ!」
(もう、あんなキツイ修行、2度としたくない!)
顔を上げたカトレアの泣きそうな顔を見て、2人はそっと慰めたのであった。
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