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木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜  作者: 温故知新
第7章 余興と奇貨の建国祭

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第390話 カトレアの懺悔

「カトレア、どうしたの?」



 急に顔色を悪くしたカトレアに、フリージアが心配そうに声をかける。


 すると、フリージアの顔を見たカトレアが、何かを決心すると重く閉ざしていた口を開いた。



「さっき、師匠が見習い宮廷魔法師の振りをしながら、インホルトさんを始めとした協力者の皆様と共にノルベルトの動向を調べているって言ったわよね?」

「えぇ、そうね。それがどうしたの?」

「実は、師匠……ロスペル様は見習い宮廷魔法師『テオ』として私の小間使いをしていたの」

「えっ?」



(ロスペル兄様がカトレアの小間使いをしていたの?)


 ロスペルを『師匠』と慕っているカトレアが、実は慕っている人に不遜な扱いをしていたと聞いて、フリージアは思わず眉を顰める。

 そんな親友を見て、僅かに肩を震わせたカトレアは、静かに俯くと持っていたマグカップを強く握った。



「今思えば、弟子として師匠に対してとんでもないことをしたと反省している。記憶を主出した後、勘当されても仕方ないと腹を括ったわ」



 カトレアの脳裏に蘇った小間使いテオとの日々。


 常に真っ黒なローブに真っ白な仮面をつけ、カトレアの命令を淡々とこなし、カトレアから扱いを淡々と受け止めていたテオ。


 その日々を思い出す度に、不気味とも思える彼の正体が実は尊敬する師匠だと知った時の絶望がカトレアの胸に深く突き刺す。



「例え、あの時の私にあなたや師匠の記憶が無かったとしても」

「えっ?」



(記憶が無い? それってもしかして……)


 カトレアの記憶にロスペルやフリージアの記憶が無かった時。


 それは紛れもなく、ノルベルトの改竄魔法にかかっている時だった。



「本来、団長や副団長以外の宮廷魔法師に専属の小間使いがつくことはあり得ない。でも今、この国で私は『稀代の天才魔法師』という二つ名を授かっているから、特例として小間使いをつけることを認められたの」



 カトレアが二つ名を授かった時、ノルベルトが突然、ルベルに向かって『カトレア嬢は『稀代の天才魔法師』であり、ダリアの親友だから特別扱いしろ!』と命令してきた。


 この時、副団長をリアンからカトレアに変えるつもりで、そのことをノルベルトに進言した時、ノルベルトから『宰相の顔に泥を塗るつもりか!』と却下され、それを国王が認めてしまった。


 ノルベルトに対して面倒くさくなったルベルは、特別に小間使いと個人の執務室をカトレアに与えた。



「そして、つけられた小間使いがロスペル兄様扮する見習い宮廷魔法師『テオ』だったと」

「そう。私に小間使いがつけられた時、私はノルベルトの影響下にいた。だから、目の前にいる小間使いが師匠だなんて思いも寄らなかった」



(そもそも、改竄魔法にかかっていた時の私は『師匠』がいたことすら忘れていた。マーザス様に言われて驚いたのを今でも覚えているわ)


 フィアンツ帝国でのマーザスとのやり取りを思い出し、少しだけ苦い顔をしたカトレアは、マグカップを握っていた手を両膝に置いた。



「カトレア? どうしたの、急に黙って?」



 再び心配そうな顔をするフリージアに向かって、カトレアは懺悔をするように頭を下げた。



「あの男のかけた改竄魔法の影響をもろに受けていた私は、師匠に向かってあの男に植え付けられたこの国の貴族然とした態度を取っていたわ」



 その瞬間、フリージアの頭に悪徳騎士達の顔が思い浮かび、心配そうにしていたフリージアの表情が一気に無になった。



「……それはつまり、ロスペル兄様だと気づかなかったカトレアは、平民の小間使いとして兄様に酷い扱いをしたということなの?」



(悪徳騎士達が嬉々として平民を甚振ったように、カトレアもロスペル兄様を嬉々として甚振っていたというの?)


 冷たい目をしたフリージアから問い質され、僅かに肩を震わせたカトレアは小さく頷く。

 それを見て、マグカップから手を離したフリージアが殺気を放って小さく拳を握った時、カトレアの横にいたラピスが慌てたように椅子から立ち上がると2人の間に入った。



「フリージア嬢! 俺から弁明をさせて欲しい!」

「ラピスさん?」



 周囲を凍らすような冷気を纏う今のフリージアは、悪徳騎士達に剣を向ける木こりそのものだった。


(っ!! 怯むな、俺! ここで俺が弁明しなかったら、フリージアはカトレアのことをずっと誤解したままになってしまう!)


 カトレアとフリージアの友情に亀裂が入ることを、フリージアもカトレアも望んでいない。


 それを分かっていたラピスは、無表情のフリージアに頬を引き攣らせつつもカトレアを背に庇うと、冷たい目を向けるフリージアに弁明する。



「カトレアは決して、馬鹿騎士達みたいな愚かな真似をロスペル様にしていない! むしろ、カトレアはロスペル様を気遣っていた!」

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


というわけで、カトレアがフリージアに対してロスペルの扱いに関しての告白をします。


今の今まで話していなかったのは、単に怖かったからですね。


それと、過去の話をいくつか加筆修正しました。


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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