第383話 屈辱と苦労と処刑(前編)
――謁見の間での騒動から数時間後。
「あの老害ジジイ!! よくも高貴な俺に魔法を食らわせやがって!」
夜も深くなり静寂に包まれる王城。
王族が住まう城にある一際大きな執務室。
そこは本来、国王の執務室なのだが、ノルベルトの改竄魔法によって、今は宰相専用の執務室になっていた。
目が痛くなるほどの豪勢で下品な装飾が施された一室で、ノルベルトは純金で作らせた特注の机を悔しそうに叩いていた。
(あの野郎、素直に宮廷魔法師団団長の席を明け渡せば良かったものを!)
部下の報告を噂として流し、それを建前にルベルを断罪してカトレアをお飾り団長に据えることで、宮廷魔法師団の実権を掌握するつもりだったノルベルト。
しかし、ルベルが持ってきた決定的な証拠でその建前は使えず、強引にルベルを消そうとしたが返り討ちに遭い、結果的に宮廷魔法師団の実権を掌握できなかった。
「やはり、時間を置いたのがいけなかったか……クソッ! こうなるなら、出し惜しみせずさっさとあいつを手駒に引き込み……」
「あっ、いた~! パ~パ~!」
「あぁ、ダリアか」
上手く事が運ばず、ノルベルトが悔やんでいると、ノルベルトの愛娘であるダリアがノックもなしに豪華な扉を開け放つと、膨れっ面のままずかずかと入ってきた。
(キスマークがあるということは、さっきまで遊んでいたのだろう。全く、こっちは計画の準備で忙しい上に、思惑が上手くいかず苛立っているのだが!)
一切空気を読まないダリアの登場に、苛立ったノルベルトが内心舌打ちをする。
そんなことを実の父に思われているなんて一切考えていないダリアは、艶めかしい色香を纏ったまま椅子に座っているノルベルトの上に乗る。
そして、慣れたようにノルベルトの首に己の細腕を回した。
「もう! パパったら今までどこ行っていたのっ!?」
「それはもちろん、王城で宰相の仕事をしていたに決まっている」
(全く、宰相家の令嬢なのだから少しは自覚をもって欲しいものだ)
苛立ちを募らせつつも、娘から母譲りの豊満な胸を押し付けられて満更でもないノルベルトは、優しい笑みを浮かべるとダリアの桃色の頬を優しく撫でる。
「それよりも、こんな時間に宰相の執務室に来るとは珍しいじゃないか? 一体どうしたんだい? 我が愛しい娘よ」
陶器のような磨き上げられた頬から、綺麗に整えられた髪に移動させたノルベルトは、優しく撫でながら娘に何があったか話すように促す。
そんな父に頭を撫でられ、満更でもないダリアは随分前に怒った王都での出来事を話した。
「……それで、宰相家令嬢であるダリアを平民風情が甚振ったのか?」
「そうなのよ、お父様ぁ~! 私、痛くて怖くてぇ~!」
『どうして今になってそんな話を?』とほんの少しだけ疑問に覚えたが、涙目で訴えるダリアの儚げな姿を見て、すぐに疑問を忘れてしまったノルベルトは娘の話を全て信じた。
その話の大半が嘘で塗り固められているとは知らずに。
「分かった。それじゃあ、私の方でその平民を処刑してあげよう」
「やったぁ! でも、出来たら私がその愚民を処刑したいわぁ~」
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
というわけで、ノルベルトの苦悩(?)をお届けしました!
改竄魔法を乱発したお陰で
そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!
(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)




