第263話 昼間の魔物討伐(前編)
リアンが立ち去り、魔物の大群と対敵してしばらく、地面には大小様々な魔石が落ちていたが、一向に魔物が減る気配は無かった。
「《ウォーターブラスト》!」
「ハアッ!」
ルベルの水属性の中級魔法で魔物達を吹き飛ばした直後、先回りしていたフェビルが飛ばされた魔物達を一気に切り伏せる。
そして、2人の団長が背中合わせになると周囲にいる魔物達を睨みつけた。
「あのバカ令息! この近くに村があるなんて知っていてやっているのか!?」
「だとしたら、わざわざ魔物を呼び寄せるなんてバカな真似はしないでしょう」
「それもそうだな!」
飛びかかってきた魔物をフェビルが一刀両断すると、すぐさまルベルが魔法陣を展開して魔法を撃つ。
(あのバカ令息は、ただ単に俺たちを消すため魔物の大群をおびき寄せた)
「全く、親が親なら子も子だな! 目先のことだけでなく、少しは周りのことも考えて欲しいものだ!」
「それに関しては同意します!」
2人の団長の息の合った連携プレーで周りにいた魔物を一掃すると、大きく息を吐いたルベルがフェビルに視線を向けた。
「ところでお前の部下、前衛で頑張ってくれているようだが、この程度でへばってなんていないだろうな?」
(お前のところは、俺のところと違ってあのバカ宰相に良いようにされているようだから心配なのだが)
少し離れた場所で前衛として戦っているメストとシトリンにルベルが目を向けると、ポーションを飲んだフェビルが2人の部下がいる方を見てニヤリと笑みを零す。
「大丈夫です。あの2人は、うちの部下の中でもかなりタフで強い方です。何せ、第二騎士団に来た時からあの2人はずば抜けていますから!」
フェビルが第二騎士団長だった頃、第二騎士団に着任した新人騎士達にフェビル自らが過酷な訓練を組んで鍛えるのが恒例だった。
大半の新人騎士達の心が折れる中、メストとシトリン、そしてラピスは過酷な訓練を最後まで乗り越えたのだ。
(訓練の仕上げとして新人騎士達を魔物討伐に行かせた時は、さすがにグレアに叱られたが……それでも、あの2人は難なくこなした。だから、この程度ではへばらないはずだ!)
「《アイスショット》!」
「《ウインドカッター》!」
得意な属性魔法で確実に仕留める2人を見て、フェビルが安堵の溜息をつくと、ルベルが楽しそうに笑った。
「そうか! それなら大丈夫だな!」
(人を見る目があるお前が言うんだ。間違いないのだろう)
年下団長の明るい表情を一瞥したルベルは、そのまま2人の若手騎士から少し遠くにいる執事と護衛騎士に視線を移すと杖を静かに構える。
「それじゃあ、俺たちは少し離れた場所にいる2人を助けに行くぞ!」
(あの2人は、戦闘においては素人のはず。今のところ、2人の気配があるから無事かもしれないが、いつまでもというわけにはいかないだろう)
鬼気迫る表情でルベルがその場を離れようとした時、ルベルの肩に重くて固い大きな手が乗る。
「ルベル団長。それなら問題ないかと」
「はぁ!? どうしてだ!? このままあの2人を放っておいたら危険なことくらい分かっているだろうが!」
「確かにそうかもしれませんが……周りをよく見てください」
「っ!?」
そこには、魔物の大群がルベルとフェビルとの距離を狭めようとしていた。
「チッ! せっかく倒したのに次から次へと!」
(あの2人が前衛を頑張ってくれているが、この程度では捌き切れないってことか?)
「あるいは、前衛の目を掻い潜ってどこか別なところから出てきているか……クソッ!」
苦々しい顔で悪態をついたルベルは、もう一度だけジルとザールがいる方を一瞥すると目の前の魔物達に意識を集中する。
「フェビル!」
「はい!」
(大丈夫。殿下にはあの方の息子がいる。だから、俺が手助けに行かなくても大丈夫だ)
ルベルの掛け声で前に出たフェビルは、視界の端で大剣を振り回しているザールを見て、小さく笑みを零すと目の前に迫った魔物を一刀両断した。
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